表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と魔法使いの休息  作者: クレア
2/3

「終わった終わった、一旦休憩しよう」


 旅をしていると道中魔物と出会うことはまあそれはある。そんなとき頼りになるのが俺の相棒である魔法使いノアだ。


「というか、俺1人じゃ勝てないんだけどね」


 そんな呟きにノアは、わかればよろしい、と言わんばかりのドヤ顔をしている…もとが無表情のノアにしては、だ。


「はぁ〜あ、俺も強かったらなぁ」


 俺は産まれる前から勇者になることが決まっていた。そして、それを誇りに思い日々研鑽を積んできた…ハズなのだが


「なんでこんなに弱いんだ…」


 勇者として、同年代より少し早く剣術を始め、周りより良い指導者に教えを乞うた。が、俺のセンスの無さは桁違いだった。

 それが顕著に表れたのは12歳の頃にあった剣術大会でのことだ。一言で言えばボッコボコにされたのだ、一回戦で。

 大衆の前で醜態を晒したことにより、俺への見る目も変わってしまった、「"勇者のくせに"弱い」だの「それで"勇者"を名乗り、恥ずかしくないのか?」だの、まったくその通りである。


「いや、座学はよかったんだよ…」


 昔を思い出し、自分を慰める言葉が口をついて出てしまった。そんな俺をノアは怪訝そうな表情で見つめている、そんな目で見ないでくれ…。


「そうだ、ノアはなんでそんなに強いんだ?」


 まだ少女という年齢のノアが強いのは何か秘密があるのだろうか。

 案の定答えてくれるはずもなし、そもそも声聞いたことあったっけ?


 俺とノアの会話(?)は俺が質問して、ノアが肯定否定を首を振って伝える、という形式が取られている。つまり、俺の知らない分野の話をするのはめちゃくちゃ難しいし、「何故」という質問には一切答えない。

 だから、「何故そんなに強いのか」には答えてくれない。


「あー、うーん。なんて聞けばいいんだろ」


 最近は慣れてきたし煩わしさも感じなくなってはきたのだが…


「はぁ、普通に話せたらもっと色々聞けたんだけどなぁ」


 そんな俺の言葉にノアは驚いたような表情を見せた。


「…どうした?」


 ノアはハッとするといつもの無表情に戻ってしまった。

 なんで驚いてたんだ?やっぱりあれか


「俺が、弱いからか」


 少し、感情が昂ぶってきた


「俺みたいな雑魚とは話なんかしないってことだろ」


 ノアはすごい勢いで立ち上がると思いっきり首を横に振った。


「いいよ、今さらそんなに必死に否定しなくて。わかってるから。思えば、強いとことかかっこいいとこなんて見せたことなかったな」


 俺はいつからこんな後ろ暗いやつになったのか


「もうどうでも…わ!?」


 か、肩を、両肩を掴まれた!


「な、なんだよ!ちょっ近」


 突然の出来事に狼狽えていると


「あなたは」


 とても澄んだ声が聞こえてきた


「あなたは、弱くなんかない。それに」


「そ、それに?」


 一呼吸置くと


「かっこいいところもある」


 かっこいいことろ?俺に?…てか


「し…しゃべった?」


 言うだけ言うと、俺に背を向けてしまった。




 それからは何度声をかけてもしゃべってはくれないし、いつにも増して無表情だし、ついには目は逸らされるし散々だった。




 いつか終わるこの旅で、あと何度あの声を聞けるだろうか。

 勝手なことだが、俺はあの声を聞くに相応しい勇者になろうと思った。


 昔のことなど、とうに頭から消え去っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ