十年越しの告白
二十二時三十八分。
駅前の居酒屋で、私と白石君はビールジョッキを掲げていた。
互いのジョッキを打ち合わせて私は笑う。
「かんぱーい!」
冷えたビールをぐいっと呷る。
口の周りを泡だらけにして、私は「ぷはぁ」と言った。
白石君も美味しそうにビールを飲んでいる。
私はテーブルに頬杖をつき、上目遣いに見つめながら尋ねた。
「でもよかったの?」
「何が?」
「同窓会の二次会だよぉ。みんなに会うの久しぶりでしょ」
「お前が二人で抜けたいって言ったんだろうが」
「あはっ、そうだった!」
私は大笑いしてまたビールを飲む。
近くを通りかかった店員さんに二杯目を頼んでおく。
この調子だとすぐに飲み干しそうだった。
おつまみのチーズをかじりつつ、私は白石君に謝る。
「ごめんね、大人数ってそんなに好きじゃなくて」
「気にすんな。俺も落ち着いて喋りたかったし」
「やったー」
私がジョッキを掲げると、白石君は苦笑して乾杯してくれた。
二杯目のビールが届いたところで、私は深呼吸をする。
頬が赤くなるのを感じながら、意を決して切り出す。
「……ねえ」
「何?」
「高校の時、好きだったんだよね。白石君のこと」
白石君は少しびっくりした顔になる。
私は誤魔化すようにビールを一気飲みした。
そのまま二杯目も空にすると、ジョッキをテーブルに置いて喚く。
「もしもあの時、告白していたらなぁ~っ!」
「――別に」
「ん?」
「別に……今からでも遅くない、と思う……けど……」
白石君が照れ臭そうに目をそらす。
私は胸が高鳴るのを感じた。




