閑古鳥
「チュンチュン」
「何やってるんですか?」
「閑古鳥だから鳴いてる」
「あ、はい」
何故か、閑古鳥になってしまったので、現在暇をもて余している。
ちなみに、ルミナさんとはちょっと距離が縮んだ気がする。
「ルミナさん」
「なんですか? お話ですか? 良いですよ? どこかの誰かさんのせいで、冒険者の皆様いなくなっちゃったし? どうせ暇ですから話し相手にくらいにはなりますよ?」
……ほら、ちぢん……でないね。うん。むしろ、離れていってない?
「…私だって知りたいよ」
他のギルド職員は、誰もいないんで休憩してきまーすとかいっていなくなっちゃったし。
うーん、どうして冒険者だけ私を見ると逃げていくんだろう?
「…はぁ、もしかして、ゼグイさんに呼ばれたのが関係してるんじゃないですか?」
「ゼグイさん?」
ため息を吐きながら、ひと思い出したようにルミナさんが言う。
ゼグイさんねー。確かに変な事は聞かれたけど…
「実は強いんじゃないかー? って聞かれただけだよ?」
「…え? 強いの?」
ルミナさんは、少し驚いたような顔をした。
「まっさかー。強いわけないじゃん。試しに壁殴ってみたけど、普通に痛かったよ」
「…壁が?」
「私が!」
私が怒るとルミナさんはクスクスと笑っている。
まったく、壁が痛いってどう言うことよ。……あながち間違ってはないか?
はぁ、とため息を吐いた。
「…ルミナさん。私に敬語使わなくていいよ? 私もうため口になっちゃってるし」
「そう? それじゃメイカも私の事はルミナでいいわよ」
お互いため口なら友達の部類に入るかな? いや、入れとこう。
パンパカパーン。迷花は異世界初の友達を手に入れたー。
「誰も来ないねー」
「そうねー」
2人して入り口を見つめる。
1人で依頼行こうかなー。でも、武器持ってないんだよなー。…素手があるか。
じっと、自分の拳を見つける。
「どうしたの?」
ルミナがそんな私に気づいて話しかけてくる。
「…この拳で討伐できるかなって」
「…大丈夫? 頭でも打った?」
ルミナがめっちゃ心配そうに頭を触ってきた。
…くっ、なんかむかつく。
「…あぁもう! 誰か来てよー!」
ルミナしかいない受付で私は叫んだ。
「……来たけど?」
そんな声が聞こえ入り口を見ると……なんだ、ただの子供か。
「…なんか、無性にイラつく。殴っていい? …ううん。殴る」
「宣言しないで!? 私死んじゃう!」
慌てて言うと、なんとか拳を下げてくれた。
そのままその子は私達の所にやってくる。
「なんで2人しかいないの?」
「犯人はメイカです」
びしっと、ルミナが指を指した。
人に指を指しちゃいけないんだぞー。私は気にせず指すけど。
「ほう。答えよ少女。一体何をした」
「何そのキャラ」
「一度やってみたかった。もう満足」
「あ、はい」
その子は、本当に満足そうに頷いていた。よ、よかったね、うん。
「それで、何があったの?」
「パーティー組みたくて話しかけたらみんな逃げちゃった」
「…ルミナ。何があったの?」
おぉーい。嘘じゃないよー。無視しないでー。泣いちゃうよー。たぶん15歳の私が泣いちゃうよー。……ぐすん。
「メイカの言うとおりです。話しかけたら、みんな逃げ出したんです」
ルミナがそう言うと、その子は泣いている私の方を向いた。
「嘘泣きはいいから、何したの?」
…バレてた。
「本当に話しかけただけだよ。…はぁ、依頼どうしよ」
「そう…一緒に行こうか?」
その瞬間私の目はキュピーンって感じに、光ったであろう。
「連れてってください!」
その子の手を握りブンブンと振る。
いやー、最悪ソロで行くことになるかとおもったけど、よかったよかった。これでこの先安心だ。
「うん。それで、何が出来る?」
……
「待って。依頼受ける前に、何が出来るか教えてもらわないと役割分担が…」
…………
「何もできません!」
あ、どうしよ。冷や汗がやばい。後悔しかない。
「ばいばい」
一度フッて笑うと、その子は1人でボードに向かう。
「お願いします! 見捨てないでください! もうあなたしかいないんです! 何でもするからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
背景:お母様とお父様
ついに私は年下に泣きつきました。泣きそうです。