★すみれside
それからの私は、仕事人間にでもなったかのように、がむしゃらに働いた。
春也さんは、働き過ぎだ!と、怒っているけど・・・
でも、こうでもしてないと、あの人の顔を思い出す。
・・・修二さん、貴方は今、何をしていますか?
貴方が笑顔でいてくれることが、私の幸せです。
この会社では、誰一人、私を苛める人なんて、いないんですよ?
いい人たちばかりで、快適に過ごしています。
藤田さんや、洋子さんが時々恋しくなるけど…
…しかも、困ったことに、時々、春也さんが、修二さんに見えて、止まってしまいます。
顔も性格も、全然違うのに・・・
春也さんが聞いたら、きっと、凄く怒るんだろうな・・・
「すみれ!」
「あ、アリス、どうしたの?」
私を呼んだのは、とても仲良くしているアリスと言うアメリカ人。
「何で、春也はなかなか誘いに乗ってくれないの?」
アリスの言葉にクスッと笑った。
アリスは、春也の事が大好きで、ずっとアピールしてるけど、全然振り向いてくれない!って、いつも私に愚痴っている。
「すみれみたいに、可愛くなったら、私の事、好きになってくれるかな?」
そう言ってまじまじと私を見つめた。
・・・そうなのだ。
春也は、結婚するならすみれとする!と、いつもアリスに言ってるらしく、アリスは私のまねばかりする。
春也さんが私を好きだと言っても、アリスは何とも思っていない。私が本当に好きな人は、別にいる事を知ってるから・・・
「すみれも、日本の愛する人と、結婚すればいいのに」
真剣に言ってくるアリス。
私は苦笑いしかできなかった。
「オレもそう思うよ」
春也さんが話に割り込んできた。
「でしょ?すみれが幸せになってくれれば、春也も私と結婚する気になってくれるって」
「だから、何でオレがアリスと結婚するんだよ?」
「いつも言ってるじゃない!結婚してって」
2人の会話が、私から見たら、仲良しカップルのじゃれ合いに見えて・・・
「本当に仲良しだね?」
そう言うと、
「「どこが?!」」
2人の声がハモッタ。
「観念して、結婚すれば?」
私の言葉に。
「オレは、すみれとしかしないって言ったはずだぞ」
と、怒りまくる春也。
「私は誰とも結婚はしません!」
そう言って、その場から逃げた。
巻き添えを食らうのはごめんだ。
「待て、すみれ」
「イヤです!」
逃げる私。追いかける春也。
誰もいない会議室。そこで掴まってしまった。
「オレは本気だからな?」
そう言って、私を抱きしめた。
「・・・」
「アイツを忘れるまでずっと、待ってるから」
「・・・忘れられなかったら?」
「おじいちゃんになっても、待ってるさ」
そう言って笑った。
…私に、あの人を忘れる事なんて、死んでも、無理かもしれない。