第22話 戦闘馬鹿と古代文明のロマン
「お姉様。遅かったですね。」
「ちょっとね。・・・ところで、さっきから気になってるんだけど、なんでお姉様呼びなわけ?」
「そ、それは、その。先程のモンスターとの戦い。二刀の刀を流れる様に振るう姿が、あまりにもかっこよかったので。つい、お姉様、と。・・・迷惑でしたか?」
頬を赤らめ、上目遣いにいうその姿は実に可愛らしい。そういえば、IOでのマトイは他のキャラクターに比べて、何故かかなり力を入れて作り込まれていたのもあって、一部にコアなファンがいたような。
「そ、そう。まあ、好きに呼びなさい。」
少し動揺しながらも、満更でもなさそうに答える美結。智樹の時もそうだったが、割と可愛いもの好きだよな、美結は。
洞窟からの脱出を図る為、俺達は来た道を戻っていく。吹き抜けの塔の様になった場所の壁面にある螺旋状の通路に差し掛かった時、マトイが唐突に喋り出した。
「お姉様はこの洞窟をどう思いますかぁ?」
「どうって、すごくデカい洞窟よね。それに普通なら真っ暗なんだろうけど、所々に光る植物・・・あれは苔よね?それが生えているから、明かりがいらないのが楽でいいわ。一応光源は準備してきたんだけど。」
「そう。楽でいいですよね。けど、生物学者の立場からすれば、こんな風に光る植物・・・ヒカリゴケが生えるなんてあり得ないんですよ。おかしいと思いませんか?照明がわりに丁度いい位置に丁度いい分量でヒカリゴケが生えるなんて。普通、壁一面に生えると思いませんか?廃屋に生い茂るツタのように。」
「・・・言われてみれば不自然ね。」
なまじIOを知っているだけに、そういう物としか思っていなかったが、確かに不自然だな。
「それから、この通路。こんな螺旋状の通路が自然に出来ると思いますか?人が歩くのに丁度いい傾斜の通路が壁面に沿って延々と都合よく続くのは自然ですかぁ?」
「・・・不自然ね。さっきから何がいいたいの?マトイ。」
「この洞窟はですねぇ。明らかに人の手が入っています。つい先日、新発見されたはずなのに、です。」
ビシっと美結の鼻先に指を差してドヤ顔で胸を張るマトイ。俺なら雰囲気に押されて、おーっと感心するところだが・・・
「ふーん。それがどうかしたの?マトイ。」
しかし、戦闘馬鹿には効果がなかった。
あの目は話を聞いてる様で全く興味がない時の美結の目だ。
「え?こう、なんというか、ワクワクしませんかぁ?新発見の洞窟に人工物があるってことは、超古代の人達が作った可能性が高くて、この先に遺跡があるかもしれないんですよ!?」
「私は強いモンスターとか人を相手にしてる方がワクワクするからね。古代文明とか興味ないし。」
ハッキリと断言する美結。いや、清々しいくらいに興味がないな!
「開拓者って、古代文明の遺跡を見つけるのが目的じゃ無かったでしたっけぇ?」
不満そうに呟くマトイ。まあ、IOのストーリー的にはそうなるが、美結は戦闘馬鹿だしなぁ。
「でもお姉様。古代文明には戦闘用の機械人形もいたみたいですし、お姉様が満足する様な相手が見つかるかもですよぉ?」
その言葉に美結は眉をピクリと動かす。
「そういえば、アシュアムも超古代の遺物だったわ。あんなのがたくさん居るんだったら、私も満足できそうね。」
「でしたら、お姉様。いつか私と一緒に古代文明の遺跡を探しませんか。この洞窟の先に、あると思うんですぅ。」
「面白そうだし考えておくわ。ただ、今は開発局からの依頼に専念するわよ。取り敢えず洞窟を脱出しないとね。」
「了解です!ところでアシュアムって何ですかぁ?」
「グルピン鉱山っていうところで遭遇した、魔導人形よ。なかなか手強かったわね。」
「それってぇ・・・」
楽しげに会話をしながら2人は螺旋状の通路を登っていくのであった。
「さっきより敵の数が多いし、ちょっと変わったモンスターも増えてきたわね。」
トカゲビトとカーニの群れを眺めながら美結が独りごちる。
その視線の先には豪華な鎧と強そうな槍を装備した大きなトカゲビトと、普通のカーニの4倍は大きく赤ではなく青い色をしたカーニが現れていた。
あれはトカゲビトのレアモンスターであるトカゲビトコマンダーと、カーニのレアモンスターであるアオーカーニだな。
運営によると、IOにおけるレアモンスターの出現確率は4096分1らしいから、同時に2体出てくるとは先ず考えられない確率だ。早速、不運極大が仕事をしたみたいだな。
『ギャア!ギィアア!ギシァアァァアア!』
トカゲビトコマンダーは槍を振り回しながら、トカゲビト達に何やら指示を出すと、数十は居るトカゲビト達が赤いオーラに覆われた。
「何やらヤバそうな雰囲気ね。ゾクゾクしてきたわ。」
「アレは、トカゲビトのレア種ですぅ。同族の能力を上げる能力を持っているらしいです。」
マトイがそう言う頃には、最初のトカゲビトが俺達に襲い掛かってきていた。
「確かに強くなったみたいね。だけど・・・。」
美結は突き出された槍の穂先を智樹の刀で斬り飛ばし、懐に入り込んで右手の俺で腰元から首元まで斜め上に斬り上げる。
「まだまだ物足りないわね!」
崩れ落ちる最初のトカゲビトには目もくれず、後続のトカゲビトの集団へ突っ込んでいく美結。
薄っすらと笑みが溢れていることから、物足りないと言いながらもそれなりに楽しんでいる様だ。
そして、美結がトカゲビトと戦っている間にアオーカーニは何をしているかというと、その巨大なハサミを周囲のカーニに突き差して口元にそのカーニを運び、バリボリムシャムシャと次から次に貪っている。
「な、仲間を食べてる?食べるごとに身体を覆った黄色いモヤが濃ゆくなっていく?・・・あの巨大な青いカーニは一体何をしてるんですかぁ?」
呆然とした様子でマトイが呟いている。どうやら、アオーカーニの事は知らないらしい。
『美結!早くトカゲビトの包囲を突破しろ!早くアオーカーニを倒さないと面倒なことになるぞ!!』
IOでのアオーカーニは同族を共喰いする毎に自身を強化する特殊能力を持っていた。
黄色いオーラに包まれる姿を見る限り、この世界のアオーカーニも同じ能力を持っているようだ。
しかし、トカゲビトコマンダーとは真逆の能力だな。あっちは自分は強化しないけど周りを強化する能力だしな。
「ここに来る前にパパが1番注意しろって言ってたヤツね。丁度いい。任せなさい!」
そう言って美結はニヤリと笑う。・・・ロクでもない事を考えてそうだな、コイツは。
その後、強化されたはずのトカゲビトの群れをあっさり退け、トカゲビトコマンダーを防御の為に構えた槍の柄ごと、脳天から真っ二つに両断した美結は、そのままの勢いでカーニの群れに突撃・・・はせずに、俺や智樹の刀を鞘にそれぞれ納める。
『ど、どうしたんだ。美結?』
「ど、どうしたんですか。お姉様?」
嫌な予感しかしない。俺の声は聞こえていないはずのマトイとハモるかの様に、俺は美結に突っ込んだ。
「あのでっかいカニの強化が終わるまで待とうかと思って。トカゲの相手で丁度身体もあったまってきたしね。」
悪びれる様子も見せずに、上機嫌に言う美結。
『危ないからさっさと倒せと言っただろうが!』
「どう見ても危険なので不安しかないのですぅ。」
「大丈夫だって。私の強さは知っているでしょう?そう簡単には負けないから大丈夫よ。」
俺の怒りとマトイの憂慮もどこ吹く風で答える美結は、今からの戦いを想像して、オモチャを目の前にした子供のように目をキラキラと輝かせている。
アシュアムの件が有るから、何となくこうなる様な気はしていたんだが・・・。
こうなった戦闘馬鹿はもう止まらないし、止められない。俺はため息をつきながら、見守ることにするのであった。
今回で取り敢えずの最後の更新のつもりが、長くなったので二つに分けさせていただきます。
書きおわってはいるので、続きはまた明日の夜に更新します。良かったらご覧下さいませ!




