第1章 02 旅人の娯楽を
「いえ。少し質問があって。旅人さんたちは、自分たちの娯楽ってありますか?」
「まあ。旅の疲れの癒し程度ならばあるが」
「その娯楽について、少し説明していただきたいのですが…」
「はぁ」
男たちはどういうことかあまりわかっていない。
「ノトは出身のむらで作家をしていて、旅人の娯楽について本を書こうとしていて、旅人がむらに来るだけじゃ足りなくて、それでえっと…」
ティグリスは、頑張って伝えようとしているがうまく言えない。
「まぁそんなところです」
しかし、ノトはそれで説明となったと考え、説明を省略した。
「そうか……じゃあ教えてあげよう」
男たちにも何とか伝わったらしい。しかしノトは。
「すいません——————やらせてもらうとかできますか」
と、さらに深いところまで入り込んだ。
「まあ…いいが」
こうしてノトは、何とか旅人の娯楽にありつけたのであった。
「えっと、これをこう動かせばいいんですね」
「そう。そうだよ」
ノトはすぐさま黒い手帳に記録した。コントローラーの図までしっかりと。
「では、始めようか」
先ほどと違う中肉中背の男が言った。
「まずは、昆虫を捕まえるんですよね」
「そう。時間は一五分さ」
ノトは草原を探し、螳螂を見つけた。そして借りた片手より少し大きい黒い箱に入れた。そして、しばらくして中から螳螂を取り出し————。
「ごめん。」
————————といって草原に戻した。
——————一五分後。二人は道を挟んで向かい合っていた。
黒い箱は、あの商人たちのむらで一番の高技術らしい。詳しい仕組みは企業秘密とか何とかで教えてもらえなかった。とにかく、あの機械は、生物を入れるとなかで一番新しく、その生物に一番損傷がない細胞を抜き取る。そして、ポリメラーゼ連鎖反応などの科学技術でDNAを増殖、人工的に作った小胞体、リボソームで同じ個体を作れる機械だそうだ。ただし欠点があり、天球は地球とは違い、空気中の磁気で生物に若干の変化が起こる。そのため、脳のDNAは増殖できず、生成できないらしい。そこで、脳のあるはずの部分にコントローラーを埋め込み、操作して戦わせよう、そう考えたそうだ。