コンビニ 夜
コンビニ昼 に出て来たコンビニと同じ店舗での話です。
高校でバイトしていたコンビニに、夜勤として雇われた大学生の頃の話です。
季節は夏。猛暑で熱帯夜が続いていた。
夏休みなのに彼女も居ない俺は、同じく彼女なんて居そうにない野郎連中とコンビニ夜勤に勤しんでいた。
暑ければ当然冷たい物が良く売れる。例に漏れずペットボトル飲料水なんかは冬の4倍は売れているらしい。
作業量も4倍なのに時給に四季は関係ないらしい。
売れたならその分を補充しないといけない訳で、夏の夜勤とは飲料水納品との戦いなのだ。
ケチな店長が人を増やしてくれるはずもなく、その日もたった2人で作業分担しなければならない。
表(お菓子や雑貨)と裏(飲料水用冷蔵室)に分かれての作業。
昨日は同じ大学同期の坂上(仮名)が飲料水担当だったので、今日は俺が腰痛に苛まれる番だ。
ちなみに、俺も坂上も彼女が居ないので、“自称”彼女持ちイケメングールプ(店長お気に入り)に3連勤を押し付けられている。世の中クソだ。
夜中なので来店客は比較的に少ないものの、夏休みシーズンなので普段よりは多く感じる。
作業開始から一時間程で3分の1が終わったAM3:30辺りだった。
ガラスケースの内側から店内をチラ見すると、昼間と変わらない程度混雑していた。
放置しておくと坂上がキレるので、作業を切り上げてレジへ向かおうと思った時、奇妙な事に気が付いた。
坂上がお客さんをシカトしてる?
あんなに人が居るのに誰一人レジに並ばないなんてあり得ないし、ガヤガヤ騒がしいので気が付かないはずは無いのだが、坂上は黙々とポテチの納品に励んでいる。
まさか連勤でヤケになったのか?早くレジに戻らなければお客さんに迷惑がかかる!何やってんだ坂上のアホ!
内心毒づきながら慌ててレジに戻るため、バックルームの扉を開いた。
誰も居ない。
若いカップルや夫婦も。
はしゃぎ回ってた子供も。
子供たちを優しく宥める老夫婦も。
誰一人居なくなっていた。
確かに夜中なのに子供とかいるし人が沢山いる時間帯じゃないのに変だなとは思ったが、確実にこの目で見ていたしガヤガヤ雑音も聞こえていたはずなのに、お客さんは消えて居て、坂上が黙々と作業しているだけだった。
俺「さっきまで居たお客さん達は!?いつ出ていったんだよ!?」
坂上「何言ってんのお前。誰一人客なんか来てねーよ。ンな事より、さっさと納品終わらせちまえよ。」
不機嫌そうに答えられたが、とうやら本当に来店客はいないらしい。
居ただの居ないだのモメてる内に来店を知らせる音か鳴り響く。
ピポピポーン。
…ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン ピポピポーン
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お客さんの姿は見えない中、来店音だけが延々鳴り響く。
俺&坂上「………。」
お互い無言で事務所に避難し防犯用の鍵まで閉めてガタガタと震えた。
何か実害がある訳でも無い。
俺が見た人達と、来店音の異常。
コレが揃ってしまった為、それから30分は恐怖で事務所から動けずにいた。
結局、ビビリながらも再起動し、それ以降異変は起きなかったので、なんとか作業を時間内に終わらせたが恐怖は最後まで拭える事は出来無かった。
普段分担する所を一人きりになりたくないが為に、仲良く野郎二人並んで作業した事はナイショである。
何故当日に思い至れなかったのか謎だが、このコンビニの近くには霊園がある。
そして時期的にはお盆休みに入る少し前だった。
もしかしたら、お盆で家族の下に帰る前にお土産を買おうとしていた仏さんだとしたら。
亡くなっても礼儀を忘れない律儀な方々だったのではないだろうか。
そう思うと少し切なくなるが、無限来店音は本当に怖かったので、そこだけはご勘弁願いたかったひと夏の体験でした。