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第1話 転生!そして無機物へ

 あれ。俺は死んだはずじゃ。

 ふわふわとした浮遊感を感じながら、俺は目を覚ます。周りを見渡せば、ドライアイスでも床に敷き詰めたのか、白いモヤが見渡す限りの地面から発生していた。空を見上げれば、大きな月が輝いていたのだが・・・ちょっと大き過ぎやしないか?夜空の3割を占めるくらいにはでかい。


『北御門くん、じゃったかの?こちらへ来なさい。』

 優しそうな声がする方向へ、俺は自然と足を進めた。・・・ん。足?いやいや。ちょっとまて。

 そもそも足の感覚がないぞ。っていうか、手の感覚もねぇ!自分の身体について意識をすると、両手両足、頭すらなく、俺の身体?は白い光る球体だとわかった。

 混乱の極みにある俺の身体?はそれでも声のする方向へ進んでいく。いや、俺の意思じゃないんだがね。

『おぉ。こっちじゃこっちじゃ。ようやく来たのぅ。』

 その呑気な声に合わせるかの様に、俺の身体?は動きを止めた。声の発生源を見ると・・・

 うおっ!でか!

 全長50メートルぐらいだろうか。そこには真っ白な長いアゴ髭を生やした頭ツルッツルの人の良さそうな爺様が雲の椅子に座っていた。この展開はもしや・・・。

『ワシは神様じゃ。そして、君は死んだ!』

 あー。だよねー。次の台詞はアレか。

『ご名答じゃ。北御門くん。』

なんか普通に考えてること読まれてるみたいだわ。

『おめでとう!君はワシが管理する世界の1兆人目の死亡者じゃ。それを記念して好きな異世界へ転生させてあげよう。』

 パンパカパーンという安っぽいファンファーレと共に神様を名乗る爺様はそうのたまわった。

 死んでおめでとうと神様に言われました。これどうなんよ?


『なんじゃ?折角好きな異世界へ転生出来るというのに何が不満というのじゃ。贅沢じゃのぅ。お主は。』

 怪訝な顔をする神様。いや、そらそうでしょうよ。死んだのはまあ、仕方ない。多分美結は助けれただろうし、命の使い途としては悪くないと思ってる。

 けどなぁ。こういう時の神様っていったら、もっと胸バーン!腰キュっ!の上に顔は絶世の美女っていう女神様な見た目じゃないん?なんでしわくちゃの爺様なんだよ。それにさっきのファンファーレ?の音も安っぽいし。

『ワシがこの姿なのは、お主が想像する神様がこれだからじゃ。あとファンファーレの音が安っぽいのもお主の想像力が貧弱だからじゃ!失礼な。』

 な、なんだと。神様のイメージを何故爺様にしたし。俺の馬鹿!あと想像力が貧弱と言われたのは地味にショックだわ。

『まあよい。で、祝1兆人目の死亡者特典じゃ。どんな異世界に転生したいか考えるが良い。』

 と言われてもなぁ。異世界転生物の小説は我が愛娘たる美結が何故かオタク的な趣味に目覚めたから、つきあいである程度把握してるんだが・・・。いざ自分が転生する立場になると、何も思いつかんな。よくあるハーレム物とかには興味がない。愛する妻である操さんに、操を立てているからな。あ、ダジャレじゃねぇからな?


『なんじゃ。何もないのか。ワシ、こう見えて忙しいんじゃが。だが勝手に送り出すわけにもいかん。今まで楽しかったゲームや漫画を思い浮かべてみるがよい。』

 最近仕事が忙しくてゲームは出来てないが、今までで1番楽しかったゲームと言われれば、俺の場合は一択だ。その名も『Invaders(インベーダーズ) Online(オンライン)』、通称IO(アイオー)だ。20年以上前に発売されたMMORPGで、正に俺の青春だった。結局8,000時間以上はやり込んだし、色々と思い出がある。なんなら操さんと出会ったのもIO(アイオー)だし。そんな取り止めの無いことを考えていると

『なんじゃ、IO(アイオー)か。あれはよく出来たゲームじゃのぅ。今も新作で続いておるし。あれなら昔にもとにして作った世界があるからちょうどよい。望み通りIO(アイオー)の世界に転生させてやろう。』

 神様はそんな事を言いだした。ちょっと待て!と言う前に神様が指を鳴らすと、何も無かった空中に突如渦巻きが発生して掃除機の様に俺を含めて周囲のものを吸い込み始める。

 俺は吸い込まれないように踏ん張ろうとしたが、いかんせん手も足もない身体の踏ん張り方なんぞ分かるわけがない。抵抗らしい抵抗も出来ずに、俺は渦巻きに吸い込まれ、意識を失った。



 鬱蒼としげる木々のわずかな隙間を縫って、薄暗い森の中を太陽の光がほんのりと照らす。わずかに地面に届いたその光が俺の眼に入り、眩しさで意識が覚醒してくる。

 周囲を見渡せば、20メートル以上はあろうかという細くて長い木が林立しており、太陽の光がほんの少ししか入ってこないせいか、全体的に暗い雰囲気の森を作り上げていた。

 見た感じ、これはIO(アイオー)の最初のステージ『デネブリスの森』か?

 くそっ!あの爺様、少しは人の言うことを聞きやがれってんだ!俺は悪態をつきながら、身体を起こそうとした。そして既視感。

 んん?身体が動かない!?

 っていうか、両手両足どころか、やっぱり頭もない。まさかまだ魂っぽい球体の姿なのか??

 頭が無いということは眼も無いはずなんだが、どういう原理か生前と同じような感覚で物を見る事が出来ている。んで、視界を出来るだけ自分の身体に寄せてみたんだが、身体らしきものは見えなかった。少なくとも魂っぽい姿では無いようだ。

 身体が全く動かないのに、今自分がどういう状況なのか分からず段々焦ってきたが、一つのアイデアが思い浮かぶ。

 爺様はたしか、IO(アイオー)をもとにして世界を作ったと言っていた。なら・・・

『ステータス!』

 そう。転生物の小説でよくある奴だ。もちろん、IO(アイオー)にもステータス画面はあったしな。

 俺が心の中でそう唱える(というか、口も無いからそうせざるを得ない)と、20年前に見慣れていたカラーリングのステータス画面が脳内に展開する。

 だが、俺はステータス画面の2行目でズッコケる事になる。足はないから精神的にだが。


『ステータス』

名前:北御門 智

種族:日本刀


 ハハハハ!俺の目がおかしくなったのか?目は無いけど。種族が日本刀とはこれ如何に。

 まさか有機物を超越して無機物になるとは予想外の展開だろ!?

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