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妄想偉人伝  作者: 白樺土竜
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モイス艦隊

心「唯奈せんぱーい、遅れてすみませーん」

唯奈『あら、心ちゃんが遅れるなんて珍しいですね。どうかしましたか?』


 ここはとある国のとある学校の歴史研究部。この部では、たった二人の女子部員が熱心に歴史の勉強をしている。


「いえ、ちょっと地理の追試がありまして」

『そうでしたか。それはお疲れ様です』

「いえいえ、勉強しなかった私が悪いですし……。それより、今日はどんな偉人の話を聞かせてもらえるんですか?!」

『そうですね。じゃあ今日は世界を股にかけ、国際流通の世界に革新をもたらしたモイス艦隊についてお話ししましょうか。地理の勉強にも大いに関係がある人ですからね』


「はい。確かモイス艦隊って、世界で初めて世界一周をして、正確な世界地図を作ったんですよね?」

『そうね。この艦隊が作った地図を元に今の地図が作られたと言っても過言ではないわ。後に衛星写真で作った地図と比べても殆ど狂いがなかったそうよ』

「へー」


『モイス艦隊を率いた、モイス・ダイダラは1752年に、神聖カロライナ帝国を支配していたダイダラ家の五男として生まれたの』

「ダイダラ家って、あのアルタミラ大陸のほぼ全土を支配していたっていうあの皇帝の家ですか? 滅茶苦茶上流階級じゃないですか!」

『そう。だから小さい時から様々な英才教育を受けていたらしいわよ。だけどモイスはやんちゃだったらしく、勉強の時間になるといつも屋敷を抜け出して海に行っていたそうよ』

「そうなんですか。勉強嫌いなんて私と同じですね。へへ」

『でも、モイスは天才だったらしく、一度勉強したことは殆ど忘れなかったそうよ』

「その頭脳が欲しい」

『加えて話術も巧みで、人心掌握もお手の物だったんだって』

「なんですか、それ。政治家の方が向いてたんじゃないですか?」


『でもモイスは野心と義侠心に溢れていて、そういうのには興味がなかったみたい。

彼の人生の転機は突然訪れるわ。それは彼が17歳の時だった。その頃彼は冒険家に憧れていて、数々の無人島に行ってはその島の地形を天文学と測量術を使って紙に書き起こす作業をしていたわ。まぁ早い所が地図ってことね。何枚か溜まったところで彼は父であるダイダラ8世に自分の地図を自慢しに行ったの。でも当時の地図は出鱈目ばっかりで殆ど役に立たなかったから彼の地図もそれらと同等の評価を下されるところだった。本来ならば』

「本来なら?」

『そう。ところがモイスの地図を見たダイダラ8世は雷に打たれたような気分だった。『これこそ正にあの島の正確な地図なのではないか』と』

「え? どうしてですか?」

『フィーリングだそうよ』

「え?」

『根拠はないけど直感でそう思ったんだって』

「そんな曖昧な」

『でも、今ではダイダラ8世もよくその無人島に行っていて、自分の思い描いていた島の形と合致したからじゃないかって言われているけれどね。

それで、モイスの地図に感銘を受けたダイダラ8世はモイスにある事を命じるの。それが世界地図の作成よ。当時神聖カロライナ帝国は更なる領地拡大を目指し奮闘していた。その為には戦争に勝つ必要がある。当時帝国はダーマ大陸のタンゴ合衆国と戦争寸前だったの。いつ戦争になってもいいように帝国は正確な地図が必要だった。そんな時に現れたのがモイスの地図だった。8世はミーナ教教祖のミーナ様からのお告げだと思ったかもしれないわね。それと、モイスに世界地図を作らせたのは彼の能力を持て余していたというのもあると思うわ。彼は五男だから直接政治には関わらなかったし』


「成る程。それで、モイスはどうしたんですか?」

『彼は待ってましたとばかりに意気揚々と海に飛び込んだの。大量のお金と大量の船乗りを携えて、それはそれは大きな艦隊だったらしいわ。彼が最初にした事は、各大陸に彼の協力者を作ることだった』

「どうしてですか?」

『彼らだけでやると世界地図完成までにかなりの時間を要するからよ。8世が下した期間は5年だったそうよ』

「は? 5年? バカじゃないんですか?」

『それも仕方なかったの。5年以上続けるとまず間違いなく戦争が起こる雰囲気だったんだって。でも結局彼が世界地図完成に要した時間はたった3年だったの』

「え? もう一度言って貰ってもいいですか?」

『3年。彼は本当に物凄く頑張ったの。彼は伝書鳩を飛ばしたり、直接会話したりして協力者を募った。彼の魅力に多くの者が魅了され、彼の協力者は次第に増えていった。渋る者は大金を渡して協力させたりもしたらしいわよ』

「流石、上流貴族」

『彼は教育者としての才能もあって、殆どの協力者を自分と同等レベルの測量士にまで育て上げたの。しかも短期間で』

「リーダー効果凄まじいですね」

『船乗りとしても優秀で、隊長なのに自ら舵を取ったり、帆を揚げたりしたそうよ。船が嵐で大破した時も率先して修理して、誰よりも上手く直したんだって』

「狂人ですね」

『その他にも船内に流行り病が蔓延したり、食糧難になったり、モイスが戦死したりと数々の苦難があったけれど、彼らは無事たった3年で帝国に辿り着いたわ。正確な世界地図を携えて』

「そうだったんですね。……ってモイス途中で死んだんですか?! しかも戦死?」

『そう。現地の部族長と戦って負けたんだって』

「そ、そんな事が。だからモイスじゃなくて、モイス艦隊なんですね」

『彼が達成した偉業は世界一周や世界地図の作成だけじゃなかったわ。彼は数多くの島やそこに眠る資源を発見した。彼の名が由来となった地名は実に500以上。モイッサー大陸も彼が発見したんだよ』

「え! あのモイッサー大陸も!」

『そう。更に彼が発見した大量の資源は世界経済を大いに発展させ、彼が作った地図のおかげで貿易船の遭難や事故がそれまでより40%ほど減ったそうよ』

「本当に凄い人ですね。もし戦死していなかったら他にどんな事をしていたんでしょうか」

『彼は死に際、船員にこう言ったそうよ。『次は夢の世界を探検してくるよ』と』


「本当に冒険が大好きだったんですね。私と同い年でこんな事を成し遂げるなんて凄いです。なんだか地理を勉強する気がモリモリと湧いてきました!」

『あら、とてもいい事ですね。モイス艦隊が残してくれたものをしっかりと受け継ぎましょうね』

「はい! だーかーら、唯奈先輩。地理の勉強教えてください!」

 心はガシっと唯奈に抱きついた。

『も、もう。そんなに抱きつかなくてもちゃんと教えるよ〜』


ー完ー

質問や今後やってほしい偉人の設定などがあればお気軽にどうぞ。

ただ、作者はリアルが忙しいのであまり頻繁に投稿できないかもしれません。ご了承ください。

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