表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

第13話:神殿、鉄拳制裁。第一幕!

 《大聖堂》の中は、以前とまるで変わっていなかった。


 磨き上げられた大理石の床。黄金の装飾が施された壁。高すぎる天井に、冷えきった空気。


 でも、私はもう怯えない。


 この場所は、かつて私が“沈黙を強いられた場所”。


 だけど今は――


「ぶん殴りに来たからね」



 足音を立てて、中央ホールを進む。


 堂々と。まっすぐに。


 隣を歩くラグナは剣を手に。後方では、勇者・ゆうりが距離を取りながらついてくる。


 私たちは、まるで“儀式”でもするかのように一直線に進んだ。


 そして、奥の壇上に立つ男が、ゆっくりと姿を現す。


「……おやおや。お戻りになられたのですね、我らが“聖女様”」


 そう言って、にやりと笑ったのは――


「おお、いたいた、マール神官。あんたに会いに来たよ」


「ああ、これは光栄ですね。裏切り者にして、異端の聖女が、わざわざ自ら罰を受けにいらしたと」


「罰? 違う違う。“説法”に来たのよ。拳でな」


 私が一歩踏み出すと、神官たちがざわめき、護衛騎士たちが一斉に前へ出た。


 マール神官が手を上げて制止する。


「構わん、手を出すな……彼女には“神の声”を再び聞かせてやらねばなるまい」


「はーい、神の声より強烈な“拳”で語る準備してきたんで、よろしくねー」


 私の挑発にも、マールは余裕の笑みを崩さない。


「聖女とは、民を癒す器。己の感情や思想で動くものではない。あなたは、その神意をねじ曲げた。ゆえに、粛清の対象なのです」


「ふーん」


 私は立ち止まった。


「じゃあ、その神意ってやつで、この国がどれだけの人を見捨てたか、答えられる?」


「それは、神の試練」


「じゃあ魔族の村が飢えて死んだのも?」


「彼らは、神の秩序に背いた」


「私が癒した子どもが、“聖女に触れられたから汚れた”って言われたのも?」


「神意に背く行為は、穢れを呼ぶのです」


「――なるほど」


 私は、拳を握った。


「やっぱりあんた、“殴っていい側”の人間だったわ」



 その瞬間、空気が一変した。


 ドッ!!


 気合と共に、私は一気に壇上へ駆け上がった。



 騎士たちが動こうとするが、ゆうりが剣を抜き、彼らの前に立ちはだかる。


「ーー手を出すな。あれは、“神意”とやらを正す時間だ」


 マールが後ずさる。


「ば、ばかな、ここは神聖なる大聖堂なのだぞ!」


「だから何? 神聖なら何しても許されんの?」


 私は拳を振り上げた。


「これは“癒し”だよ。歪んだ神意ってやつを、まっすぐにぶちのめす、“聖女の鉄拳”だ!」


 ドカッ!!


 豪快な音が響き、マール神官は壇上から吹き飛んだ。


 神官たちが悲鳴を上げる。


 けれど私は構わず、堂々と壇上に立ち――



「みんな、見てる? これが今の“聖女”だよ」



 静まり返る神殿のなか、私の声が響く。


「もう私は、神殿の都合で動く聖女じゃない。

 癒す対象を選び、“守るべき人”を自分で決める。

 そして、必要とあらば、拳で正す!」


 私は大聖堂の天井を見上げる。


「神様、もし本当に見てるなら――私の“癒し”が間違ってるって言ってみなよ!」



 ……沈黙。



 誰も答えない。


 空から声も光もない。


 つまり――


「……黙ってるってことは、肯定ってことでいいよね?」


 私はニッと笑った。


「ってことで、ここに宣言します!

 本日をもって、“従順な聖女制度”は、ぶっ壊しまーす!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ