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特技は夢オチです。

作者: 陽乃優一

 私には、特技がある。それは、夢を見ている時に、それが夢であると自覚できることである。


 遠くから聞こえる生徒達の掛け声、そよそよと流れる風の肌触り、まだ夕方とは言えないと感じる陽の光。それは一見、リアリティ溢れる感覚だ。


「…あ、これ夢だ」


 学校の屋上に佇んでいた私は、唐突にそう自覚した。


「あり得ないよねー。だって、今の私は社会人だしー。高校の卒業式って何年前だっけか」


 コツは、あまり強く自覚しないこと。意識して記憶を掘り起こそうとすると目が覚めてしまう。それは、もったいない。


「よし、ひさびさに私の超絶爆裂魔法をお見せしよう! 【顕現せよ(イグニッション)】!」


 シュバッ…!!


 屋上の床いっぱいに描かれる魔法陣。『わたしがかんがえたさいきょうの』紋様が光り輝く。


「光と風の精霊よ、我が願いに応え、その力を―――」



 でもまあ、しょせんは夢である。


「…おい、起きろ」

「そのちからをー、かいほうしろー」

「起きろっての、バカ姉貴!」


 ごすっ


「うごっ…」

「…目、覚めたか?」

「…覚めました。おはよう、ナオくん」

「おはよう。まあ、もう出勤時間には間に合わないけどな」

「…えっ。ええええええええええっ!?」


 バタバタ

 ぽちぽち


「…あっ、ぶちょーですか! すいません、今日は1時間遅れて出社します! …はい、はい…い、いやだなあ、寝坊だなんて。私はただ…はい、寝坊です。…はい、はい、では」


 ピッ


「はあ…」


 私の特技の欠点、それは、夢の中に入り込み過ぎて、寝過ごしてしまうこと。記憶を強く意識すれば目が覚めるわけで、諸刃の剣と言えよう。


「『諸刃の剣』を誤用してるぞ、それ」

「ナオくん、私の心を読んだ!? え、もしかして次の夢の中!?」

「声に出てたぞ」

「うそん」

「そのちからをー、てのもな」

「きゃー」


 呆れた顔で淡々とツッコミを入れてくるナオくん。マンションで一緒に住む、大学生の弟だ。


「…朝飯、食べるか?」

「食べる。ナオくんはまだいいの?」

「今日の講義は午後からだからな。もう作ってあるからはよ来い」


 そう言って、私の部屋から出ていくナオくん。大学が近いからと、私と同居して2年は経つ、ポンコツな私と違ってよく出来た弟である。


 成績優秀、眉目秀麗、それでいてスポーツもできる。なものだから、モテるモテる。バレンタインデーとかはそりゃあもう何袋も抱えて帰宅するのが定番である。


「なのに、なんで彼女作らないの? もぐもぐ」

「妄想を特技とか抜かす姉貴のせいじゃねえかな」

「妄想じゃないもん、夢だって自覚してるもん」

「なお悪いわ」


 まあ、ナオくんが私に構わなくなったら、毎朝寝坊する自信がある。そんでもって、一週間でクビになる自信がある。今のところ、ナオくんのおかげで十勝一敗の戦績である。


「それもたいがいだからな?」

「また私の心読んだ!」

「またじゃねえ。人前で独り言言うクセも直せよな」

「ナオくん、優しい」

「常識人なだけだ。ほら、そろそろ出ないとマズいんじゃないのか?」

「きゃー」


 焼き立てパンをあわてて口に突っ込み、コーヒーを流し込む。せっかくナオくんが起こしてくれたのに、一時間の猶予が切れてしまう―――



 でもまあ、しょせんは夢である。


 ドゴオオオオオオオン!


「…はっ!?」

「起きろ! 敵襲だ!」

「くっ…異世界のやつら、魔法大隊を一個師団投入してきやがった!」


 私には、特技がある。それは、夢を見ている時に、それが夢であると自覚できることである。


「目が覚めたか!? 行けるか?」

「…うん、覚めたよ。よし、ひさびさに私の超絶爆裂魔法をお見せしよう! 【顕現せよ(イグニッション)】!」


 でも、この夢だけは、夢であるとなかなか自覚できない。

禁忌ネタな上にn番煎じっていう。

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