その瞳は、魔を穿つ
大地が揺れ、巨体を持つ魔物が森を踏みしめる。
「グォオォォォ……!」
鋭い牙、黒い体毛、血に飢えた赤い双眸――
それはこの世界・エルファビアで“初級災厄種”と呼ばれる魔獣【ブラッド・ヘルウルフ】だった。
だが、竜也は微動だにしない。
「ふっ……悪いが、俺は空腹の獣をも飢えさせる。」
「ブラックファイア(黒き焔)……!」
その瞬間空が割れ、魔法陣が展開された
世界の空気が歪み、時間さえも一瞬止まったように感じる。
魔物が、怯えたように一歩引く。
「フン……見たな?」
魔法陣から黒い焔があたり一帯を焼き尽くした
【称号「魔を穿つもの」確認。】
【固有スキル:《禁忌古代魔法》を付与】
「響け──古の理!《コード:オメガ=グラウンド》!!」
地面が黒く染まり、腐蝕する大地が魔物の足元から侵食する。
次の瞬間、黒い雨が降り注ぎ、ブラッド・ヘルウルフの体が煙を上げて崩れ落ちた。
──魔物、完全消滅。
バサリッ──!
近くの茂みが揺れ、一人の女が現れた。
長い金髪を揺らし、白銀の鎧を身にまとったその少女は、ルシフェルに向かって剣を構える。
「あなた……今の魔法、一体……!」
「ふ……俺の存在を知らぬ者に名乗る必要はない……が、そうだな」
竜也はゆっくりと振り返り、紅の瞳を彼女に向ける。
「た……いや、この世界を終焉へ導く者─《ルシフェル=グシオン=アークフェルド》と、覚えておけ」
少女は、一瞬呆気に取られたように立ち尽くしたが、やがて真剣な眼差しを向けた。
「私はアリシア・フォン・アストリア。アストリア王国聖騎士団の一員。……あなたに、質問がある」
「ふ……ならば、答えよう。俺が気分ならな」
この出会いが、後にエルファビアの運命を大きく動かすことになるとは、
まだ誰も知らなかった。
──世界は、終焉の名を持つ少年を中心に回り始める。