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悪の組織の求人広告  作者: Q7/喜友名トト
最終決戦編~メタルジャスティス~
96/106

どこまでも不愉快な男だ

 

対峙する五人に緊張が走るのが見て取れる。雷鳴が響き渡り強風吹き荒れる中ではあったが、彼らの気迫はいささかも曇ることはない。


 さすがは歴戦の戦士だけのことはある。池野は少しだけ感心した。


「いくよ……みんな。僕たちの守りたい世界のために。この戦いを終わらせるために!」


 リーダーであるくれない光太郎こうたろうが声を張り、四人が頷く。


「エクスチェンジ!」


全員が腕に装着しているギミックに手を伸ばし、大きなアクションとともにギミックを操作する。あの動作が彼らのサイキックパワーを増幅し、それにより実体化したスーツを着用するためのスイッチだということは有名な話だ。


 赤、青、緑、黄、桃。五色の輝きが彼らを包み、それらがあわさり光が爆発する。次の瞬間には人類を超越したサイキックソルジャーが出現した。


 彼らの周囲の雨粒が一瞬にして蒸発するのが見て取れる。集中したサイキックパワーの爆発によるものだろう。変身時においてすら、彼らにはまったく隙がない。


 超能戦隊マルーン5、その勇名に偽りはない。

 ならば、この俺が全力を出すに値する敵だ。


「ハァァァッ!!」


 池野はアーマーのウイングを展開した。そしてスラスターを吹かし、限りになく地面ギリギリまで倒した自らの体を加速させる。


当然ながら、低い体勢から突撃することには合理的な意味がある。相手の攻撃起点を自分より上方に置けば、必然的に攻撃射線は斜め上からのものになる。結果として進行方向を遮られることはなくなる。さらに言えば、相手からみたこちらの速度予測を上回るスピードで前進するだけで、攻撃をかわすことができる。

そしてこちらはスラスターで加速している以上、接地面が近いほど速度は出せる。加えて人間は頭上、または足元といった顔面から遠い部位への攻撃に対しては防御力が落ちる。

その上、マルーン5はサイキックソルジャーであり、テレキネシスやバリアなどどちらかといえば遠距離戦を得意としている。能力でカバーしているとはいえ、反射速度や運動能力は常人とさほど変わるものではない。


故に、この局面においては低空での高速突撃からの接近戦こそが最良の選択になる。


池野の戦闘に、愚直という言葉はない。闇雲と言う言葉もない。

池野は知っている。勝利とは、勝利すべく行動した者に与えられるものなのだ。


勝利するのは天才なんかじゃない。


マルーン5の放つテレキネシスが次々と池野の頭上をかすめ、背後の床を打ち抜いていく。突進のスピードを考慮し次弾が放たれればさらに加速してそれをかわす。


「っの野郎!! 俺が相手だ!!」


 即座に反応したのはマルーンブルー、小暮蒼一だった。池野はピンクを真っ先に狙うべく突進していたが、ブルーが自ら前に出る。


 これは正解だ。ピンクはもっとも弱い。だが回復能力がある。池野にとっては真っ先に倒すべき、そしてマルーン5にとっては倒されてはいけない存在だ。


 だが『それはそれでかまわない』


「ハッ!」


 池野は速度を緩めることはせず、そのままブルーに向けてガンブレードを切り上げた。

 常人なら振り回すことすら難しい重量を持つ超科学の刃は一撃で岩石を切断するほどの切れ味を誇る。直撃すればいかにマルーン5といえども無傷ではいられないはずだ。


 だが。


「あたらねぇな……っ!」


 体勢を考慮すれば絶対にかわされるはずのない一撃だった刃が空を斬った。ブルーの姿は消えている。ただ、眼前に青い光の残滓のみが見えた。

 

ならば。

 池野は振り上げた刃をそのまま肩に担ぎ、即座にブレードをショットガンモードに切り替える。そしてタイムラグなく後方に向けて発砲。振り返ることはしない。


 かわされるはずのない攻撃が『マルーンブルー』にかわされた。ならばこれは短距離瞬間移動テレポートによるものだと断定できる。そして消えたならば出てくる。ではどこから出てくる?


 冷静に考えれば、こちらの視界の外に出てくることは自明の理だ。故に、池野は確認することもなく自らの肩越しに背後に向けて銃弾を放った。


 背後からは弾丸の炸裂音とブルーの驚愕する声が聞こえた。それで十分だ。

 前を向いたままでいたのは、他の攻撃に対応するためでもある。


「うりゃあああっ!!」

「やあぁっ!!」


 案の定だ。右前方からはイエローによるサイキックパワーをまとう拳での打撃が、左前方からはレッドのテレキネシスで浮遊した瓦礫による攻撃が襲いくる。


「はっ!」


 鼻で笑うような気合とともに、池野はレッドの攻撃を完全に無視してイエローとの間合いを詰めた。


最悪なのは、その場で二つの攻撃に対応しようとすることだ。そんなことをすれば必ず両方とも受けてしまう。だから即座に最良の手を取る。


イエローのほうが瓦礫よりも近い。そして格闘技術ならば池野が遅れを取ることはない。

池野はイエローの拳の外側から、腕を重ねるようにして拳を放った。肘部のバーニアを吹かして拳を加速させ、頭部を滑らせるように下げることも忘れない。


ガツッ、というような鈍い音が響き渡る。

結果として、池野はヘッドスリップでイエローのパンチをかわし、クロスカウンターによる一撃を当てていた。


「……あ、…が……」


池野は止まらない。一瞬のダメージによって動きを止めたイエローの脇をそのまま抜けて、ふらつくイエローを盾にすることでレッドの放った瓦礫を無効化する。


 初手の低空突撃からここまで、わずか5秒。


「……どうしたマルーン5。その程度か?」


 一瞬の激闘を終え、ウイングとバーニアの小休止のため動きを止めた池野は正義の五人を見下す発言をしてみせた。


「蒼ちゃん! 薫! しっかり……!」

 今の攻防で負傷したブルーとイエローを他の者が助け起こす。池野への追撃よりもそちらを優先したらしい。


「ああ、大丈夫だ。だが、コイツ……前とは違う。遥かに強くなってやがる」

「せやな。こら、ちょっとヤバイで」


 流石はロックスと言うべきか、プラズマショットガンやアーマードナックルによる攻撃を受けたにもかかわらず、ブルーもイエローもよろめきながらも立ち上がった。おそらくサイキックバリアなどでダメージを軽減しているのだろう。


 対する池野は、いかにアーマーを装備していようとも彼らの攻撃を連続して受ければ数発で絶命するに違いない。だが、池野はそれを不利とは思わない。


「当然だろう? この俺が、いつまでも同じところにいるとでも思ったか」


 そう、断言する。それは、池野礼二を池野礼二足らしめるもっとも重要な要素だ。


俺は、周囲が思うような天才なんかじゃない。ただ、誰よりも負けず嫌いで、格好つけなだけの、ただの努力家だ。勝つために、強く在るために前に進み続けるだけだ。


「……たしかにアナタは強い。なのに、なんで……っ!」


 レッドが叫ぶように言った。


「なんで、アナタはその力を正しいことのために使おうとしないんだ!?」


 レッドは、紅光太郎の叫びは歎きのようだった。

 なるほど、彼のような人間には本当に理解できないのかもしれない。そして心から悲しいのかもしれない。


 だが、池野からすれば彼らのほうがよほど理解に苦しむ。


「何故? 俺は正義も悪も興味はない」


 これが、池野の本心だった。

 紅は、マルーン5は強い。間違いなく人類最高レベルの存在だといえるだろう。その力を『守るために』使う。自己犠牲的なその生き方はまるで共感できない。


 別に嫌悪しているわけではない。無理やり命じられているのならいざ知らず、彼らは彼らで好きでやっていることだ。そのような生き方、有り方に自分自身が誇りを持っているのならば、それは凡俗のクズどもに比べれば遥かに評価に値することだ。


 一方、小森寧人の生き方にも共感は出来ない。『壊すために』その力を使うあの男の、世界を変えたいという信念は理解している。ヤツが自分のすべてを賭けてそれを行おうとする生き方は、嫌いではあるが、それもそれで一つの有り方だ。


 だが、俺は世界の有り方などどうでもいい。

 正義と悪、それはどちらも世界へ働きかける意志であり、その方向が逆なだけだ、と池野は思っている。


「……興味が、ない……だって?」

「ああ。俺は、泳ぐのが上手いんでな」


 海流がどうであろうとも、お前らのように保とうとも思わないし、あの男のように変えようとも思わない。


 どんな激流のなかでも、俺は俺であり続けられる。それを証明してみせる。


「……なっ……!?」


 レッドの動揺が見て取れた。スレイヤーの幹部だったこともあり、この決戦でメタリカに力を貸す者の発言として、その真意が理解できていないのだろう。


「……さくらちゃん、みんなにヒーリングを。それが終わったら、パワーチャージに入って。その間は僕がアイツの相手をする」


 レッドがみせたわずかな同様は数秒でなくなっていた。かわりにこちらを睨み付けるのは、強い意志によって己の道を貫こうとする戦士のそれである。


 即座に、テレキネシスによって高速で飛ぶ瓦礫やエネルギー波が池野を襲う。


「はっ! 俺が許せないか? なら倒してみろ」

 池野は次々と瓦礫を切り払い、エネルギー波を避ける。


 レッドは強い。おそらく、ロックスでは『二番目』に強い。そしてそれを四人がサポートしている。だから池野としてもこの戦いはけして楽に勝てるものではない。


 だが、勝つ。そうでなければ意味がない。


 あのとき、小森寧人との決闘に勝利したあのとき、池野はあえてメタリカの頂点に立つ選択をしなかった。そして小森寧人を生かした。


 気がついたのだ。メタリカの頂点は『最強』などではないということに。

 そして、池野自身がメタリカを率いてやりたいことなどなにもない、ということに。


 池野がメタリカに入社したのは、強くありたかったからだ。

強い、ということはとても重要なことだ。世界がどうであろうとも、どんな出来事が起ころうとも、高みに有り続けるために、自分以外の他の誰かによって、自らの生き方を左右されないために。


ロックスや悪の組織が割拠していた当時、それに対して無力である自分が許せなかった。

そんな世界であるにも係わらず、漫然と生きている他人が理解できなかった。


池野は優秀である自覚があったし、それまでの人生で一度も負けたことはない。

だが、あのときまで普通の男であった自分は世界の大きな流れに対して抵抗できただろうか? 巨大な力を持つロックスや悪の組織を前にして、それでもなお望む自分で有り続けただろうか?


否。そんなはずがない。


極端なことを言えば、池野は別にガーディアンになっても良かった。そしてその道で登りつめても良かった。自分の生き方を、誇りを、他の誰にも砕かせない男であるために。


メタリカを選んだのは、より早く登っていくことが出来ると判断しただけのことだ。

そして、それは実現した。小森すらも倒し、メタリカを制した。


だが、池野は小森とは違う。メタリカを率いて世界を変えようなどとは少しも思わない。無駄な労力を払ってまで悪のために戦うつもりはなかった。もうメタリカに興味はなかったのだ。


あの決闘の後、正義と悪による最後の戦いが起こることは容易に想像がついた。

どちらが勝とうが、どうでもよかった。その戦いのあとのほうがよほど大事だと思えた。


それが、メタリカの首領にならなかった理由だ。


そして、にもかかわらずこの決戦に出向き戦っているのは、小森寧人を殺さなかったのにはもう一つ理由がある。


だから、この戦いには、勝つ。


「どうした? もうエネルギー切れか?」


 池野は鼻で笑い、レッドへ向けたガンブレードから強化弾を発砲する。


「たぁっ!!」

 レッドはそれをすべて空中で停止させ、地面に叩き落す。

稲妻と夜の闇を背景としたこのような攻防が延々と繰り返されていた。


「……それはアナタのほうだ。体力も弾丸も、限りがあるはずだ」


 たしかに、レッドの言うことはあたっている。なにせ相手は超人が五人だ。また、レッドの戦い方を見れば、彼が時間を稼いでいることがわかる。なにか考えがあるのだろう。


「だろうな。さて、ここまで付き合ってやったんだ。何をやるつもりかは知らないが、もう十分に時間は稼がせてやっただろう。さっさとやればいい」


 池野はあえてそう言った。

マルーン5の自信を持つ必殺の一撃、それは五人の力を結集して撃つ技だ。ならば、それを回避することが出来れば、そこには隙だらけの五人がいるだけだ。そこを討つ。


ダラダラと消耗戦をやるつもりはない。最大の攻撃をなお上回ってみせる。


「やっぱり、気がついていたのか。でも、僕らを見くびりすぎだ……!」


レッドもまた、池野の狙いには気がついていたようだ。そしてその上でなお、攻撃手段を変えるつもりはない。それほどまでに自分たちの技に自信があるのだろう。


「光ちゃん! もういけるわ!!」


 ピンクの声、それもまた勝利の確信に満ちていた。レッドはそれに答え、他の四名のもとに飛ぶ。

 視線をやれば、全員の体がそれぞれのカラーで発光している。どうやらかなりのエネルギーをためていたらしい。


「……アナタは強い。でも、一人だ。仲間と一緒に戦う力を、見せてやる」


 先頭に立つレッドが迷いのない言葉を発した。同時に、他の四名はそれぞれの輝きをさらに強める。


「守るためなら戦える。絆があるから強くなれる。それを知らないアナタに、僕らは負けるわけにはいかない……!……だぁぁぁぁぁっ!!!」


 雄たけびとともに、レッドの体を包むオーラがスパークし、そしてスーツの形状が変化した。


より強い輝きと、さらに巨大なオーラ、周囲に迸る火花から、今までのサイキックパワーとは別次元のレベルに進化したのだということが理解できる。


「いくぜっ!!」

 ブルーの号令に従い、四名のオーラがレッドへと流れていく。

 五色の光の帯がレッドの周囲を駆け巡る。暴風が吹き荒れ、夜がかき消されていく。


「……ほう」


池野はグラスモニタに表示されるエネルギー値を見て感心の声をあげた。


マルーン5の必殺技といえば五人の力を一つに結集して放つ攻撃的テレキネシスウェーブ『ジャスティス・ハンマー』だが、これは違う。五つの光それぞれが従来のジャスティス・ハンマーなみのエネルギー量である。一撃必殺の威力の技が五発。



これは推測だが、レッドが進化したことによりこれまでより多くのエネルギーを扱えるようになったことと、他四人が成長したことによるものなのだろう。


「ジャスティスハンマー・5ストライク!!」


 五人の咆哮とともに、レッドの右拳から次々と放たれる五筋の光。

 テレキネシスで軌道をコントロールされたそれは、まるで虹のようでもあった。


「はっ!!!」


 池野はアーマー・スラスターの残りのエネルギーのすべてを懸けて、加速した。

 大きく逃走するためではない。進行方向は正義の五人だ。


ほぼ同時に襲いくる五筋の光、だがそれは『完全に同時』ではない。ならば、避けてみせる。そして空を駆け抜け、倒してみせる。


稲妻のように、雷光のように。


 緑の光が最初にやってくる。

 大きく動いては次弾に対応できず突進力も落ちる。だから池野は最小の動きでわずかに体を動かし、これを避ける。前進は、止めない。

かすっただけで肩のアーマーが吹き飛んだ。

 

――絆の力、守るための力。それを侮辱するつもりはない。戦い続けたお前らは、敬意に値する――


 次に、山吹色、桃色の光が足元目掛けて輝きを増した。

 体を斜めにし、膝を上げてこれを避ける。風圧だけで脚部のスラスターは機能を停止した。ウイングの推進力のみで、進む。


――だが、鍛え上げてきたこの力は、俺自身の誇りのために貫いた生き方は、誰にも否定させはしない。この強さは、お前らの言う『強さ』に劣るものなんかじゃない。カッコつけ? ああそうだ。だがやるのなら徹底的だ。それの何が悪い?――


 間髪いれずに蒼の閃光が左胸を襲う。

 あくまでも突進は止めない、体をスピンさせて回避行動を取る。完全にはかわしきれず上半身のエネルギー転換装甲はそのエネルギー残量をすべて使い果たし、防御力を失った。もう一撃たりとも受けるわけにはいかない。だが、進む。


――俺が俺であるために、池野礼二は勝ち続ける――


 眼前にくれないの閃光が迫った。


「ハァァァァァァッ!!!!!」


これまでより一際大きなそれに、気合とともにガンブレードを振り下ろし叩きつける。もちろん、それで防げるわけはない。ただ、叩き付けた勢いを利用し宙を舞い、閃光の上空を回転することでやりすごす。


ガンブレードは粉々に砕け散った。


「なっ……!? そんな……っ!!」


 五つの閃光を潜り抜け、池野はマルーン5の眼前に着地した。


もう装備は小型銃を除いて何一つない。だが、相手は大技を放った直後だ。一瞬の隙がある。ならば、十分だ。


「言っただろ? 俺は、負けない……!!」


 勝利を確信していたマルーン5、それを覆して反撃すると決意しやり遂げた池野。一瞬で勝敗が決する接近戦においてこの意識の差がもたらすものは、絶対的だった。池野は即座に小型銃を抜き、防御体勢を取る間も与えず、そして。


 正義の五人を、倒したのだった。


※※


 足元に転がる五人。息があるかどうかはたしかめるまでもないが、間違いなく戦闘不能であろう。


「……やれやれ。この有様か」


 池野は自身が纏っていたアーマー・スラスターだったものをパージしてそう呟いた。さすがは名高いマルーン5、楽勝とはいかなかったようだ。彼ら相手ですらこれだ。戦うつもりはないが、仮にディランが相手だったとしたら、どうなっていたかわからない。いや、今の自分では、勝てないかもしれない。


 戦闘を行っていたフロアはもはや完全に天井が破壊されており、斜め上方には要塞の最上階が見える。そこには、あの男がいるのだろう。


 下層階からの戦闘音はもうなにも聞こえない。見下ろしてみれば、要塞外の野戦も一通りの決着はついたようだ。


 まともな戦力として残るのは、たった二人の男だけということになる。メタリカが全戦力をかけて小森寧人への道を阻んだのと同じように、シンプルプランはそれを討つためにたった一人の男を全員で支えたのだろう。


 正義と悪の決戦は、紙一重の勝負になる。


「……はっ」


 池野は嗤った。自分が、おかしかった。

 紅光太郎に言ったように、本来であれば池野は正義にも悪にも興味はない。この戦いにどちらが勝とうがどうでもいい。なのに、こんなことをするとは笑ってしまう。


 だが、知りたくなったのだ。悪を率いるあの男が本当に世界を変えることができるのかということを。悪の王とやらは正義の化身である白銀の騎士を倒すことができるのか、ということを。


 別に応援するつもりはない。だが、戦況を追っていくうちに見てみたくなったのだ。互角の条件で戦ったのなら、あの男は勝てるのか、ということを。


 そう思ったから、池野はマルーン5と戦った。あのままやつらを行かせれば勝負は見えていたからだ。


 負けるのならそれはそれまでだ。仮に勝ったとしても俺には関係がない。俺はそのあとに『やること』がある。


それに、どのみちあの男には『先』はない。だからこそあのとき殺さなかった。最後まで、ヤツの為すことをみてみようと思った。


思えば、あの男は俺に敵わないことを知ったうえであえて、目的のために決闘に臨み、そして予定通り敗北したのかもしれない。あのとき敗北したヤツがあの場で俺に言ったことを考えれば、そう判断するのが妥当だろう。



俺はヤツに勝った。だがヤツは最初から俺に勝つことなど重要視していなかった。それよりも目指すものを優先させていたからだ。


では、俺に負けたはずの男は、目指すことのためなら、信念のためなら俺が勝てないかもしれない相手を倒すことが出来るのか?


「……ちっ、どこまでも不愉快な男だ」


 池野はそう毒づき、要塞最上階から目をそらした。


見せてみろ。お前の貫いてきたことの結果を。

 この池野礼二が生涯でただ一人、好敵手ライバル『だった』と認めた男として。


ここちょっと書くのが難しく、いまいち感情が伝わらないかと心配です。少し直すかもしれません。


今回明らかにならなかった池野とネイトのやり取りは多分最終話でなんとなく。


あと4話です。

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