プロローグ
どこかの世界のどこかの国の、
どこかの街のどこかの教会で、
『彼女』は、目醒めた。
「はあーあ」
と、可愛らしいあくびを一つして、
「はあーあ」
と、可愛らしいため息を一つ吐く。
「なーんでこんなことになっちゃったかなあ……」
と軽く頭を振る。
するとその長い髪が──
血のように赤く、
業のように紅く、
焔のように朱く、
咎のように緋く、
そして地獄のように美しい髪が──
ふわりと揺らめく。
それは魂を奪われかねない美しさだった。
しかしその美しさに気付く者はいない。
この場に『彼女』の姿を見ている者は誰一人としていなかったし──仮に居たとしても誰も気づけはしなかっただろう。
何故なら『彼女』と自分たちがいるこの場所すらも、『彼女』の髪と同じ色をなしていたからだ。
しかしその色は──血だ。
純白といって良かった教会の壁が血の色一色で染め上げられていた。
赤 血 赤 血 赤 血 赤 血
血 赤 血 赤 血 赤 血 赤
赤 血 赤 血 赤 血 赤 血
血 赤 血 赤 血 赤 血 赤
赤 血 赤 血 赤 血 赤 血
血 赤 血 赤 血 赤 血 赤
赤 血 赤 血 赤 血 赤 血
そんな色の中では髪の色など大した問題ではない。
そう、髪など何の意味もない。
その髪の持ち主である『彼女』は髪の色や血の色などの余計な全てを消し去って余りある存在感で──その場の全てを支配していた。
「キヒ─」
と、鈴の音のような声が響く。
「キヒ─ヒ!キヒ!キヒヒヒヒヒヒ!キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
無邪気な顔で──しかしありったけの邪気とあらんかぎりの憎悪を込めて、『彼女』は嗤った。
粉微塵になったステンドグラスの向こう側で──赤い月が妖しく煌めいていた。
初投稿です!
ベッタベタ下手な小説ですが、宜しければ御覧になって下さい。
向こう一ヶ月は毎日投稿するつもりですので、宜しくお願い致します!