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赤紅朱緋~真っ赤な吸血鬼の異世界奇譚~  作者: 書き手
第二楽章 赤と紅の交響曲
50/90

器閉






「で、でかいぞ!」


誰かがそう叫び、全ての視線が一点に集中する。

その先には、全長十メートルはゆうに越える大きさの、巨大な翠色の魔導機兵が存在していた。


「なんだ?あの形状……」


奇っ怪としか言えない形の物がそこには有った。

槍のような形状の先端部と、本体部分を守るように回転している盾を思わせる何か。


「…………おいおいおいおい、まさかまさかまさかまさか!」


…………予想通り。

その盾のような形状の──スクリューを高速で回転させ、突撃兵は私達の船目掛けて加速した。


「ちょ──待てええええぇぇぇぇ!!」


猛スピードで疾駆するそれは、他の魔導機兵もお構い無しにスクラップにしながら船へ目掛けて突き進み。

そして。


「と──飛翔んだあ!?」


まるで魚雷の如くに突撃兵は海面から弾き飛び、船を──


「っ──させないっ!」


そんなメリルの声が響くと、船を海上高くへと押し上げていた土砂の塔が一瞬にして崩壊し、船が再び着水する。

突撃兵は一瞬前まで船が有った位置を、すさまじい勢いで通過した。


「あっぶなあ!サンキューメリル!」


「礼を言ってる場合じゃありません!またすぐ来ますよ!」


「ラジャ!」


メリルの言った通り、突撃兵はまた助走を取り、今度こそ船をその巨体を以て射抜こうとしていた。


「くっそ、やっぱ海上ってのはネックだなあ!」


地上でならともかく、空中でしか活動できない今の状況ではあの突撃を力ずくで止める事は出来ない。

受け止めた瞬間に身体ごと持っていかれ、仲良く一緒に船へ体当たりをかますハメになるだろう。


「メリル!船は任せていい!?」


「はい!だけど、いつまでも躱せるとは思わないで下さいよ!あっちがどんな動きをするかは未知数なんですから!」


「他の敵は!?」


「…………もう、ほとんど残っていないようです!ですが砲撃兵はまだ撃ってきているので、迎撃霊術は止められません!」


「おっけい!メリルはそのまま船の防御に専念しといて!あのカミカゼ兵は私が壊す!」


「わかりました!」


…………メリルとの会話を終える頃には、突撃兵が目前に迫っていた。


「さって!それじゃあ、解体作業と行きましょうかねえ!──贄喰らうは炎蛇の蜷局、捻り斬れ焔風!──《双炎蛟咬(サラマンドラ)》!」


魔導機兵を覆うようにして回転する盾型スクリューとは逆回転にし、二つの火炎の螺旋を放つ。

しかし──それはスクリューに絡み付いたと思った瞬間、突撃兵の回転に掻き消された。


「!?──『厭霊翡翠(ネフリティス)』か!んな幻の霊石どこで──」


『厭霊翡翠』とは、霊術に高い耐性を持つ鉱石だ。

伝説級の稀少性を誇り、それで加工された装備は、数百年に渡り優れた戦士に受け継がれていくと言われる。

ちなみに師匠の所有する霊剣、『禊月』はこれを素材として造られた剣である。


「くぅっそ!それじゃ霊術の類は殆ど効果無しか!」


マジで厄介だな──いくら『厭霊翡翠』とはいえ、今の私ならどうにかできなくはないのだが、しかしそれは通常の防具の話。

あの巨体、そしてあの速度が合わされば、大抵の霊術は掻き消されるだろう。


「…………あー、くそ。メリルなら幾らでもやりようあるんだろうなあ」


何せ海の上だ──メリルの得意属性の一つである水鏡術のポテンシャルを120%発揮できる。

『厭霊翡翠』の耐性は高い霊力を宿したものに限られるから、海水を操作すれば耐性を無視して攻撃できる──破壊出来なくとも、遠くへ押し流したり海へ沈めたり方法には事欠かない筈だ。

しかし、メリルに任せるわけにはいかない──主に私の名誉回復の為に!

最近なんだか軽く見られてるふしがあるからね!


「んなワケで!手の内を他に見せたくなかったけれども──ちょーっと本気だしちゃおうかな!」


真っ正面から──ブチ壊す!


「舐め殺せ──紅月。……紅剣・紅桜」


渾身の乱舞。

鞭のように唸る紅色の斬撃が四方八方から襲いかかり、突撃する魔導機兵を斬り裂こうとする。

しかし、それでもその装甲を破るには至らない──突撃の勢いを多少減退させるので精一杯だ。

そして──それで充分。

私は愛剣を鞘へと納め、魔導機兵を海上にて待ち受ける。


「ク──クレアレッドさん!?よ、避けて下さ──」


「あー、クティナちゃん。危ないから離れときなー」


シッシッ、と手を振る──この技はちょっと集中しなくちゃいけないのだ。

目を閉じ、静かに鞘に閉まった愛剣に霊力を込める。

そして──


「──フッ」


短く息を吐き、空を蹴る。

そして。

突撃してくる魔導機兵との刹那の交錯を経て──再び中空に着地(?)した。

私は緋色に煌めく刀身の短いその剣を手に、静かに歩く。

そうしているうちに、魔導機兵は再び船を破壊すべく海面から離れた。


「う、うわああああああ!!」


海面とほぼ平行に翔ぶそれを前に、悲鳴をあげる船員達。

だが──


「緋剣──緋桜」


小さく呟き、チン、と緋月を鞘へと納める。

瞬間。

魔導機兵がバラバラと崩れ落ちてゆき──船に衝突する寸前にて、完全な空中分解を起こし、海へと沈んだ。



●○●○●○●○●○●○●

○●○●○●○●○●○●○



「決まった…………!」


私は密かにグッと拳を握り締める。

完っ璧だ。

文句の付けようも無く、カッコ良く決まった筈だ。

うんうん。

これぞ私。


「メリルの方も終わったみたいかな──んー、ちょっち疲れたかな?」


肉体的疲労は無いが、精神的にはほんの少し疲れてしまったかもしれない──只でさえ集中力を要する『緋剣』で、交錯の一瞬の内にあの魔導機兵の装甲の薄い部分を縫うようにして斬り裂いていったのだ。

あー、神経使ったあ。


「初戦でこれとは、なかなかてこずらしてくれそうじゃんさ。やれやれだ」


頭を掻きつつ、船へと歩き出した。

すると。


「クレアレッドさぁーん!!」


空中を蹴りながら、私へと近付いてくるのが一名。


「あークティナちゃん。おつかれ……」


「クレアレッドさん!なんですか今の技何をどうしてあれを解体しちゃったんですか!ほとんど見えませんでしたよまったくあんなのをバランバランにしちゃうなんてまさしく【黒】冒険者ここに在りって感じですね!凄い!何て言うか、本当にもう凄いですよう!」


「うおーっ……」


グイグイ来るなあ。


「ま、まあまあ、あれくらい軽いよ。しっかし、厄介な事になってるみたいだねえ」


「おお!既に先の事を見越してらっしゃる!きっとその用心深さもまた【黒】冒険者としての当然の心構えなんですね!」


「ああ、うん、まあ、そう言って言えなくもない、かもしれない」


「流石ですー!」


「………………」


やりずらっ。

チヤホヤされんのは万々歳なんだけども、こうガンガン来られると普通に怯む。


「あー、船はまあ無事みたいだし、さっさと乗り込もうか。私達の仕事は諸島の調査なんだからさ」


「あ、はい!そうですねその通りです!しかし一体全体何が起こっているのでしょう?何だか嫌な予感がします」


「きひひ、その予感は多分当たるよ」


苦笑いを浮かべながら、私も先の事を考える。

この分だと、逆に競争相手は減るか──いや、振るいにかけられるか。

つまり、ある程度の実力者でなければ諸島に来るまでに海の藻屑となるワケで。


「よーはこの先は手応え有るのしかいませんよーって事かい。まったくまったく」


──面白くなって来やがった!

と、主人公っぽい事を私は思った。



きへい。




VS特攻ロボ。

ロボット知識は全く持ってないクセに書きました。

変なトコが有っても見逃して。

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