こんやくはき
今日、僕はこんやくはき、にした。
他の人に聞くと多かれ少なかれこんやくはきと言うものは悲しいらしい。しかし、僕にとっては全くそんなことはなく、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいである。他の人にその話をしたらすごい引かれてしまったが嬉しい気持ちに嘘をつくことはできない。
彼女とはじめてあったのは、町の公園であった。忘れもしない風がよく吹き、晴れた夕下がりだった。はじめてあった瞬間から何か惹かれるものがあった。向こうもそれを察してゆっくりと頭が下がり、お辞儀してくれたのがわかった。そして、その日を境に僕は毎日毎日その公園に通った。彼女はいつも変わらないやさしい表情で僕を眺めていた。雨の日も、風の日も。そして、彼女の名前は、彼女の首にかけているカードには"つばき"と書かれていた。つばき、なんて美しい名前なのだと感じた。彼女は、嬉しい日は顔を赤くして、悲しい日はうなだれたような表情を見せた。毎日、毎日あっているのでその表情を手に取るよるように感じることができた。そして、見た目にも惹かれた。シャープな体つきと日を浴びて元気に焼けた小麦色の肌は僕の好みそのものであった。
結婚するにあたって親は猛反対をした、というよりどうしてなんだという表情を浮かべた。僕は愛した相手に嘘をつけないと何度も何度も親を説得した。しかし、親がわからずやで最後まで首を縦に振ることはなかった。結局、僕はついには勘当されてしまったが、親を捨て彼女のもとを選んだ。
そして、その後決意を固め、婚姻届を出しにいくことにした。古びた団地を抜けたところに夕暮れ時にポツンとたたずむ受付であった。コンコンとガラスの扉を叩くと、マンションの管理人のようなおじさんがそっと顔を出して、なれた手つきで手を差し出して、紙を受け取った。しかし、落ち着いていた目は急に動転し始めた。そして、僕の目を見て確認をして、僕が落ち着いているのを見ると今度は頭を抱えて問いかけてきた。
「君、これを本気でだしているのかね?」
「はい、何か問題でも?」
「えっと、、日本の法律だと木とは婚約できないはずだけど…」