大変! みんな逃げていく!?
宿のご飯が美味しかった件について。
ありがとうございます。
これからも是非泊まりたいと思います。
そんなこんなで翌日。
私はさっそく冒険者ギルドにやってきていた。
何しに来たのかだって? 依頼を受けるために決まっているでしょう。むしろ依頼以外に何しにここに来るのさ。
さてさて、どんな依頼があるかなー?
…………?
……討伐? 依頼しかないんだけど…
…ふっ…ふふっ……ふっふっふっ…
無理です☆
…ちょっとー、ルミナさーん。ルミナさまー。どこにいますかー?
…あ、いた。
「どうしました?」
昨日と同じく何故か誰もいない受付にルミナさんはいた。
「依頼が討伐しかないです…死にそうです」
受付のテーブルに突っ伏して困ってますアピールをしてみる。
「ここ元々採取依頼が少ないんですよ。近場にそういった物がないので。それと、3日に1度商人が大量に仕入れてくれたりするので、さらに依頼が少なくなってます。なので討伐くらいしかないんですよね」
うえぇ…まじですか。初心者は一体どうすれば良いのさ。ハードモードに呪われてるんじゃないの私って。
「みなさんパーティ組んで討伐に行ってますね」
「私みたいな戦った事がない子に救済案はないですか」
「ないです」
うわ、笑顔で言い切りやがった。素敵な笑顔をありがとうよ。こんちくしょー。
「うぅ…武器すらない、こんなか弱い超絶美少女な私がソロで討伐とか無理ですよぉ…」
「メイカ様…何故ソロで行こうとするのですか。パーティー組みましょうよ。パーティー」
「…? 私でも組めるの?」
もしや、ちょっとだけ希望が見えてきたんじゃ。
そう思ったのもつかの間、ルミナさんの笑顔が急に曇り、顔を横にむけた。
……ん?
「……たぶん」
「自分から言い出したのに!?」
期待させるだけさせて落としてきやがったよこの受付嬢! 言い出しっぺのくせに!
「と、とりあえず、ここにいる冒険者の皆様にパーティー組んで依頼行ってくれる人を探すしかないですよ。もしかしたら、組んでくれるかもしれないですし」
「丸投げかいな!?」
なんて無責任な受付嬢ルミナだ。結局自分で探すんかい。
……ふっ、まぁ良い。
ここはこの私の華麗なる話術で1発で成功させてしんぜよう。
今の時間はそんなに人はいないけど、まぁ1発で決まるだろうからいいかな。
といっても、男だけだと怖いから出来れば女の人がいる所がいいんだけど…。
…よし。あそこの男2人と女1人のパーティーらしき所に行こう。
良い迷花。最初が肝心よ。出来るだけ丁寧に愛想よく、もう逆に向こうからパーティー組んでくださいって言ってくれる感じになれば勝ちだよ。
「……い、っち、るぞ」
「お…いや……ぞ」
「……」
およ? 気のせいかな? 私が向かってるパーティーの人達が、私を見ながらひそひそと話し合ってるような…?
てか、女の人涙目になってない? めっちゃ首を縦に振ってるけど…喧嘩かな?
…よし。パーティーを組ませてもらうんだ。仲直りしてもらえるよう仲介しよう。
「すいませーん」
「ごめん!」
「よし行こう!」
「まだ死にたくないんです!」
…………え?
「あ、あの!?」
再度呼び掛けたら、大声で謝られて3人ともギルドから出ていってしまった。
…………ぐすん。
私が一体何をしたと言うの…
チラリと、ルミナさんを見ると、ポカーンとした感じで私を見ていた。
とりあえず、ルミナさんの所に行く。
「…どう、なってるんですか……」
「え…いや、私に聞かれても……むしろ、メイカ様何かやったんじゃないですか?」
「…何もやってないですよぉ!」
うぅ…くそ。何もやってないはずなのに何であんなに全速力で逃げられたの……? 本当に何もやってないのに…
「……もう1組当たってきます…」
「あ、はい」
…きっとさっきの人達は、少女恐怖症だったに違いない。今度は大丈夫。
女の人いないけど、今度はあっちの男3人のパーティーらしき所に声かけてみよう。
「あの」
「すまない!」
「入れてあげたいんだけど、本当ごめん!」
「俺、もうすぐ好きな人と付き合えそうなんだ。だから、まだ…!」
声をかけた瞬間、各自一言言ってギルドから出ていった。…あ、最後の人は頑張ってね。うん。
…………
ルミナさん!? どうなってんのこれぇ!? なんで、みんな逃げていくのさ! おかしいでしょうが!!?
「知りません! 本当に知りませんよ私!?」
「…くそ! こうなったら、片っ端から行くしかない……!」
次の人!
「悪い!」
はい次!
「…逃げるが勝ちってな!」
なんでやねん!
「……やめてくれ」
なんかごめん。
「俺はまだ死にたくない!」
私だって死にたくないよ!?
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
やめて! 話しかけただけでパニクらないで!? 普通の女の子だよ私!?
「……」
生きて! お願い生きて!? かみさまぁぁぁぁぁ!!?
……と、いうわけで全滅です。
「ルミナぁぁぁぁぁぁ!!?」
「メイカさんは一体何をやったんですか! ギルド史上初の閑古鳥ですよ!? どうするのこれ!!?」
「私が聞きたいよそんなこと!」
受付のテーブルで泣く。
どうなってんのこれ。
私は悪魔か何かなの。
ただの人間だよ。
か弱い人間だよ。
超絶美少女迷花だよ。
「…はっ!? まさか、私が可愛すぎるからみんなから神々しく見えて、緊張して逃げてってたんじゃ……!?」
「…っんなわけないでしょ!?」
バン! と、ルミナさんがテーブルを叩いた。
……で、ですよね~。