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太陽系を目指して

不意の遭遇者

作者: 四条版

「アリス、外部学習モードスタンバイ」


「イエス、マスター」


「概念語彙、開始【誤差】ある量の測定値と真の値との差。測定機器,測定時の物理的条件,測定者の個人的習癖等から生じる系統的誤差と,原因不明の偶発的な偶然誤差がある。前者は原因を追求して原則的には除去できるが,後者は不可能。偶然誤差の分布法則を研究して,多くの測定値から最も真に近い値を推定し,また測定の精度を見積もろうとするのが誤差論。絶対誤差(誤差の絶対値),相対誤差(絶対誤差と真値との比),平均誤差(絶対誤差の平均値),標準偏差(誤差の2乗の平均値の平方根),確率誤差などがある。【誤差】終了」


「そういえばアリス、お前自身内にあるハードデータはどのくらいあるんだ?」


「現在私の内部にあるハードデータのリストです」


銀河系星図、は正直現在と違いすぎているから参考程度にしかあてにならないとして。過去の僕らが旅をした失敗を含めた航行ログと惑星探査をしたときの画像データか。あとは、音楽か。長時間のフライトだとどうしても飽きてくるからポップスからロック、色んな曲をダウンロードしてたもんだ。あとは、ワープ中の退屈しのぎのコミックス(単行本)か。僕は小説派だったから文庫になったSFやファンタジーを結構ダウンロードして保存してたんだ。リストをスクロールしていくと一つの本が目に止まった。


「アリス、このリスト内にある本は今も閲覧可能なのか?」


「はい、船長。お望みとあらば全て再生いたしますが」


「いや、1部だけでいい。ブックリスト46番の本を頼む」


「そして手元に現れる辞書のような厚さの本。タイトルは理科年表2025とかかれていた」


「よくやったアリス、これなら少なくとも太陽系内ならほぼ危険無しで航行できるぞ。ちなみこの本の内容を理解することはできるか?」


「船長がストレージに保存していた娯楽用データです。私にそのデータを読み取る機能はありません」


おかげで僕は人生初のコンピュータに理科年表の天文部にある太陽と惑星一覧を口述するはめになった。


感想は、口が乾燥して喉が渇く。だろうか。


「アリス、そろそろ休憩したいんだが。何か飲み物とかこの船にあったりするのか?」


「飲料水を用意します」


というか、水とか食料とか積載してきてたっけか。母港出発時にそんな項目は無かった気がするんだが


正確には天然資源としてなら小麦や水といった物はゲームにも存在していた。単位がトン基準のコンテナ仕様だったのでつまみ食いなど一切できない完全な貨物だったが。


「人間1,2人程度なら船体循環システムの余剰で栄養素を作り出すことが可能です」


そうか、にしても思った以上に疲れるな。口述するのって。


「船長、休憩中すみませんがセンサーが不審船らしき艦影を捉えました。どうしますか」


「船種とトランスポンダーは?」


「トランスポンダーは出ていませんが、質量センサーで10トン未満の小型艦らしき船がデブリ帯にまぎれて隠れている可能性があります」


「こっちはトラポン出しっぱなしで共通チャンネルで呼びかけろ」


<こちらに戦闘の意思はない。貴艦の所属と目的を告げよ>


「不明船、センサーから消えました」


「逃げたのか?」


「いえ、これは、おそらくアクティブステルスを使用したものと思われます」


「アリス、戦闘モード。FCSレディ、対艦センサーをフルで回せ。向こうさん、やる気だぞ。ジェネレータをエネルギーシールド最優先に回せ。ブースターは全速でいつでも飛び出せるようにしておけ」


「不明船、照合できました。おそらく戦闘社のステルス艦載機。マンタです」


「艦載機?どこかに母船があるってことか?」


「いえ、母船とのリンクは切れているみたいです。ダイレクト通信リンクが感じられません」


「敵の狙いは、おそらく不意打ちからのこの船の拿捕、だろうな」


「どこから狙ってくるか分からん。レーダーセンサー系から目を離すなよ」


動きがない、のならこちらから事態を動かすまでだ。


「アリス、180°回頭。水星軌道上まで全速移動しているようにブースタを派手にみせかけられるか?」


「了解しました。なるべく派手に推進剤をまき散らしながら目標軌道上を目指します」


高高度を維持しつつ、アステロイドベルトから背を向けるように船体を回頭させる。船は推進剤を大きくまき散らしながら太陽へと突っ込んでいった。


「不明船、センサーに感あり。こちらの真後ろに位置取り、距離離れないままです」


その後ろを機体色が真っ黒なエイ型の船がぴたりと後方につけて追いかけてくる。


「食いついたな。進路このまま、軌道に乗って水星の陰に入った瞬間全速で恒星軌道に遷移、なるべく低高度まで降下する」


さあって一撃離脱が特徴の、ぺらっぺらな装甲とシールドの艦載機でどこまで持つかチキンレースだ。こちとら観光客のせいで恒星低軌道への侵入なら何回でも経験済みだ。リアルでは初めてだけどな


「後方よりFCS照射、レーザー砲着弾!」


ちょっとでも優位を取らせないつもりかよ、間髪入れずに叫び返す。


「シールド残量!ダメージコントロール!」


「残シールド6割。船体に損傷ありません」


なんつー割り切りだ。攻撃判断から実際の攻撃まで秒もなかったぞ。っつーか一撃でシールド4割消し飛ばすとか馬鹿力すぎるだろ。


「不明船の位置は?」


「我が船の後方20kmを維持。いえ、高度を上げていきます。こちらの意図に気が付いたみたいです」


「このまま太陽軌道上を裏まで回り込む。弱みを見せたら食いつかれるぞ。限界までこの高度を維持しろ」


「船長!不明船から救難信号です。先ほど攻撃してきた船です」


「は?攻撃しかけてきて救難信号発信?何考えてんだ。罠か?!」


「分かりません。いえ不明船の詳細確認しました。あれは人が乗っています!!コクピット内温度は50℃を超えています。意識パターン無し、気絶しているように思われます」


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