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【第一章】第一部分

世界には悪魔しかいない。宗教的には天使が堕落して悪魔になった、もしくは悪魔の対立軸として初めから存在すると考えられている。しかし、天使は、愛による平和を願う人間が勝手に想像したものである。

実際は、無い物ねだり。天使はどこの

世界にも居場所を持たない。それは人間の本質をみればわかるだろう。どんな聖人、善人にも必ずどこかに悪が潜んでいる。免罪符なぞ、売り物にすらなる必需品である。それは悪魔が人間を創造したからである。

悪魔が作ったのであれば、そこに悪の要素が含まれないはずがない。人間界に、戦いや醜い争いが絶えないのも当然の帰結である。


この中学には成績で常にトップを争っているふたりがいる。学業、スポーツ、美術、音楽、加えてハイクラスの美少女。ふたりは三位以下に落ちたことがない。文字通りのツートップである。

そのうちのひとり、二条院湖線こいとは、完璧なお嬢様である。

文京区随一、5千坪の広大な敷地に構える大屋敷。その二階にある、体育館のような部屋で湖線は考え事をしている。

金色の長いツインテドリルはお嬢様の象徴。やや切れ長の鋭い青眼はつややかな睫毛に彩られている。絵に描いたような体躯の曲線美も大いなる自慢である。胸はもったいないぐらいの巨乳である。中学生としては豊満過ぎて、逮捕寸前である。なお、逮捕とは、湖線の全身を激しく視姦する男子どもが野獣化して、手や足を出す手前までの防衛ラインを破ろうとしているという意味である。

「ワタクシにできないことなんてありませんわ!非人間的なエロいことは別腹ですけど。世界はワタクシにひざまづいて、やがてワタクシのものになるのです。」

部屋には額縁に収められた賞状やトロフィー、楯がズラリと並んでいる。

「天才のワタクシには何でも可能なのですが、たったひとつだけ、どうしてもできないことがありますの。」

湖線はやおら紙とシャープペンを取り出して、線をまっすぐに引いた。紙面には大きな?マークがあつた。それはシャープペンの軌跡であった。

「どうして、ワタクシにはまっすぐな線が描けないんですの?」

『ダンダン』と机を叩いた金髪の美少女。

まっすぐな線は引けないということは、色んなところにマイナスの波及効果があった。

湖線は運動神経も抜群であり、中学3年生でありながら、走力もオリンピック選手並みである。

運動会で走るのはカーブのあるコースであり、滅法速い湖線はいつも圧勝であった。学校の楕円形トラックで計測される百メートルの記録は誰も破れないほどの凄いタイムである。

しかし50メートルタイム走の記録はクラスで最下位どころか、保持すらしていない。というのも、湖線は走り出すと、50メートルの直線では、すぐにコースアウトしてしまう。その実、まっすぐに走れないという事実を湖線は隠しているのである。

湖線はまっすぐ走れないので、必要以上に努力した。結果、ポテンシャルでも高速なのに、鍛えた結果、更にスピードが上がった。しかし、それは楕円形のトラックに適用されることに変わりがなかった。

ゆえに、どんなにいい記録が出ても、湖線の心は深い霧に包まれたままであった。

いちおう付け加えると、湖線に不足するものは、まっすぐな線引きだけでなく、彼氏の持ち合わせもない。まっすぐに言い寄る男子を次々と蹴散らすことも日常茶飯事である。


 ここにもうひとりのトップ女子生徒がいる。

小暮光葉みつはは貧しい家庭の中学3年生だが、湖線とは路線の異なる、やや小柄な美少女である。銀色の髪は慎ましやかなショートで、円らな瞳を湛える小顔によく似合っている。全体に小粒で、胸にはコンプレックスが強く、湖線の胸を『コンプライアンス違反!』と心の中で、毎日指摘している。

光葉は、日中は、常にサンバイザーを被り、サングラスをしている。サングラスを外されると眩しさで、目が点になってしまうのである。

「うちは貧乏だ。才能がないという貧乏なのだ。男女関係も貧乏だ。富という言葉から最も遠い存在。足りないものだらけ。勿論彼氏もなし。才能がない者には、努力しか残されていないんだよ。」

 光葉はいつも同じことを考えては、脳内でリフレインしていた。

努力型の方は努力しないと人並み以下だと思い込んでいて、徹底的に努力した。その結果、1位になったり、2位になったり、の繰り返し。

「2位に落ちるのは努力が足りないから。いや、わたしに最も足りないもの、それは光。貧乏人に光があたらないのは世の常。この前のテストでは、光合成のクレブス回路をブスブス回路と書き間違えて失点したのが原因。わたしは確かにいつもブスッとしたブスなので、つい書いてしまった。」

実際の光葉は美少女として校内で有名であるが、自分が美少女なのかどうかは自分では判断できない。鏡がないと自分の顔なんて見えないし、余程のナルシストでないと、自分が特別にかわいいとか、普通は思わないものである、回りが美少女だと誉めちやしているからこそ、そう思うだけである。

ちなみに本人は胸にコンプレックスを抱いているが、実際はCカップで、形も見事なお椀型の超美乳である。胸のコンプレックスは、美意識にかかる主観の問題である。

なお、光葉は、学業だけでなく、絵画コンクールの金賞受賞者であり、貧しいながらもオルガン練習で鍛えた腕で、ピアノの腕も都内トップレベルである。都内の50メートル走記録保持者でもある。文武両道のスーパーガールである。


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