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短編とかその他

ゾンビと人間の戦い

作者: 仲仁へび




「うわわああっ。誰か、助けてくれ! あそこにゾンビがいるんだ!」


 とある町で、一人の男が、数体のゾンビに組み付かれて噛まれた。


 最初の一人は、やく一時間もゾンビから逃げ続けた末、追いつかれて息絶えた。

 この一時間の間に、誰かがその男の言葉に耳を貸していれば、おそらくその後の展開は違っていただろう。しかし、そうはならなかった。


 一時間も絶望を味わいながら、悲惨な最期を迎えて、泡を吹きながら息絶えた男。


 その場に居合わせた他の人間は、その悲劇に見向きもせずに、ゾンビの姿に気づいてから、その場から逃げ去っていった。


 断末魔を残して命を落とした男。

 動かなくなって道に倒れこんだまま。


 すると他のゾンビたちが集まってきて、その倒れた男をどこかへと運んでいった。


 数日後、ゾンビにかまれた男は、ゾンビと化して町に繰り出していた。

 その新しいゾンビは獲物となる人を求めて、再び立ち上がり動き出していたのだった。


 緩慢な動作で周囲で動いでいる他のゾンビと同じように、獲物を探しながら。








 それが起こったのは突然だった。

 世界中で、一斉に死体が動き出した。


 恐怖に支配されたいくらかの人々は、その死体をチリも残さないほど完璧に燃やし尽くした。

 けれど、それでも事件は次々に発生した。


 地域に関連性はない。

 死因に共通する点はない。

 年齢・性別・血液型・体格・趣味嗜好。


 死者の活動、すなわちゾンビの発生はまったく原因不明だった。


 ゾンビに意識はない。

 ただ死に絶えた体を動かして、ぎこちない、緩慢な動きで生者に襲いかかるだけ。


 様々な機関が原因を明らかにしようとした。

 各国の研究者達も、協力して対抗策を考えた。


 しかし、その原因は分からなかった。

 地球上の何かしらのウイルスが原因になったわけでもない。

 あやしい寄生虫の仕業でもなかった。


 それからもゾンビは、延々と増え続けた。






「シェルターが破られたぞっ! 逃げろ!」

「逃げるってどこにだよ!」


 ゾンビの脅威から逃げるため、人々はシェルターを作って閉じこもった。

 だが、ゾンビは進化していた。


 ゾンビたちは、強くなっていて、軽々と鋼鉄を引き裂けるようになっていた。


 今まで無事だった人達はみるまにゾンビに噛まれて、ゾンビ化していった。

 最後に残った人間は、ゾンビに囲まれた中で「一体なんでこんなことに」と言葉を残して息絶えた。






 最後のゾンビが駆逐された。


 数十キロもあるパワードスーツ……人間の力を底上げする機械服をきた男性は、ギシギシ音をたてる関節をゆっくり動かす。そして、疲れた様子で横に並んだ同僚に語りかけた。


「やっかいな病気だったが、これでやっと撲滅できますね」

「ああ、発生した時は驚きだったよな。普通の人間の姿がゾンビに見える病気だなんて」

「あいつらに捕まった人間達は、研究所につれてかれて悲惨な目にあったそうだ」

「かわいそうにな。でも一体何がしたかったんだ?」

「さあ、あいつらの視点からだと、俺達がゾンビに見えてるってことだから……俺達を治そうとしたとか? またはゾンビ化する対策方法をさぐろうとしたんじゃないか?」


 同僚に話しかけていた男性は、スーツにつけられた物体……動物のアギトを模した治療道具を掲げた。


 デザインが独特だが、治療対象者を拘束して、確実に治療するために、このような形になったのだった。


 近くでは拘束した治療対象者が、護送用のトラックに運び込まれていくところだった。


 今は気絶してぐったりしているが、病院に行けばきちんとした治療を施される予定だ。


 パワードスーツ内に組み込まれたスピーカーから、ニュース流れてきた。


「あ、緊急のやつは流れるように設定してたんだったか」


『緊急ニュースです。正体不明の病気……ゾンビ化の最初の発症者について、新たな事実が判明しました。人類の進化研究に詳しい専門家によりますと、その発症者には自分が抱いたイメージを他人に……』



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