コンビニ 昼
これは当時高校生だった私が、アルバイト先のコンビニで実際に体験した話。
同級生の間で流行っていた原付バイク欲しさに始めたバイトも、早いもので3ヶ月が経った。
レジ打ちも慣れてきて、常連客のタバコの銘柄を覚え雑談する余裕も出て来た頃、それは突然訪れた。
混雑するピークを過ぎた辺り、お客さんの数も疎らな緩い時間帯。
普通のレジ打ちのはずだった。
商品をスキャンし合計金額を伝える。
そこまでは良かった。
カウンター下のレジ袋を取ろうと視線を下に向けたその時。
本来レジ袋の束が置いて有る棚に青白い腕が2本横たわっていた。
腕は棚の奥から這い出すような状態だった。
もちろんカウンター下に人が入るスペースなんて無いし、客側から入ることも出来ない作りだ。
突然の事に驚き硬直してしまった為、お客さんに怪訝そうな顔で促され慌てて作業を再開しレジ打ち終了。
混乱していたが絶対に見間違いでは無い。
何故ならレジ袋を取る際、その腕に少し触れてしまったから。
冷たかった。
生きた人間の肌の温度ではない。
まるで氷の様な、そんな冷たさだった。
都合よくレジ待ちのお客さんも途切れた為、その場から離れたい一心で店の外のゴミ箱清掃を申し出た。
あれは何だったのだろうか。
店長に言おうにも、余りに荒唐無稽な出来事で報告も戸惑われる。
とにかく怖いので、店内がなるべく視界に入らないよう清掃作業に集中することにした。
ゴミ箱の中身を交換し、駐車場脇の鍵付き回収BOXへ収納する。
回収BOXの鍵を締め終えた際、ふと足元に何かが有る事に気付いた。
白い石?
拾い上げてみるとそれは、掌サイズのお地蔵様だった。
背中側に何か書いてあるようだが、文字がかすれて読めない。
不思議そうに眺めていると、駐車場に入ってきたワゴン車から降りた土建業のお客さんから声をかけられた。
「おい、それ水子地蔵じゃないか。捨ててあったの?罰当たりな事する奴がいるもんだな。」
その時は水子地蔵が何を祀ったお地蔵様なのかはわからなかったが、本来こんなごみ捨て場にあって良いものでない事だけは理解できた。
恐る恐る表面の汚れを拭ってから、店長に落とし物として報告した。
落とし主が半年間現れなければ、近所のお寺さんに持っていくとの事だった。
イタズラにしてはやり過ぎだし、何か思い入れがあったとしても、それはそれで恐ろしい。
いずれにしろ、それ以降青白い腕を見る事は二度となかった。