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Ⅰ《未確認後部領域》(3)

CAUTION

一 分かりやすい文章ではありません。文体も重めです。

二 容赦なく人が死んでいくスタイルです。苦手な方はご遠慮ください。

三 ある程度の航空軍事用語を知っていると楽しめます。それを前提としている部分もあります。

四 明らかに有り得ない設定が無数にあります。架空と割り切ってお楽しみください。

五 多少の差別的表現、汚い言葉が含まれます。敏感な方は閲覧を非推奨します。

六 筆者の軍事知識は並み以上マニア以下といった所です。四にも書きましたがご理解ください。


上記の六つをご理解頂ける方は是非お読みください。


 数時間の休息の後、オノンネルと行う部隊スケジュール調整の為、アセンダンシィ中央司令部、その片隅にある個室に晴臣は向かう。時刻は夜に差し掛かっている。何回かのエレベーター乗継と徒歩での移動だった。ゲートの度に衛兵に識別カードを確認させ、チェッカーに通す。司令部に着くや否や、通りがかった情報担当士官の少尉に敬礼される。晴臣も敬礼。中央の巨大ディスプレイには先ほど作戦準備を行っていた三番機(オータス)のシンボルが表示されている。エマンスド海峡上空、その半分を越えるか越えないかと言った按配だった。作戦予定によれば一連のマキナシリーズの中でも特に強力な電子戦装備を持つオータスがヴォ―タル連邦の制空圏とされている空域の淵を飛行、迎撃の有無や敵レーダー周波数の解析を行う強襲電子偵察任務だ。このオータスは兵装量低下による通常戦闘能力のダウンを考慮せず、突き詰める性能まで電子戦に特化した異彩を放つ機体である。その持前の機動力と速度性能、高度な電子戦闘力で次元が異なる空戦を行う。

 機械のように端末に張り付くオペレーターを横目に部屋へと入る。急に明るい。眩しい。中ではオノンネルと勤務軍装に身を包んだ何人かの士官がテーブルセットに腰を掛けながら書類に目を通している。

 「休息はとれたか?今日の模擬空戦は上々だったらしいじゃないか」とオノンネルが声をかける。何、何時もの事だ、と晴臣は軽く流した。自らも席に着く。一人の士官が立ち上がり、部屋の脇にあるコーヒーポッドからマグへと注いで晴臣の手元に置いた。

 「で、どうなっている?」

 早々に晴臣は本題を切り出す。

 「ゆっくり行こうと言いたい所だがそうも行かない。久しぶりに大がかりな作戦が立案された」 

 「大がかり?」

 「戦術軍総力での決戦。エマンスド海峡(Rゾーン)の制空権を完全に掌握する」

 「冗談じゃないのか?一戦闘機乗りとして言わせて貰うが幾らなんでもそいつは無謀だ」

 晴臣はフライトスーツのシガーポケットからおもむろに煙草を取り出すと火をつけた。ディーヴァ。歌姫の名前を持つやたらと細長い紙巻。中性的で全体的に細いパーツの晴臣に何処となく似通う銘柄だった。紅茶を更に焦がしたような味と称される独特の風味を持つ。ケースには青い女神のシンボル。煙が上がる。

 「全軍を上げてと言っただろう。とは言っても主に航空軍と海軍の仕事にはなる。その次に海兵隊、最後に陸軍」

 「どういう寸法なんだ」

 この部屋にいる人間すべてが第一級機密関与資格を持つ。軍部レベルでの機密でなければ情報のすべてを入手できる程の人間だ。

 「まずは巡航ミサイルによる沿岸一帯の防衛ラインへの飽和攻撃。次に|敵対空レーダー網の破壊、更なる攻撃と海兵隊の上陸で沿岸一帯を制圧。橋頭堡を確保する」

 「そんな子供が描くような作戦でエマンスドが落ちるとでも?だから統帥部は馬鹿だと言われるんだ。前線の事が全く分かってない。連中は本当に戦争が膠着状態に入っている今でも、Rゾーンで頻繁に遭遇空戦が行われている事、双方に被害が出ている事を知ってるのか?」

 「口を慎め大尉。私だって状況は理解している。だが、このまま延々と睨み合いを続ける訳にも行かないだろう。被害が出ようとも我々はこの戦に勝たねばならない。終わりなき戦いにする訳にはいかぬ」

 しばらくの間、部屋に沈黙が走った。士官も顔をしかめている。晴臣の煙草が加速。三本目に突入。

 「…で、我々の役目は何なんだ」

 口を開いたのは晴臣だった。恐らく自分以外のここにいる人間は全てを知っていて、その役割を担わせる為に己を呼んだのだろうと理解していた。これは戦争だ。戦線は膠着状態、地理的にもお互いに侵攻しないまま睨み合いを続ける状況で実戦の空戦任務は極めて少なかったが、それでもその果てしない海を飛ぶ事は多々あった。海峡の先の敵地から、また海上の艦からレーダー照射、レーダーロックを受けた事も少なくなかった。ミサイルアラートが鳴り響いた事も何回かある。遭遇空戦も多々あった。

 「アセンダンシィに与えられた役割は各部隊の掩護、その戦闘能力を生かしての制空任務と上陸支援。敵艦艇、レーダー網への攻撃。以上だ」

 「ようするに何でもやれという事か」

 「そうなるな。だが最優先目標は制空権確保に寄与する事だ。対海上戦闘と上陸支援は海軍の空母戦闘飛行隊が行える。制空権確保は空軍の役割だがその地理上、空戦を行えるのは短時間だ。幾ら空中給油を行うと言っても限界がある。数機ではない。戦闘機だけでも三百機近くが出撃するとの予測なんだ。第一波を飾るのは空母搭載機によるSEADだが、同時に海域警戒中、また基地より進出してくるであろう艦艇への対艦攻撃や敵航空機への迎撃も行う必要がある。言ってしまえば同時進行という事になる。対潜戦闘は我々が関知出来る問題ではないがね」

 「海軍の規模は」

 「空母戦闘攻撃群が五。正確に言えば空母五隻、ミサイル駆逐艦が二十隻と言ったところか。その他に攻撃型原潜、補給艦辺りも出るだろう。厄介者扱いされてた対地攻撃専門のヤツも出撃だそうだ。いよいよ面目が立つといいんだが」

 「あぁ。あのなんだっけ…」

 「ウィドウですか?」士官の一人が助言。

 「そうそう。ウィドウだった。あれはそれなりの戦力になるだろう。なんと言っても対空装備はほぼ持たずに巡航ミサイルばかりを積んだヤツだし」

 晴臣が名指ししたのは対地巡航ミサイルと長距離対地攻撃用GPS誘導弾による地上への継続火力投射を目的とした特殊駆逐艦だった。役立たずと称され生産は二隻で打ち切りとなった悲劇の艦艇。それが今回は出撃するらしい。

 「当たるかどうかは知らないがね。作戦に投入される巡航ミサイルは四百発近いと聞いてはいる」

 「幾ら海面を這って飛行するとは言え五割は撃墜される。海峡を越えた海岸線には強力な防衛網が敷かれている。近くに幾つかの前線基地もあるし迎撃に上がる機体も多いはずだ。到達するのは運が良くて二百発未満。それこそ電撃戦しか方法はない」

 互いに互いが同程度の規模の戦力を海峡防衛に充てている。今回、ヴォータル連邦は内陸からも増援を送り強大な規模の軍事力で本格的な侵攻を開始する予定だった。宣戦布告から既に一年近く、この状況を維持する事は得策ではないと遂に重い腰を上げたのだろう。国内や議会の反戦派を抑え込む必要性、民衆からの支持も戦争には不可欠だった。ただでさえ弾道弾が使えない状況の中、軍人が命じられるままに動く事だけが戦争ではない。

 「作戦開始は何時だ」

 「不明。だが可能な限り早期にはなる。一週間程度だと見ていい。実際は海軍が動き出すから筒抜けだろうがな。空を飛ぶ我々と違って連中は鈍足だ」

 「作戦通達とともに侵攻開始という事か…」

 士官が更に詳しく概要を説明する。部屋中央にあるモニタに各種情報を表示、それらの解説。晴臣とオノンネルはそれを静かに聞いた。

 テーブル上の灰皿に吸殻が盛られ、コーヒーマグが空になった頃にそれは終わった。ここから先は晴臣とオノンネルで行うスケジュールの管理だった。役目を終えた士官たちが退室する。

 一気に部屋の空気が軽くなった。

 「どうする、部隊機の管理は」

 「作戦開始までは威力偵察が主になるだろう」

 「嫌だねぇ。小突くのはあんまり好きじゃない」

 「お前は敵の迎撃にあった事があったっけ」

 「何回もある。一回、四機編隊のスクランブルをくらったことがある。やろうと思えば出来なくはないんだろうが機体、人命が優先さ。おいとました」

 「久しぶりの大規模空戦だな。開戦以来の」

 「しょうがない。地形的に主役は空。ある意味、Rゾーンをどちらかが掌握しなければこの戦争は終わらない。長期化で喜ぶのは軍需産業くらい。ぱっぱと片を付けた方がいい」

 「そう言えばどうだ、新任のECO(タリオニスライダー)

 「会って一週間だが悪くない。逆に良いかもしれない。素行に若干問題ありだが気にするほどではない」

 「幼いという訳か」

 「そりゃそうだ。あんなのがケツに乗っかってると考えると今でも色々と恐ろしく思う。ただ適性としては最高だな。元情報軍、諜報部は伊達じゃなさそうだ。だが、そもそもの計算上、十歳かそこらで軍に入隊とは彼女はどういう経歴の持ち主なんだという疑問はある」

 「詳細な経歴は確認できない。それはお前も同じだろう。同じ機密資格だからな。記録は完全に抹消されている」

 「まさに未確認後部搭乗員と」

 「正確に言えば未確認後部領域アンノウンバックゾーンだな。電子機器の墓に収まる死人」

 「だが腕はいい。その事実だけあれば構わない」

 「お前はそういう男だ。男と言うより人間か…本題に入ろう」

 おおよその作戦開始を見積もり、それまでに複数回の威力偵察飛行を行う事を確認。現在飛行中のオータスのように制空空域ギリギリを飛行、敵の迎撃の有無を調査する。敵の迎撃があった場合は応戦。今回と違うのは戦闘になる場合に備えて二機での出撃を行うと言う事だけだ。生存率も急激に上がる。ただし、電子戦闘情報収集は行わない。

 「出撃機の選定は大佐に任せる」

 「お前も上がるか」

 「どちらでもいい。必要なら何時でも」

 「お前はギリギリまで温存しておきたい」

 「ならそのように」

 灰皿に山盛りではないが、それなりの数が重なっているタバコ。ディーヴァ。無数の歌姫が身を散らせている。

 「一本貰えるか」

 「珍しいな。大佐が吸うなんて」

 「たまにはいいかと思うんだ」

 晴臣は驚きながらもディーヴァを一本とライターを渡す。大佐が慣れた手つきで着火、煙を吐き出す。

 「吸わない割には随分と慣れてるな」

 「これでも昔はヘビースモーカーだったのさ。今じゃ保健部がうるさい」

 「そんなのを気にして良く司令官が務まる」

 「地上に縛り付けられていると色々と制約が多いんだ。私の立場もある」

 「それはご苦労様です、大佐殿」

 「だからこそたまにこうやって他人から貰う。この銘柄、なんてヤツだ?」

 「ディーヴァ、エンハンスドスリム。タールは十ミリ、ニコチンはポイントエイト」

 「味の割には随分と濃いんだな。紅茶っぽい味も相まって調子に乗って吸いそうだ」

 「大佐は何を?」

 「シットアント」

 「そいつは凄い」

 オノンネルの口から出たのはクソ野郎なアリ(シットアント)の名前を持つ銘柄だった。開発者が試作品を吸ったら地べたを這いずる程に強烈だったと言う逸話を持つ強い銘柄であり、燃焼材が配合される為に直ぐに消えるが、何とも言えぬ独特の風味、シットと言う強烈なネーミングから多くの愛飲者を生み出した罪深い煙草。しかし、常飲するのは余程のスモーカーであった事を示している。ヘビーよりかは愛好家に近いかもしれない。

 「自分でいうのも難だが似合わないな」

 オノンネルも元は戦闘機搭乗員である。今でも戦術航空軍の戦闘機操縦資格を維持し、年間規定飛行時間を保つ為に前線にこそ出ないが戦闘機には搭乗している。その過去は前大戦に於いてグレーゴーストの部隊通称で名を轟かせた124TFSに属し、マッドマン(気狂い男)の異名をとった歴戦の戦士だった。今でも通常の飛行訓練ではなくアグレッサーとの空戦演習を好み、晴臣も安全確認の為に後部座席へと搭乗した経験が何度もある。同型機のFA-181同士によるACMだが、技術や操縦技量の前に飛行スタイルが現代の戦闘マニュアルとはまるで違う。あまりに野性的で本能のままに襲い掛かる猛獣と評するのが相応しく、その勝敗は様々だったが、あまりに無茶な機動飛行はACMの天才集団であるアグレッサーのパイロットをもってしても再現できないと言わしめていた。初老だが筋骨隆々とした体格で、彫刻を思わせる顔立ちに髭を蓄えた姿は如何にも軍人だった。そんな人間が異様に細い煙草が持つ姿は何処か自虐的にも思える程に不釣り合いだ。

 「お前は戦闘機乗りの割に随分と細い。第一印象も今もそう思っている」

 「自分でも不思議に思ってるんだよ。前に医療実験団で色々と検査をさせられた事があるが何処にも異常は見当たらなかった。ロードスは俺よりも細いけどな」

 「彼女はスペシャルさ。お前もだが」

 「もう一本、吸うか」

 「いや、いい。味は好みなんだが壊滅的に様にならない」

 「これエンハンスドスリムだからな。ノーマル、スリム、スーパースリム、エンハンスドスリムとある。ノーマルならいけそうだが」

 「今度、買っておいてくれ。私は隠れて吸うしか手段がない」

 「レーダーステルスならぬシガーステルスね」

 「強力なSCMシガーカウンターメージャーが必要だよ。マキナ並みの」

 晴臣は「くだらねぇ」と笑う。

 「取りあえず調整は済んだ。現役戦闘機乗りの意見が聞けるのは貴重だからな。退席してよし」

 「了解」

 晴臣は席を立つ。何度か自分で注いだコーヒーマグは空になっていた。

 「思い出した、もう一個話すことがある」

 「なんだ?」

 晴臣は振り返る。

 「明日、休暇日だろう。EB-81へは飛ばなくていい。代わりに十番機(ムーンライト)を送る」

 「何時もの事だと思ってたが急にだな。何かあったのか」

 「お前は良くても少尉がいたたまれない。暫くの間は基本的にスケジュール通りの行動を命ずる」

 「随分と優しいな」

 「やっとタリオニスライダーが定着しそうなんだ。延々と悩みのタネで頭の片隅には何時もへばりついてた事案だった。何枚の始末書を書かされたか忘れるほどに。少尉には降りてもらっては困る。例え軍人、その能力が優秀であったとしても年相応な部分は少なからずある。それは感じてるだろう」

 「否定はしない」

 「だからこそだ。食事にでも連れていったらどうだね」

 「安月給なんだ。そんな金はどこにもない」

 「よく言うぜ。アセンダンシィ航空機搭乗員の報酬は通常部隊の倍だぞ。倍」

 「酒とタバコと音楽に消える。時は金なり、ってジパングでは言うんだが」

 「まったく。ともかく、これから長い付き合いだろう。上手くやれ」

 「了解しました大佐殿」

 晴臣は肩をすくめて皮肉った。

御無沙汰しております。アイシェードです。最近、徐々にですが読んで下さる方が増えているようで嬉しい限りです。価値ある時間を提供できていますでしょうか。

先日、若いオタク達と話す機会があったのですが、自ら穴を掘り、地雷を埋め、特攻して自爆しました。ジェネレーションギャップを感じております。バイクやら車やらの話から始まり、ウマ娘の話にボトムズ、マクロス、パトレイバーで応えるというオチ。

急に2000年代アニメの話題になり、日常系アニメでゆるゆりやご注文はうさぎですか?ではなくけいおん!を挙げ、テーマがゲーセンに移ると「ゲーセン通いはやめといた方がいい」とかと自分の口が言えた事ではない発言。はい。その昔、入り浸ってました。某首都高レースゲーム、某人型兵器操縦ゲームに熱中していた時期があります。

これ以上話すのは危険そうだったのでその辺りで切り上げましたが、実際は古今を問わずにアニメからゲームから一通りは通ってきた道なので、アイシェード式多段階墓穴採掘システムは絶賛スタンバイ中です。もう何でもやりました。久しぶりにスマブラと聞いて気持ちがホッコリしましたよ。今でも未だにアーマードコア三部作、2シリーズ、3シリーズを遊んでいる人間なんで…。

本当に申し訳なかったです。これを読んでくれているなら謝罪します。ごめんなさい。

先日のE3、エスコン7、ディヴィジョン2、デススト、そして歴代フル参戦のスマブラ、河森デザインのデモンエクスマキナと楽しみなゲームがたくさんですね。スマホゲーム全盛期の昨今ですが、こうして据え置きやPCのゲームが出るのは非常に嬉しいです。ここまできたらACの新作も出るでしょう。個人的にはハイスピードアクションではなく、PS2までのスタイルでもう一度遊びたいと思っていますね。

随分と話がそれましたが、ここまで読んで下さりありがとうございます。今後ともごひいきに。


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