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悪の組織の求人広告  作者: Q7/喜友名トト
外伝短編~golden DAYS~
105/106

2.1話 やべぇ昨日は飲みすぎた

ヤンチャンWEBにてコミカライズの連載始まりました。

なので記念&宣伝短編です。


https://youngchampion.jp/series/d89ae4454b179


無料で読めます。コミカライズの連載ページで「いいね!」推してもらえると励みになりまする。

 やべぇ、昨日は飲みすぎた。最後の芋ロックはやめておけばよかった。


 間中年男は朝起きるなり、もう何度目かわからない同じ反省をした。だるい、かなり体がだるい。昔はあの程度大丈夫だったものだが、さすがにもう若くはないということだろうか。


「あー……、もう五時かよ……」


 あまり寝た気はしないのだが、もう出なくてはいけない時間だ。始業時間まではまだかなりあるが、間中は始業時間よりだいぶ早く出勤することにしている。


 のそのそと体を起こし、メタリカ庶務課指定ジャージに着替える。昨日飲みすぎても、もう若くなくても、たいした給料をもらってなくても、それでもやることは変わらない。変えるわけにはいかない。


 まだ誰も出勤していない職場につくと、トレーニングルームに直行。筋力トレーニングやサンドバッグ相手の打撃、地下に降りての射撃訓練を行う。


「ふぃー……頭いてぇ……」


 二日酔いなのでかなり気持ちが悪い。だがそれでも慣れたものだ。辛くても休んだことはないし、こうやって自分なりの強さを作ってきた。だからこそ、メタリカ庶務課というひどい職場でも戦ってこれたのだ。


 そもそも、飲んだ翌日に寝床でダラダラしたり、やると決めていることはやらないやつに酒を飲む資格はない。


 ……いや、パフォーマンスは多少なりとも落ちるわけなので、最初から飲まないほうが一番いいのはわかっているのだが、それはできないでいた。



 その辺が、俺のダメなところなんだよな。


 メタリカ戦闘員としての仕事は全うしている。その辺のガーディアンや他組織のザコに後れをとることはない。しかし組織で出世していく、という若いときに掲げた目標ははるか遠いままだ。色々なことがわかるようになった今では、もう無理なのかもしれないと気づいている。


 それは自分に足りないもの、かけているものがあったからなんだろうな、とわかってはいた。


 努力、決意、才能、あらゆることが不足していたのだろうと思う。でも、いまさら他の生き方なんてできない。みっともなくても、しんどくても、俺はずっとこのまま必死でやるしかない。夢や信念を亡くしてしまわないように、だ。


 そんなことを思いつつ早朝のトレーニングを終了した。ちょうど時間も始業ギリギリの時刻となっている。始業時間に行う朝礼に出てみると、主任に連れられて知らない男が入ってきた。男、と呼ぶにはまだ幼さが残っていて、どうも弱々しい。ガキみたいにも見える。


「今日から入る小森だ。本社採用なのに一般職という珍しい経歴だよ」


 主任はいつものようにどこか弛緩した声でそう告げ、その新顔の男について説明した。


 なるほど、あいつは新入社員なのか。・


「小森寧人です。よ……よろしくお願いします!」


 新入りは声を張った。多分、初日だから頑張ってそうしたのだろう。本当はもっと内気なヤツなんだろう。それがありありと分かる。とても悪の組織にいるたまには見えない。


 本社採用なのに一般職で庶務課配属? そりゃご愁傷様だ。


 間中はそんな風に思いつつ、その新入りの初日の様子をなんとなく目で追っていた。


 バカみたいにスタンロッドを素振りしている。誰にもなにも教えてもらっていないのに、大真面目な顔して汗だくだ。当然フォームも滅茶苦茶で全然だめだ。


 変なヤツだぜ。


 少しおかしく思えた。だが、同時に間中は違う感情も覚えた。


 あの新入りを見ていると、なんだか懐かしい気がしてくる。


 いや、若いときの自分に似ている、というわけではない。俺はあんなにオドオドしちゃいなかったし、礼儀なんてクソみてぇなもんだった。でも、何もわからないくせに必死で、それでぜーぜー言いながら意味のないことをやっている、というところだけは少しだけ覚えがある。


 仕方ねぇな。しばらくあの新入りがいるようだったら、ちょっとかまってやるか。


 間中は、そんな風に思った。


 二日酔いは、だいぶ良くなっていた。


「悪の組織の求人広告、コミカライズ」で検索してねー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 漫画化おめでとうございます。 すぐ読んできます。
[一言] うわぁ、なんか更新されてるとか思ったら凄い発表が…! 買わなきゃ
[一言] まさか更新があるとは… コミカライズおめでとうございます!
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