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【第一章】第十五部分

「うん。さすがにそんな神頼みはあまり活用しなかったよ。」

「「やっぱりある程度、神様にお願いしたんだ。」」

ふたりは絶望の足音をメガホンで聞いて、難聴になった思いであった。


後日、来てほしくない合格発表があった。

湖線と光葉は白いボードを見る必要もなく、同点1位であった。ふたりは自分のこと、そっちのけで、群がる受験生をはね除けて、ボード上の鰯司の受験番号を探した。

「やってしまいましたわ。悪魔との約束が果たせませんでしたわ!」

「困ったよ。予想はされてたけど、こんな結果は容認できないよ!」

落胆したふたりに対して、鰯司はわりと平静だった。

(湖線さん、光葉さんには悪いけど、これで違う高校に行けば、新しい人生が開けるかも。)と鰯司は思い、安堵していた。

「あ~あ、落ちちゃったあ。どうしよおぅ。」

セリフを棒読みする鰯司に対して、ふたりはガックリと肩を落としていた。念のためだが、合格したのはふたりで、不合格は鰯司である。

「「これでは悪魔からの命令が果たせない!」」

ふたりは同時に発言したので、相手も同じことを言ってることに、気づかなかった。


しばらく3人は沈黙していたが、そこに用務員らしきジイサンが、薄汚れた白い板を持ってきた。

「これを置くのを忘れておった。ワシもトシじゃからのう。」

ジイサンは板を合格者ボードの横に無造作に張り付けた。そこには2つの受験番号が書かれていて、その下には『以上の2名は補欠合格』と下手な文字があった。

「やりましたわ、鰯司さんは合格しましたわ!補欠ですけど。」

「やった!鰯司が合格したよ。補欠だけど。」

喜ぶふたりを見て、ジイサンが小声でコメントした。

「不思議なことに、合格発表直後に入学辞退者がふたり出たんじゃ。あまりの早さに、補欠合格発表が正式な発表に間に合ったんじゃ。不思議なことがあるものじゃ。」

「どうして、合格しちゃったの。これじゃあ、厳冬の高校の日常が待ち構えているよ。」

『『ギラン!』』

ふたりの睨みは曇り顔の鰯司を真っ暗にさせた。


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