【第一章】第二十三部分
「ところでミスコンって、このまま水着審査をするんですの?」
「やっとその気になりましたね。プールですから泳ぎで勝負です。ポロリがあるよ!」
「いえ~い!ポロリもじゃなく、『ポロリが』、だ~。偶然は排除、必然大歓迎だ~!」
テンションが上がる男子。女子たちもハプニングに対しては期待感があるのか、ニヤリとしている顔が並んでいる。
「よ、余裕で勝てますわ。」
「なんなんだ、このフンイキは。でも1位を掴むしかない。」
ふたりの思考回路は勝負電流が伝導していた。
ふたりは視線をプールに伸ばした。一般的なプールでは。コースはまっすぐに、つまり直線。
「ひええ、ですわ!」
プールでまともに泳ぐためにはサングラスを外すしかない。
「ぐわぁ、ヤバイよ!」
ふたりが再びうずくまってしまった理由はクラスメイトにはわからなかった。
担任は呆れ顔で、ふたりのそばまで歩いていき、シビアな視線と声をぶつけた。
「ふたりともこんな状態で、クラス委員長が務まるのですか?」
言葉と同時に、担任はふたりを蹴飛ばして、プールに頭から転落させた。
『『バタバタ!ウググ!』』
プール監視員を慌てさせるような音が発せられた。
湖線は泳げないわけではないが、同じ場所でぐるぐる回っている。
光葉も室内なら泳げるが、昼間の屋外では無力。犬かきをしようとしてあがいている。
完全に藁をも掴むレベルのふたり。
「ふたりとも泳げないんですね。今にも溺れそうで、だらしないですねえ。」
担任は堂々と泳げない宣言し、さらに付け加えた。
「クラスのみなさんは飛び込んだら心臓麻痺起こすからダメです。これも試練ですから。」
担任は真面目な顔で、鰯司の方を見た。
その時、鰯司には音ではない、何かが聞こえた。
『『助けて!鰯司!』』
頭の中で、ふたりだとハッキリ知覚した鰯司。
湖線さんと光葉さんの声が聞こえた。
(どうして聞こえたのかはわからない。間違いなく僕に助けを求めてる。でもこんな冷たいプールにいきなり飛び込んだら、泳げない僕も死ぬかもしれない。いつもイジメられてるふたりだし。てか、クラスみんなは助けないの?先生はあんなこと言ってるけど、同級生を見殺しにするの?)




