表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こんやくはき

 今日、僕はこんやくはき、にした。


 他の人に聞くと多かれ少なかれこんやくはきと言うものは悲しいらしい。しかし、僕にとっては全くそんなことはなく、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいである。他の人にその話をしたらすごい引かれてしまったが嬉しい気持ちに嘘をつくことはできない。


 彼女とはじめてあったのは、町の公園であった。忘れもしない風がよく吹き、晴れた夕下がりだった。はじめてあった瞬間から何か惹かれるものがあった。向こうもそれを察してゆっくりと頭が下がり、お辞儀してくれたのがわかった。そして、その日を境に僕は毎日毎日その公園に通った。彼女はいつも変わらないやさしい表情で僕を眺めていた。雨の日も、風の日も。そして、彼女の名前は、彼女の首にかけているカードには"つばき"と書かれていた。つばき、なんて美しい名前なのだと感じた。彼女は、嬉しい日は顔を赤くして、悲しい日はうなだれたような表情を見せた。毎日、毎日あっているのでその表情を手に取るよるように感じることができた。そして、見た目にも惹かれた。シャープな体つきと日を浴びて元気に焼けた小麦色の肌は僕の好みそのものであった。


 結婚するにあたって親は猛反対をした、というよりどうしてなんだという表情を浮かべた。僕は愛した相手に嘘をつけないと何度も何度も親を説得した。しかし、親がわからずやで最後まで首を縦に振ることはなかった。結局、僕はついには勘当されてしまったが、親を捨て彼女のもとを選んだ。




 そして、その後決意を固め、婚姻届を出しにいくことにした。古びた団地を抜けたところに夕暮れ時にポツンとたたずむ受付であった。コンコンとガラスの扉を叩くと、マンションの管理人のようなおじさんがそっと顔を出して、なれた手つきで手を差し出して、紙を受け取った。しかし、落ち着いていた目は急に動転し始めた。そして、僕の目を見て確認をして、僕が落ち着いているのを見ると今度は頭を抱えて問いかけてきた。


「君、これを本気でだしているのかね?」


「はい、何か問題でも?」


「えっと、、日本の法律だと木とは婚約できないはずだけど…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  面白かったです。  平仮名であることから「こんやくはき」が「婚約破棄」でないことは容易に想像は出来ましたが、最後のオチは予想出来ませんでした。  オチから考えると色々と伏線もあって中々楽…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ