記憶喪失ってやり尽した感あるよね。
おいおい、冗談じゃねえぞ・・このご時世に記憶喪失とか・・・出だしから使い古された感でいっぱいいっぱいじゃねえか!どうすんだよ!くそ・・・とりあえず今は・・・
僕は2、3メートル先に見える女性に声をかけることにした。
僕はどうやら、記憶喪失のようだ。そう認めざるを得ない。だって、何も覚えていないのだから。自分の名前も、出身も、親も、すべて。なにもかも ー
だから、僕はこの人に声をかけるしかない。この人に賭けるしかない。多分、この女性は僕のなんらかの事情を知っていて、だけどどうしようもない罪悪感から何も言えず、僕と共に記憶探しの旅に出る・・・という感じだろう。それしかない。
「す・・すいません」
僕は恐る恐る声をかけた。
「あ、はい・・?」
「あの・・僕・・記憶喪失みたいなんです。もうなにがなんだかさっぱりで・・・」
「え・・本当に・・?」
「ええ・・信じられないとは思いますが・・・」
「あの、実は私も何も覚えていなくて・・・」
「え?」
えええええ!!!???
まさかの2人とも記憶喪失!?どうしよう、話が進まないぞ!
「私もびっくりしました。何も覚えていないんです。自分の名前も、出身も、親も、燃えるゴミの曜日も、すべて。なにもかも ー」
「ゴミ出しの曜日を覚えているのに、自分の名前を忘れる奴がいるんですか。」
「だけど、あなたを見つけたとき私は思いました。」
「無視ですか」
「多分、この男性は私の何らかの事情を知っていて、だけどどうしよもない罪悪感から何も言えず、私と共に記憶探しの旅にでる・・・と。」
「話が進まねえええ!!もうそれやったよ!!さっきやったよ!てかあんた人の話聞いてた!?僕は記憶喪失なの!!真っ白な赤ん坊なの!!」
「あら、赤ん坊はボケはしてもツッコミはしないわ。」
「ボケもしないだろ!だいたいあんた、状況わかってんのか!?2人仲良く記憶喪失だなんて・・・」
「私はあんたじゃないわ。」
「ん・・ああ、悪かった。ついカッとなっちまって・・・」
「大丈夫よ」
「・・じゃあ、名前を教えてくれないかな。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
誰か我々にせめて名前だけでも教えてくださいいいいい!!!




