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短編大作選

たまごクエスト

掲載日:2023/12/16

たまごの値段が上がった。


100上がった。




『これは、仕方ないことだ』


『何事にも、マイナス面はある』


『いつかは、また安くなるよな』


そう脳内で、考えを繰り広げていた。




右ペダル、左ペダル。


交互に、力を込める。


サドルの意味を、掻き消し漕いだ。


ヘルメットのアゴひも伝いに、汗が落ちる。




『流石に、1時間は疲れるな』


『夏の運動は、命懸けだ』


『幸せを、探し求める流離い人さ』





脚力が11上がった。


体力が23下がった。


期待度が6上がった。




『値段が高いのは、仕方ないとは思ってる』


『でも、安さを労力で買えるなら、買いたい』


『安いものを追い求める、それが人間の性なのだから』




先週は西。


今日は東。


ご当地スーパー巡り。


知らない外観にビビる。




たまごに、最短距離で向かう。


"ガラリン"


平面に、売り切れの文字。




下を覗く。


ヨイショッ。


いた。


よかった。


ピラミッド状で、奥に潜んでいた。




『最初は焦ったけど、なんとか買えた』


『100円で買えて、本当に良かった』


『今日は久しぶりの、たまご2個オムレツかな』





レジを通し、エコバックをカゴに収める。


そして、浮かれてペダルを漕いだ。


"スイスイスイ"


"サッサッサササ"




『家路につく足は、やけに軽い』


『たまご1個オムレツさん、さよなら』


『あとは、どんなたまご料理があるかな』




目の前に、急な縁石。


『もう、避けられないか』


『浮かれて、前を見てなかった』


『なんとか、たまごを守らなくては』




ブレーキを、握力の限り握りしめた。


ぎゅっぎゅっ、ぎゅっと。


なんとか、踏ん張った。




駄目だ。


体が、左に倒れてゆく。


自転車とエコバックと共に。


"パチャ"


鈍い音がした。




『完全に、終わったわ』


『割れたたまごの中身を、集めるか』


『それで、ひとつのオムレツを作るか』




自転車を起こす。


エコバックをカゴに戻す。


恐る恐る袋を広げた。


全割れだった。




『今日のディナーは、たまご10個オムレツだ』


『人生最大級の、ごちそうだ』


『ただ、それから一週間は"断たまご"か』




やる気が50下がった。


ため息が18増えた。


精神力が34下がった。


慎重度が100上がった。




たまごを、元に戻す。


そんな魔法が、使えればな。


まあ、使えるはずないか。


もう、心まで粉々だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] コメントの邪魔するで〜!! なんで、三回考えてるんだろうって、疑問に思いましたw多分、意図的ですよね。なんでなんだろ、 断たまご かぁw俺は、脱たまごにしちゃうなw結構バッサリいくやんw…
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