目覚めと出会い
知らない天井、どこかの小説で見た単語がしっくりくる
目が覚めたときに見えたのは古びた木造建築の家の天井だった
昔田舎の祖父母の家で見たような、木目が人の顔に見えそうな天井である
しかもご丁寧に布団までかけられている
考えるまでもないが生きている、死に損なったことがわかる
山奥のかなり深いところまで進んだはずだがまだ人が来る場所だったのだろうか
それか山奥で仕事をしている人間、例えば猟師とか
自殺志願者としてはありがた迷惑というやつだ、礼だけ伝えて早く出なければ
無理をすれば十分身体は動くだろう
と思案していると襖が開く音が耳に入る
「失礼します。起きられましたか?」
返事をしようとしたが止まってしまう
まさか女性の声が聴こえるとは思っていなかったからだ
「あ、目が覚められたんですね!良かった、ちょっと待っててくださいね。すぐに御粥を温めてお持ちしますので!!」
一瞬だった。こちらの目が開いているのを確認するや否や部屋を飛び出して行ってしまった
御粥か、インフルエンザに罹った時に母が作ってくれたのを思い出す
彼女は何者だろう、いくら自分が軽いからと言っても彼女がここまで自分を運んできたとは思えない、他に誰かがいるのだろう
しばらくすると彼女が戻ってきた
先ほどは一瞬でわからなかったが和服だ、まあこの和室なら当然ともいえる
赤、というよりは紅、紅葉した葉のような色の和服に腰ほどまで伸びた金髪が良く映える
流暢に日本語を話すので日本人で髪は染めているのだろう
年頃も自分と大して変わらないように思える、少し彼女のほうが上だろうか
どこか不思議な雰囲気を纏った女性だ
「お待たせしました、御粥お持ちしました。お体の方、起こせますか?」
死ぬつもりで居たのに体は正直なもので目の前にある御粥が食べたくてしょうがない
「お体動かしづらいですか?良ければ私がお口に運んで差し上げましょうか?」
不味い、初対面の女性から介護されるなんて羞恥プレイにも程がある
「いえ!大丈夫です、自分で食べられます!__いただきます」
女性から器を受け取り御粥を食べ始める
薄い塩味の付いた、シンプルな御粥だ、しばらく何も入っていなかった胃に優しく食べやすい
「味付けはいかがですか?お口に合いましたか?」
心配そうにこちらを伺ってくる
「はい、美味しいです。しばらく何も食べていなかったので助かります」
咄嗟だが本音と嘘が同時に口から出ていた、或いは本心だけが出たのかもしれないが
「よかったです、では私は一旦離れさせていただきます。食べ終わった食器は置いておいてください。また後程引き上げに参りますので」
「ありがとうございます」
そうして彼女は部屋を出ていった
次に彼女が戻ってきたときにお礼を言ってここを出よう
慈善事業ではあるまいし何も持っていない人間がいつまでも居座っていたら迷惑でしかないだろう
間が空きましたがなんとか投稿です
今回も読んでいただきありがとうございます
続きを考えるのにかなり時間がかかってしまいますね
書籍化されてる作家の方々の努力、自分が書くようになって初めてわかりますね