第一章『血まみれの三日月』
黒ノ眼楓は本を読むことが好きだ。
理由は、本を読む度、まるで自分が別の世界へと旅立てるような気がしたから。
何てことを、十九歳の今でもそう考えながら、楽しく、読んでいる。
飛行機の飛び立つ騒がしい音が、青空へと響き渡る。この飛行機は、日本の成田から、スカンジナビア半島に向かっていた。楓もその中で、やはり本を読んで時間を過ごしている。
だが、そんな状態も束の間、一人の粗々しい、騒がしい声が機内全体に響き、それまで友人や、家族との会話をしている者もいれば、寝たり、テレビを見たり、ラジオを聴いたり、そんな平和な空間が、
まるで落とせば割れるガラス製品が、わざと落とされて壊れるみたいに、簡単に壊れた。
「ここは俺たちが占拠したっ!お前達には、人質になってもらおうっ!」
これが本当かどうか何て、十数人位の男の集団、彼らの自衛隊の様な黒中心の服や、肩にぶら下げている、綺麗なほどに黒い、機関銃を見ればすぐに分かる。ここは彼らにハイジャックされたってことを。
ああ、最悪だ。出発早々、こんな悲劇に遭うなんてついてない。と楓は、周りの乗客と同じ様に、状況に絶望していたが、
その時、
楓は「へっ?」と、驚きのあまり、声が出てしまった。
何と楓が目の前で見たものは、さっきのテロ?らしき者たちが気絶していた。
それも、数秒もしないうちにだ。
数時間後、楓たちは無事、コペンハーゲンのスカンジナビア航空に着き、近くの喫茶店でコーヒーカップを口付けながらさっきの出来事について、考えていた。
楓たちを人質にしようとしていたテロリスト?たちは、全員、厳重に縛られ➡上陸するまで地下に放置➡上陸後、ロシア警察に身柄を確保され、無事誰にも被害が及ぶことなく、丸い形で収まった。
しかし、楓には、少し気がかりなことがあった。テロリストたちが、ほぼ一瞬のうちに気絶していたことについてだ。そんなに深追いすることでもないが、気になって気になって、しょうがない。
すると楓は,自身の記憶を読み返すことにする。これは、自分が体験した出来事を、読み終わった本を読み返す行為を、自分の記憶に対して、同じ事が出来るのだ。案外、彼女の長所だったりする。
楓は自分の記憶を読み返すと、早速気付いたことがあった。楓の隣にいた、茶髪黒目のちょい美形の顔が幼く見える男の人がとった行動だった。
まあ、こちらの推測であるが、理由は私も含めてほかの乗客も動揺していたのに、彼だけは余裕で、私の席の隣で、何かしていた。まあ、おそらく彼がやったことだろう。
と、その時、偶然か必然か、楓は、機内で隣の席にいた彼を見かけ、すぐさま店員にお金を払って、店を飛び出す。そして彼に追いつき、大声で彼を呼び止める。
「俺に何か用ですか?というか、貴方誰?」
振り向いた顔をみて、楓は確信した。この人だ、と。