【第一章】第三十一部分
「これは合作ですね。すばらしい出来映えです。」
担任は鰯司の背中とお腹の写真を撮って、合成した。
ふたつを合わせると、ピカソの泣く女にそっくりになっていた。
「ふたりとも満点です。つまり同点1位です。」
担任のメガネが白く光った。
その後、この絵の写真は廊下に飾られた。一般の生徒たちがこの絵を見た。反応は一様だった。
「ブキミ過ぎる、悪魔だ。この絵には悪魔という以外の表現が見つからない!」
以後、深夜になると、廊下のこの写真絵から、悪魔が出てくるという学校七不思議のひとつが生まれた。
翌日、湖線、光葉は鰯司と一緒に登校したが、いつもと変わりなかった。いじめたつもりなし。鰯司は被害者だったが、致命的な怪我は心も含めて無かった。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った途端に、校内放送が流れてきた。
『1年1組の二条院湖線、小暮光葉、至急生徒会室に顔貸してほしいじゃん。』
『大ダッシュ、する。』
副会長ふたりからの要求に、全力疾走で生徒会室に飛び込んだふたり。
「同タイムじゃん。」
「ふたり、合格。」
「悪魔スケッチは同点だったから、つまんなかったじゃん。だから、次の1位は白黒つけないといけないしぃ。と言ってもわかってるだろうけどぉ。公式行事、中間テスト。知ってるだろうけどぉ、入学してから初めてのテストが中間テストじゃん。」
「総合点、1位、なるように。今度、差、つくはず。」
両副会長からの指示はシンプルだった。
「勉強でも負けることはありませんわ。」
「わたしの能力では全力で勉強しないと。」
「となると、全教科満点取らないといけませんわ。」
「ミスが許されないのは、かなり厳しいよ。」
ふたりともかなりのプレッシャーを感じざるを得なかった。
こうしてふたりは猛勉強に猛勉強を二重に重ねるどころか、五重塔になるまで、重ねまくった。




