進まない話は誰が進めた
警部は今犯人を捜していた
煉瓦造りの道に対して
妙に近代的なビルの建ち並ぶ街
その夜の闇に
無粋に
「ピーポーパーポー」
とサイレンを鳴らし走っていた
「警部禁煙です」
頭でっかちの部下が言うが
そのまま 吸い続けた
(こいつには煙草の匂いもわからんのか)
そう思いながら火のついた赤い煙草の先を部下の運転している手に押し付ける
「あっ」
短い新米刑事の声 こいつはいつもだらけている俺を見て見くびっていた
いい脅しだろう
「あっ熱くない」
刑事は運転を再開させながら言う
最近妻に言われて、電子煙草を吸い始めたのだ
「バッン」
と背中を叩く
「ほれ前見ろっ」
焦って前を見ていない不注意な部下に
前に歩いている老婆を指さして言う
(もしもここが鉈市でなくて逆さの馬場だったら)ふとそんなことを思った
はたしてなぜ三千円の代金が二千円だったのか
分からない 愛憎のノートパソコンを出して どこかに
載ってないか調べようとしてやめる 探偵としての意地が
しかし十五分後あっけなく、悩むことに疲れ「まっいっか」
と「カチリ」とボタンをクリックした
0
検索結果ゼロ
内容を入れすぎたか
カチャ カチャ カチャ
再検索
一万三千件ヒット
ありすぎる
(そういえばあいつなんて言う機械か言ってなかったぞ)
(もしかするとレジみたいな機械では無くて通販みたいなものかもしれん)
(う~~~~~ん) 分からん
僕は坐ったまま寝た
いつの間にかこうして寝る様になった
ただ今現在役に立ったことも無ければ
ほめられたこともない
僕は体育座りのまま暗い闇の中で睡眠に落ちて言った
さて仕事にかかりますか
少女は暗い闇の中
「カン カン」とわずかな音をさせて煉瓦道を駆け抜ける
その時遠くで「ウーウ―ウ―」とサイレンがいきなり鳴る
待ち伏せされたか
しかし偶然だ
老婆に知らせるために
ネタロウがサイレンをどんくさい部下の代わりに鳴らしただけ
それを勘違いして不審な動きを取るが誰一人見ていない
よしよし そう言って頷くと闇に紛れる
ブラック・フォックスとは実にダサい怪盗である
いや怪盗と言うにはあまりにも地味で
予告上は出さない
盗むものは夢もロマンスもない
ただただ盗みやすく高いものを盗む
そんな怪盗定義委員会でもあれば
即刻取り潰されそうな肩書だが
しかし唯一ブラックフォックスにも
派手やかなところがある
盗んだものを慈善団体
または市民にばら撒くのだ
彼女は家に引き返す
わざわざ危険があるのに盗む必要などあるまい
だいたいそのために予告上を出さないのだ
なんて思いながら家に着く
もし父に言ったら引っぱたかれるだろう
夢とは正義を貫く変わり身
時として無謀な方が保守者より成功する時があると
しかし今の家は広い家に一人暮らし
無造作に置かれた数百万円はするもの物がゴロゴロと置きっぱなしになっていた
「フー」と彼女はシャワーを浴びながらふと思う
(何やってんだろ)しかし彼女は思う
(別に私だって捕まる父さんの真似だけは)そう思いながら無造作に眠りに落ちた
彼女の白いほっそりとした体を月光が窓からゆらしていた
「さて分ったかな~~~~」
いきなり飛び込んできた彼女が乱暴に部屋に入るなり
毛布にの中で坐りながら寝ている
奇化怪な少年に言う 怒鳴る 叫ぶ
最後に殴られる前に
ギリギリで毛布が避ける
まるで黒いマントがひとりでに動いたみたいだが
中には男がいる
体育座だった男がいた