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どうしちゃったの、わたくし(幻覚、幻聴?)

婚約令嬢は、不思議な夢を見たのじゃ・・・


@短編90

それはもう、恐ろしい夢でしたの。

わたくしを大声で叫喚するのは、この国の王太子殿下で、わたくしの婚約者。

家と国とで決めた約束だから、友人みたいな関係だった。

その彼が、恐ろしい形相で私に食って掛かるなんて・・怖い・・・こわ、い・・

わたくしは王太子妃となるべく、教育もしっかりと受けました。

なのに、彼が叫ぶ言葉が、異国の言語の様で全く解らなかったのです。

ふと気付いたのは、王太子殿下の後ろにいる・・女性?

オロオロとしている・・と思った瞬間、彼女と目が合って一瞬だけ口元がニタリと笑ったのです。

それが気になって王太子殿下の言葉は耳に入らなくて・・

そうこうするうちに王太子殿下が私の腕を捻る様に掴み、ぎゅうぎゅうと引っ張って早足で進むから必死でバランスをとって。

強い力で振り払われ、わたくしは会場の階段から転がり落ちて・・


「卒業記念パーティーにこれを付けていきなさい」


昔お母様の卒業記念パーティーで、お父様と踊った時の記念の品だと笑っていた。

ああ、お母様に選んでもらった首飾りが千切れ、宝石が地面にばら撒かれ・・


え?卒業記念パーティー?

わたくし、まだ卒業まで一年ありますわ?




夢でした。

変な夢でした。


最近、王太子殿下がわたくしと行動しないせいでしょうか?

春に編入して来た子女と、ふたりで行動するようになったと噂が立っているからでしょうか?

わたくし・・・

そんなことを気にするほど・・

王太子殿下に好意があるのでしょうか。

ヤキモチ、嫉妬というモノなのでしょうか、この頭の中も胸の奥もチリっと痛むのは。

友人たちが話していた恋のお話で聞いてはいましたが、不快な感じです。

でも何故、一年先のことを夢に見たのでしょうか?

もしや・・正夢?

神様がわたくしに啓示してくださったのでしょうか?

わたくしはどうしたらいいのでしょうか?



この日を境に、悩むわたくしの脳内に不思議な光景が時折浮かぶ様になったのです。

やはり神の啓示なのでしょう。

次々と的中する事柄。

王太子殿下と例の子女が初夏の宴で二人連れ立って参加し、ダンスをした。

夏の別荘で二人で過ごした。

秋の学園祭で二人でベストカップルに選ばれた。これは流石にめくじらを立てるものもいましたが、文化祭はお祭りです。ワイワイと皆で騒ぎ、ハメを外す事もあるでしょう。

登下校も二人。わたくしと王太子殿下は一月に一度も話さない状態です。


わたくしは二人を放っておきました。

だって、わたくしは神の啓示に従ってしなければいけない事が出来たのです。

王太子殿下の不快な夢を見せるのですが、同時にわたくしに神は任務を与えたのです。


例の子女は近い将来、聖女となるのだそうです。

けれども大勢の神の賛同を得られなかったそうです。

大勢の神は、わたくしこそ聖女に相応しい、そう仰ったのだそうです。

その為にわたくしは『不誠実な王太子殿下の仕業に心痛め、学園を休む』という嘘をつき・・

山奥深い神殿で清麗なる滝で禊、そして祈りを捧げる日々を過ごしたのです。

そうするうちに、わたくしの内なる力が増大し、遂に光魔法を会得したのです。

突然眩い光が天から降り注ぎ、大勢の神々の歓声が聞こえました。

わたくしが聖女の力を得たことを、神々が祝福してくれているのです。



数日後、わたくしは侍女と執事と共に学園に向かいました。

すると学園の校舎前の広場に、王太子殿下と例の子女が待ち構えていたのです。

何か喚いている様ですが、聖女となったわたくしはこの程度の事では動揺しません。

滝の水音の方が煩瑣ですもの。

わたくしが学園に来たのは、この学園を退学する為。

本格的に聖女として各地に慰問したり、汚染された土地を浄化する為です。

学園を退学すれば、あの夢の出来事は起こらないでしょう。

もちろん、婚約も丁重に解消しました。



今わたくしは充実した毎日を過ごしています。

俗世を絶ってしまっているので、わたくしの元には城下の噂話も届かない、そう思っていましたが。


『王太子、廃嫡される 元婚約者令嬢の逆転下克上』


まあ、賑やかしい。


「お嬢様、宰相様がお越しです」

「分かったわ」


わたくしが婚約解消した5分後、宰相様に結婚を申し込まれたのです。

大人の男性で落ち着いていて、有能で。美男子というよりも好ましい佇まいなのです。

国王陛下もとても喜んでくださいました。


ああ、神様の啓示に従って良かった・・・・




さて。

此処は・・令嬢が『大勢の神々』と宣うた、とある『なんちゃら』にて。



「ええ?こんなヒロインもういいわーーー。ハーレムって」

「もうお腹いっぱい〜。女のハーレム物ってなんかそそらないんだよなー」

「ビッチ死すべし」

「まあこの王太子も大概なんだよな」

「この婚約令嬢、いいよな。嫁にするならこの子」

「かわいそすぎね?母親の首飾りを壊す必要なくね?」

「っっとにクズだわ、この王太子。そしてヒロイン」

「可愛くなさすぎ。こんなビッチを聖女にしてなにしてんだこのゲーム会社」

「売れると思ってんのか」

「投書してやれ」

「ふざけんな、金これで取るとか」



そして数ヶ月後。

追加イベントで聖女ヒロインが元婚約令嬢に変更。

ヒーローも人気投票で1位を獲得した若き宰相様に。


「わはは!!やったな!!」

「お客様は神様ですからーー!!」


とある『なんちゃら』はそれから10日間、大フィーバーだったとさ。



ちょっと種明かし。






元婚約令嬢はどうやら転生者。ゲーム世界に転生したらしい。

だが気付かず。時折起きる記憶のフラッシュバックを『神の啓示』と思い込む。


『なんちゃら』は掲示板的な何か。

あまりにもクソなゲームに大炎上、流石にゲーム会社も考えを改めて『お客様寄り』なストーリーに。

王子と聖女以外はとても面白いゲームだった模様。


って感じな話でした。



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