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Cassisの前で解散した後。

捺と裕香はこっそり梓と銀のあとを追っていた。


「なんだか探偵みたいで楽しいね」


こそっと裕香が言った言葉に大きく頷く。

ただの野次馬根性からの行動だが、見つかるかもしれないというスリルがたまらない。


「それにしても、梓の言った通り綺麗な人だったな」


それまで梓が誰かの外見を格好いいとか可愛いとか言ったことはないような気がする。


「そだねぇ。あーちゃんって、思い切り『見た目より中身』だもんね」

「うん。清々しいほどに中身しか見てないな」


それは彼女自身、自分の見た目にコンプレックスがあることも関係しているのだろう。

彼女は小学校で出会ったときから美人の部類だった。

美しい黒髪、白い肌。それだけ見ればまるで日本人形のようだった。

ただ、彼女は瞳の色が薄く、黄色をしていた。

それは捺でも当時は少し怖い印象を受けたし、猛禽のような色だと大人もその色を好まなかった。

大人が彼女を避けていることを、子供たちは敏感に感じ取っていた。

梓は周りの多くから、その瞳の色のせいだけで避けられていた。


「ひーさんもたぶん、そういう人なんだろうね。じゃなきゃ、あーちゃんが懐くはずないもん」

「そうだな。梓もリズも外見しか見ない奴が一番嫌いだもんな」


珍しい紫の瞳を持つ裕香のあだ名はいつの間にやらエリザベス=リズになっていた。

愛らしい外見の裕香に声をかけてくる男は昔から多かった。

だから彼女は恋愛経験が豊富であったけれど、寄ってきた男の多くは彼女の外見だけしか求めていなかった。

何もしなくても男が寄ってくる彼女に周りの女子は嫉妬したが、それもやはり彼女の外見しか見ていないからであった。


「でもさ、ひーさんは外見で好きになっても仕方ないよな」

「そりゃあ、普通の女の子なら誰だって惚れちゃうよぉ。いーなー、あーちゃん」


いつもなら嫌がるはずなのに、銀と手を繋いでいる様子を物陰から見守りながらため息をつく。

確かにあれはうらやましい。


「あーあ。ウチもあんなイケメンと手繋いでいちゃいちゃしたい」


頼んだらしてくれるかな、なんて言いながら尾行を続ける。

梓と銀に気付かれたような様子がないので、少し得意になっていた。


「もうすぐあーちゃん家だね」


もう少し尾行していたいと思う気持ちがあったが、この距離では会話も聞けないので面白さは半減なのだが、途中で裕香と妄想アフレコをしていたのでそれはそれで面白かった。

またやりたいなと呟きかけて、不意に軽く振り返った銀と目が合った。

彼の唇が動いて何かを告げたが、聞き取ることはできなかった。

ぱっと彼が梓の手を引いてすぐ傍の角に入っていく。

慌てて追ってみたけれど、2人の姿はすでに見当たらなかった。


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