『日本改造計画外電』その弐拾参『多夫多妻』ドラマ（９）相談

　今日のリモート会議参加者は、後で語るとしよう。

「えーーっ……本日は、お悩み相談です。が、私は他人の相談を受け付けません。何故かと言うと、私は総統と言う支配者です。そんな人間が、相談を受け付けると、その答えが『命令』になる可能性があります。そこで、回答者を別に用意しました。」

「どうも、ご紹介に預かりましたピロユキです。」

「そう言う訳で。本日は、お悩み相談の回答を二件お願い致します。」

「はい。で、質問の内容はなんでしょう。」

「はい。私は、ミスター・ダブリュー。年収は、三百万円、年齢は三八歳。

　三年連れ添った妻が、子供もいないのに浮気したのです。

　気持ち悪くて妻を抱けなくなりました。

　しかも、浮気相手の男の方が、大きいとスマホの写真を見せびらかします。

　妻の要望で、実家以外の家を購入しました。ローンは、私が返済中です。

　昔なら離婚案件でしたが、今はできません。どうすればよいでしょう。

　以上になります。お願い致します。」

「んーーっ。問題は、二つあると思います。それぞれ答えますね。

　まず、妻の浮気。もう一つは、浮気相手の性的能力のマウント。

　これらを分けて考えましょう。いいですね。」

「はい。続けて下さい。」

「まず、妻の浮気ですが、現在では有責にはなりません。男も同じです。

　そこで、あなたに必要な事は、『転職』です。

　まず、『転職』。給与の支払先用に新しい銀行口座を開設。

　勿論、家のローンも解約。家は、ローン会社が召し上げるでしょう。

　で、長期の出張と偽って、身の回りの品物をまとめて家を出ます。

　後は、新しい出会いを求めて行動し、再婚しましょう。

　最初の回答は、以上です。法に触れる事はありませんか。」

「問題ありません。すると、奥さんの収入は如何程か不明です。

　が、家から追い出された上で、夫からの支援も無くなる訳ですね。」

「ええ。勿論、これだけではありません。二つ目の回答です。」

「はい。続けて下さい。」

「これは、セクシャル、モラル、双方のハラスメントになります。

　慰謝料を請求できます。詳細は、弁護士に相談すべきです。

　それも、セクハラ、モラハラに詳しいと自称する弁護士が望ましい。

　こんな所ですね。」

「分かりました。ありがとうございます。

　では、二件目の回答をお願いします。」

「はい。どうぞ宜しくお願いします。」

「私は、ミスター・キュー。いわゆる『デキ婚』の妻と結婚十年目、九歳の息子が一人います。今年、自治体から『義務化された』と言われて無料の遺伝子鑑定を実施。息子は、私以外の男との子供だと証明されました。寝耳に水の出来事で、何をすればよいのか分かりません。

　助言をお願いします。以上です。」

「まず、それは、『托卵』ですね。で、『托卵』って『詐欺罪』が、適用されます。実際、ミスター・キューは、今まで騙されていた訳です。すると、托卵した妻と妻の実家、妻の浮気相手の男に、損害賠償請求可能ですね。金額は、分かりませんが、結婚後のあなたの収入の半分くらいでしょう。詳しい事は、『托卵』専門の弁護士先生に相談して下さい。

　こんな所ですね。如何でしたか。」：

「有難うございます。質問は、以上です。」

　＊　＊　＊　

　今日のリモート会議参加者は、またもピロユキ氏だ。

「本日は、以前取り上げた相談のその後を紹介します。

　コメントをお願いします。」

「はい。そうぞ宜しくお願いします。」

「まず、ミスター・フー。結婚を前提とした交際中の女性が、既婚者。

　しかも、複数人の夫と同居している。そうです。」

「あぁ、ミスター・フーですか。覚えていますよ。

　で、どんな返事が来ましたか。」

「えーーっ『言われた通り、彼女と結婚前に、結婚後も女性と交際する。

　この家で同居する事もあり得る。そう彼女に伝えました。

　念の為、上記行動を許可するとの覚書もさせました。』

　まず。ここまではいいですか。」

「はい。『覚書』は、良い手ですね。ファインプレーです。」

「で、何人かの女性を結婚相談所で紹介されました。勿論、彼女……ややこしいので彼女Ｂと呼びます。彼女Ｂには、私の現状を伝えました。で、実際に妻と妻の両親に合わせました。その後、彼女Ｂとも結婚しました。すると『化学反応』が発生しました。」

「成程、『化学反応』ですか。言いえて妙ですね。」

「彼女Ｂと妻の間で、同居夫全員の奪い合いが、始まりました。

　まさに戦争です。私も双方から搾り取られました。まるでハーレム。

　ではなくて、単なる女同士の縄張り争いなのは、分かっています。

　今は、三人目を家に入れる提案をしています。勿論猛反発です。

　が、『覚書』が、あるのでそれ以上は何も言えません。

　結局性行為に持ち込んで誤魔化すのみとなっています。

　かつて妻は、三人の男から月五万円ずつ貰っていました。

　十五万円×十二か月で、百八十万円、更にベーシックインカムを加算。

　するお、約二百五十万円、物価半減令があるので実質五百万円。

　でしたが、彼女Ｂとの間で、奪い合い。一対四とか二対三です。

　結局、奪い合いが、終わる事はないでしょう。

　最近は、入浴中に二人がかりで、襲われています。

　私はこれで満足です。ありがとうございました。

　以上になります。まさしくピロユキ氏の予見通りでしたね。」

「確かに、良い制度ですね。『多夫多妻』。これなら、夫婦間の揉め事も最小限にできます。だって、次の妻を娶るって、夫から切り出されると、妻は言い返せません。だからと言って、若い男を連れてこれるか微妙です。

　やはり自由競争は、必要なんですよ。」

「では、次のお便りです。ミスター・ダブリューからです。」

「あぁ……ダブリューさんは、妻の浮気と浮気相手のマウントでしたね、」

「はい。連れ添って三年目、妻が男を作った挙句、浮気相手の方が男性器が優れていると、スマホで撮影した画像を見せびらかす。気持ち悪くて妻を抱けない。

　そんな相談でした。話を続けますね。」

「はい。お願いします。」

「そこで、言われた通り、転職、給与振り込み用の新銀行口座開設。親には、転職引っ越しする事を伝えましたが、転職先、引っ越し先は教えず。家のローンを解約し、長期出張と偽って、家を出ました。」

「成程、私の助言をほぼ全て踏襲したのですね。」

「続けますよ。えーーっ……

　『すると、引っ越しして一週間ほどしてから妻から電話が来ました。

　　ようするに、住宅ローンを解約した事で、退去勧告が来たそうです。

　　しかし、私は自分の思いを全て、更に二度と会う気もないと話しました。

　　まだ文句を言っていましたが、電話を切り、ブロックしました。

　　実家に連絡があったそうですが、知らぬ存ぜぬで追い返しました。

　　今では、給与が多少目減りした新しい職場で、頑張っています。

　　仕事が忙しくプライベートまで手が回りませんが、自由を謳歌

　　しています。また、弁護士に相談し、セクハラで訴える事も可能。

　　そう言われました。本当に助かりました。ありがとうございます。』

　以上になります。」

「やはり、そうなりますよね。性欲処理は、若い男とやる。

　恐らく、この奥さん旦那をＡＴＭ扱いする気満々ですよ。

　子供が、できる前に別れる事ができてよかったと思います。」

「では、最後のご返事です。ミスター・キューからです。

　『言われた通り托卵に詳しい弁護士に相談しました。すると、

　　詐欺罪に該当しますので、慰謝料請求、養育費の返還請求

　　等が可能と言われました。但し、離婚はしない方が良い。

　　余計な出費がかさむだけです。そう言われました。

　　転職、給与の受け取り用の新規口座開設した上での引っ越し。

　　その辺で手を打つべきだそうです。

　　今は、弁護士先生の助言通りに行動しています。

　　自分一人では、何も手につきませんでした。ありがとうございます。』

　以上です。」

「現行法でも托卵は、詐欺罪ですし、妥当な判断だと思いますよ。

　よい弁護士さんを選択したミスター・キューのファインプレーですね。」

「本日は、以上になります。ありがとうございました。」

「いえ、こちらこそありがとうございます。」

＜ＥＮＤ＞