四。 似たもの同士
響き渡る緑の歌は 夏の序章を告げました。
遠い遠い世界の端から 雲を掻き分けて来ました。
私の隣にいる父は 西瓜の樽に胡瓜を入れて
私の隣にいた父は 風鈴の音に拐われて
父の煙草とはまた違う 細い細い糸の先に
縁から月を眺めると それを映した末の池
約束を今思い出しました。
朝顔の浴衣を羽織って来ると。
約束を今思い出しました。
いつもの煙草も買いました。
サエの声が聞こえますか?
マイの声が聞こえますか?
孫の顔は見えますか?
ふふ、自慢の娘です。
さあ、そろそろ月が出てきてしまいます。
もう私に影が無いことに気づかれる前に
お迎えありがとうございます。
なあに、泣くような女々しい男に育てた記憶はないでしょう。
「お父さん、西瓜食べる?」
「お父さん、西瓜だよ!西瓜!」
食べなくて良かったのかい?
今日までに3玉も食べましたよ。
「お父さん、胡瓜に塩かけていい?」
「ああ!ずるい!マイもかけたい!」
胡瓜はそのまま囓るんだ!
届いてないですって
もう、あの娘たちに返事をしていません。
もう、知られてしまいます。
心残りなんて引きずるよりも、
親なら支えてください。そう、堕ちないように。
背中から聞こえる泣き声を花火が絵日記をつけました。
決して温かくはない手を私はしっかり握っています。
両側に私の両親。その真ん中に大人の私。
あの花火大会以来ですね。
響き渡る夏風の歌は 秋の予鈴を告げました。
遠い遠い夜空の中から 恐怖を流してくれました。
私の隣にいる父は 長生きしたなと茶化したり
私の隣にいる母は 自慢の息子と笑ったり
あ、そうだ。忘れてました。
これ、いつもの煙草です。
浴衣、とても似合ってますね。
そしてやっぱりお綺麗です。
夏は暑いから嫌いでした。
今日はとても冷涼でした。
瓜二つな娘たちへ。
悲しまなくても大丈夫。
また3人で帰って来ます。
2人は優しく言いました。
産まれてくれて、ありがとう。
執筆:2024年11月11日