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言えるわけない  作者: 鈴音
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序章

「……好き」

 抱きついているのは、酔っているからだ。

「好き、です……」

 声が震えているのは、酔っているからだ。

「藤本部長のことが」

 告げないと決めたことを告げているのは、酔っているからだ。

「好きなんです」

 今なら、何を言っても酔っ払いの戯言で片付けられる。


 だから、お願い。

 お願いだから、何も言わないで。何もしないで。


 私は、まだ。

 どんな形でもいいから、あなたのそばにいたいの。


 だが、必死の思いもむなしく、大きな手によってソファの上に押し倒されてしまった。

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