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赤紅朱緋~真っ赤な吸血鬼の異世界奇譚~  作者: 書き手
第三楽章 黒と朱の狂詩曲
80/90

吐利






「…………………………………………」


「…………………………………………」


「…………………………………………」


ヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバしヤバし…………

一体全体何がどうなってこうなった。


「おい、あの(ドラゴン)…………知り合いか」


「んなワケないでしょが……………あんな桁違いのバケモンなんざ見たこともないっての」


小声でアザクが訊ねてくるが、生憎とまったくもって心当たりがない。

いや、実際にはある。あるが、その心当たりは前にちっさい炎禍竜ぶっ殺しましたーだもんなあ。

もしそれが理由ってんなら、もういよいよもっておしまいな気がする。


「あー…………まったく熱くもなんともないのは訊いても無駄なんだろうな」


「無駄だろね。少なくとも私に訊かれたって困るしかないわ」


現在私達は、三人揃って獄火山の奥へ奥へと進んでいるようだ。

あの真紅竜がワケのわからん事をいって(つーかわかりたくもない)私達をボール状のバリアー的なもので包むと、勝手にボールが進みだし、熔岩の海へと飛び込んだというワケなのだが。

内部は少年の言う通り、至って快適。

なんの問題も無いまま、私達は熔岩クルーズに興じている。


「いやあんだろ問題。どうなんだよこれから。この先の竜のディナーになるなんざ御免だぞ」


「同意だな。腹の中に収まるなど、本来一生涯で一回たりとも経験したくもない」


「わーたーしーにー言ーうーなー!んなもん相手に言え!私知らないし!かんけー無いし!有ったとしてもキョーミ無いしぃ!」


「クズだな」


「いや、ゴミだ」


「あーあーあー!聞こえないしー!なぁぁぁに言ってんだかわかりましえーん!」


ぜーんぶ不可抗力だ!

私に責任を求められても困る!


「いや、認めろよ…………どう考えてもあの竜、お前に向かって話しかけてただろ」


「知らないっす!まったくもって記憶にございません!大体私今赤くないし!黒だし!」


「…………へえ。今は、ね」


「語るに落ちたな」


「ぶぐっ!」


なんて迂闊なっ!

流石馬鹿だぜ私!


「…………ま、ここまで来りゃもう肚括るしかねえけどもな」


「その通りだな。後はもう天命に任せる他あるまい」


「あー!うんうんそだよそだよそーだよ!あとはもうなるようになるだけっつーかさぁ!」


「「お前が言うな」」


「はぁいすんまっせん!」


と、我等ながら緊張感もクソもない会話をしていると。


ドポォォォン。


と、とうとうバリアーボールが熔岩の海から抜け出す。


「さあて…………鬼が出るか蛇が出るか」


もっとも鬼は既にここに居るし、蛇の超上位互換的な竜まで出ちゃってるんだけど。


「っ…………!アレは…………」


「は、視えなくたって感じるな、馬鹿げた力の結晶が…………」


「きひっ。ここが最深層…………いや、これ(・・)が、霊原点(オドオリジナル)…………!」


目前で荒れ狂う焔。

全てを灰塵に帰しかねないだけの、計り知れない炎禍の奔流。

そして、それら総てが──たった一点を中心として溢れ出し、駆け巡っている。

やがて。


ピシッ。


ピシピシビキ、バキィ!


そこに存在する炎禍の結晶体。それが皹割れ──!




バキャアアアアアアン!







『…………此処に客人なんざ、何千年ぶりだっけかなぁオイ』


そこには。


『つっても、オレサマから呼び出したンだからまあ驚く事じゃあねえか』


「……………………!!」


そこには。


『まあ、適当に歓迎しておいてやらぁ──赤き堕とし仔よぉ』




──赤く揺らめく瞳。




──優雅に羽ばたく翼。




──舞い散る羽毛。




──まーるい嘴。




──でっかい水掻き。






………………………………………………………………




『オレサマこそが、炎禍星龍デュオルニク──「「「鳥じゃん!!」」」






▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

▲△▲△▲△▲△▲△▲△






『いや、だからよぉ──オレサマこそが炎禍星龍デュオル──「いや、鳥じゃん!!ブァァァァドじゃん!!百歩譲って不死鳥(フェニックス)じゃん!!」


今度叫んだのは私だけだった。

流石に冷静を保ったのか、あるいは叫ぶことも出来ないほど呆れ果てたか。


『いや…………いいだろぅよ、鳥でも』


「駄目だよ!駄目っ駄目だよ!千歩譲ったとしても爬虫類、万歩譲って両生類!!」


『変わんねえだロ。鳥類だって親戚に近ぇし…………』


「ああもういいよ!この際!せめて鷹とか孔雀とか!?その辺のサマんなるヤツなら許せたよ!?あんたそのカッコ!!どうみたって巨大家鴨なんだよコンチクショー!!」


可愛いじゃねーかよ!

名が体を現して無さすぎにも程があるわ!


「ハァーっハァーっ、ゼェーっゼェーっ…………」


『イヤそこまで力説すんなよ…………んだコレ。オレサマが悪ぃのか?』


そりゃそうだろ──とは言えない。

なんかもっと他に、主悪の根源が居そうな気がする。

なんか、あろうことかこの私よりも超絶に適当極まりない野郎の仕業な気がする。

それが誰なのかは頭に霞がかって思い出せないのだが。

そしてそれが更に不愉快を加速させる。


「………………あーもーいいや。どうでも。キレんのもアホらし。んで、私になんのよなのよ家鴨ちゃん」


『ぶっちぎりの加速度で扱いがぞんざいになったなオイ…………』


心外な声出してんじゃねぇ。

鏡見ろや鏡。

プリティだから。


『あ゛ぁ…………いや、別だって用があるワケじゃあねんダガヨ』


「ふざけんじゃねえぞ北京ダックとっとと帰らせろコラ」


『モロに遭難してやがったヤツの態度じゃねえなこの…………ァア゛?』


と、そこで北京ダックは改まって私をしげしげと眺める。

なんだ、私に惚れたか。

しかし私は家鴨に興味などないぞ。

アヒル口なんていうブスの悪足掻きは心底嫌悪する正統派美少女だからね、私ゃ。


『惚れるかボケがくたばれ。いや、しっかし…………』


そこでダックは頭上を仰ぎ、顔を翼で覆った──いや、サマんなんねぇけど。家鴨だし。


『あー。まー。なんつうかアレだな。随分と貧乏籤引きやがるなぁ、テメェ(・・・)もよぉ』


「…………はい?」


『いや、マぁオレサマもここ二千年は羽の伸ばせねぇ窮屈な暮らしだったが…………まあお前程じゃあねぇやな。素直に同情しちまうね』


「…………いや、何の話よ」


『ア゛ぁ、いーいー。なーんも言うななんも言うな。ま、そうなればアレだぜ。オレサマもちぃと手伝ってやらんでもない…………おら小娘、手ぇ出せ。利き腕の方な』


「は?いや、出せって……」


『向けろ。ってんだよ、オラオラとっとと』


「はぁ?何さもう…………」


まあ、取り敢えず言われた通りに左手を家鴨目掛けて翳す。


『炎禍星龍デュオルニクスの名において──今、世界の鎖を結びて繋がん』


「──へぁ?」




──── ド ク ン 。




「──ぅぐあっくッ!?あ゛っ!ああっづぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」


左腕を灼熱が這いずり回り、神経を焦がすかのような苦痛が暴れ狂った。


「うぎょあっ!?あああぁァアあっあぁあ!!いだぁついいいいい!!」


『──んあ?あ゛ー、まあ初めてだ。多少のミスは目ェ瞑れや』


「ざっ!ざけんな北京ダックいったいあっついいったいあっつい!!ギーエー!」


左腕を抱えてのたうち回り、叫び倒した後。


「ひー、ひー、ひー、ひー…………なぁにさらすんじゃダックぅ!!」


『マァぶっちゃけ焼け石に水っつーか…………やってもやらなくても大して変わんねーっつーか、リスクとリターンが釣り合い過ぎてるっつーか…………けどまあコレもなんかの縁だろうよ』


「無視すんなー!!」


『アーアー、喚くなや小娘。星霊自身との直契約と一緒にされても困んだっての…………まあ、お前がそのつもりなら勝手にしろや。取り敢えずオレサマも唾は付けさせてもらった。突き詰めりゃあ結局は全部博打でしかネェしな』


「………………?」


だからなに言ってんだよ(オマエラ)

頭越しにやいのやいのと。


『つーワケで用件は終了だ小娘。とっととウチに帰んだな──』


「──とぉ!その口振りは帰して貰える感じだねぇ!?」


『あぁ?そりゃこっからじゃぁ帰りようねぇだろが。適当に送ってヤラァ』


「っしゃあああああリレ●トキタァァァァァ!!」


待ってましたぁ!!

否!わかってましたよ見えてましたともこの展開はぁ!!


「ねー!?私の言った通りだったでしょ」


ゴッ!


…………脛をおもっくそ蹴られた。


「自分で言った事も覚えてないのかお前は…………何の為にここに来たと思っている」


「え?脱出ん為以外ないでしょ?」


「それ以前に!なぜ脱出せねばならん状況になったか、だ!」


「えーっと、芋虫…………」


「もういい、黙ってろ阿呆!…………炎禍星龍よ、訊ねたい事がある」


『あ゛ー…………燈焔魔族か。この小娘と一緒なトコ見ると、最近炎が騒がしいのはテメェらのお陰さんみてえダなぁ』


「さてな…………さっぱり心当たりは無いよ。で、質問には答えてくれるのか?」


「へん、その図太い態度に免じて、面倒な内容じゃなけりゃあ答えてヤラァ。曲がりなりにも、炎禍の眷属ではあるらしぃしな」


「では、問うが──」




とり。





当初は普通に(?)不死鳥型だったんですが、悪ふざけちゃいました。

けども、書いてて面白かったんで良かったと勝手に思います。

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