表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

★修二side

すみれの姿を目で追った。

・・・何でまだ二回しか会った事がない春也と、さっき会って、急に付き合うことになったのか。俺にはさっぱり訳が分からなかった。


「・・・仕事の話をしよう」

俺の言葉に。


「なぜ、何も聞かない?」

春也が質問した。


「男女の仲を、とやかくいう事もないだろう?」

「結婚すると決めた女じゃなかったのか?」

「お前には関係のない事だ」


苛立ちを押さえながら、冷静に言葉を発した。


「そうですか・・・では、本題に入りましょうか?」


・・・仕事は終わり、春也は帰っていった。

自分のデスクに座り、溜息をついた。

「・・・すみれ」


小さな声で呟いた。


「…社長」

「ぁ…すまない。入って来てたのか」

いつの間にか香華が中に入ってきていた。


オレの傍に来た香華は、オレの顔をそっと抱きしめた。

「・・・仕事中だぞ?」

「あんな子やめて、私にしてください」

「要件だけ述べて、出ていきなさい」

「・・・そんなにあの子がいい?」


切ない目でオレを見つめた。

「オレにはアイツしかいない」


「…私は遊びだった?」

「最初から、恋愛感情はないと言ってたはずだ。香華も承知の上じゃなかったのか」

「分かっていても、気持ちは止められない」

香華はそれだけ言うと、書類を置いて出ていった。


同じ秘書課に配属した事。その事で、香華から離れた事、罪悪感がないわけではなかった。


・・・仕事中だったな。

すみれが来てから、オレの心は乱れっぱなしだ。それほどまでにすみれの事を・・・


…トントン。

「どうぞ」


入ってきたのは、藤田だった。

「社長、この件ですが」


何とか切り替えて、仕事を始めた。


仕事が終わったのは、午後10時を少し回ったころだった。


ドアを開けると、すみれがうつ伏せになって、デスクで眠っていた。

「こんな時間まで、仕事を?」


…デスクの上には、山ずみの書類が・・・

「カワイイ顔で寝ちゃって・・・」


顔をツンツン突いても、起きる気配がない。

こんな時間だ。もう、みんな帰って、夜警のおじさんしかいないな。

オレは、軽々とすみれを抱き上げると駐車場に向かった。


…途中、案の定、夜警のおじさんに出くわしたが、シーッと、指を口に当てて静止した。


マンションのすみれの部屋。ベッドに寝かせると、


「修二さん・・・ごめんなさ、い」

…寝言?謝るような事でもしたのか?クスッと笑ったオレは、すみれの唇にそっとキスをした。


「おやすみ・・・いい夢を」

帰ろうと立ち上がろうとしたその時。手を掴まれた。

…なんだか離してはいけない気がして、そのまま握り返した。


「オレはずっと、お前だけを愛してきた・・・」

寝顔にそう呟いた。

…オレはそのまま、眠ってしまった。連日の激務で、疲れていた。


…これは、すみれと出会った場所?

この頃、まだ中学生だったすみれ。オレは、会社に入ったばかりで、失敗して、会社近くの公園でうな垂れていた。

そんな時、笑顔で喋りかけてきたのが、ずみれだった。


「元気がないね?そんなんじゃ仕事もうまくいかないよ?」

「その仕事で失敗したんだ」


「ふ~ん・・・大人って大変だね。ほら、これあげるから、元気だしなよ」

笑顔で差し出してきたのは、チョコレート。

…子供かよ、オレは。


「それね、おまじないしてあるんだ。今度は仕事成功するよ」

・・・なぜか、この子の笑顔に惹きつけられた。


「・・・名前は?」

「すみれ、岩下すみれ」

「オレが社長になったら、雇ってやるよ」

「ホント?!じゃあ、私の就職は安泰だね」


すみれは嬉しそうに笑った。これが、最初の出会いだった。


すみれの顔が忘れられなかった。

…それから数年後。再会した。


それは、オレが通っていた大学。恩師に頼まれて、久しぶりに大学に言った。

…オレは自分の目を疑った。笑顔はそのままだったが、あまりにも綺麗になっていたすみれ。

オレはしばらく、すみれを見つめていた。

「綺麗な子だろう?」

「…教授」

「気さくで、頭が良くて、男女ともに人気者だ。・・・知り合いかね?」

「・・・いえ」


オレは運命だと思った。

オレはすみれと結婚すると、心の中で誓った。


「・・・修二さん」

・・・すみれ?


オレはそっと目を開けた。


時計が朝の5時を指していた。

「起きたんだな」

「あの・・・もしかして、ここまで運んでくれたんですか?」

「起こしても、起きないからね?しかも、手を離してくれないから」


そう言って微笑めば、

「ごめんなさい」

少し顔を赤くして、すみれは謝った。


・・・その顔が、そそるんだよ。

すみれは分かっていない。

オレはたまらなくなって、すみれを抱き寄せた。

「春也と別れろ」


オレの言葉に俯いたすみれ。

「ごめんなさい・・・それはできないんです」

「弱みでも握られた?」


オレの言葉に、一瞬体をこわばらせた。

…ビンゴ?

「一体何を?」

「・・・何も、握られてなんか」


明らかに動揺している。オレに知られるとまずいのか?

あえて、深くは聞かなかった。


「この唇は、春也に渡すなよ」

そう言って強引に唇を奪った。


「…何で、泣いて?」

「・・・知りません。帰ってください。仕事ですよ」


涙を拭ったすみれはそう言ってそっぽを向いてしまった。

…仕方なく、オレは部屋を出ていった。


…春也に何を握られているのか?

…あの、涙の意味は?

謎だらけで、納得できなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ