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【第一章】第四部分

「こ、こわい。僕、遅刻したことは悪いことと思ってるけど、湖線さん、光葉さんに何か迷惑なことしたのなら、謝るよ。」

「それが遅刻した人間のセリフですの!」

「校則違反した生徒に、人権はないよ!」

「ひえええ!」

 鰯司はからだをダンゴムシのように丸くして、首をすぼめるしかなかった。

 1分ほどの沈黙があり、ふたりが何も言わないことを確認して、鰯司は課題であるビルの写生を始めた。

からだが光輝く。それまでの直射日光とはまったく別の優しい光である。

鰯司をじっと見つめていた湖線は、カッと目を見開いた。

「ああ、腕が自然に動きますわ。これならまっすぐな線も軽々と引けますわ!」

光葉もサンバイザーの鍔を左右に動かして、自分の状態を確かめた。

「眩しさを感じない。目が生き返った気分だ。これなら絵に集中できるぞ。スケッチブックに気持ちをぶつけてやる!」

ふたりとも、鉛筆を持っている手がスラスラと稼働して、真っ白だった画用紙を見事な直線美が埋め尽くしていく。やがて、見事なビル街風景画が完成した。鰯司がやってきて、絵が完成したということである。

「鰯司さん。ワタクシ、課題ができましたわ。今日は我が家で、盛大なパーティーで、この慶事をお祝いしますわ!」

「鰯司よ。ついにわたしの絵が完成したよ。腐った沈殿物からレアメタルを発見した気分だよ!」

「「わ~い!」」

湖線と光葉は手を取り合って歓喜に弾んだ。

「「はっ。」」

ふたりは冷静になり、ソッコーで分離した。

「どうして、光葉さんと一緒に喜ぶ必要がありまして?」

「こっちだって、そうだよ。湖線と喜びを分かち合うシュミはないよ。」

お互いに背を向けて、以後は無言劇となった。

ふたりは課題を見事に成し遂げた。教師の採点はふたりとも120点であった。

鰯司は生徒全員が帰宅した後も、現地に残っていた。

「夕日がきれいだなぁ。いや夕日オンリーだね。うう。」

無論、夕暮れの街を楽しんでいるのではない。鰯司は勢いがあったのは最初だけで、絵完成しなかった。結果、絵の評価は零点だった。いつもの光景である。


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