二。 溶け始めた氷菓
地球は今日もくるくる回った。
私は今日も前に進んだ。
私は今日も眠りについた。
明日はきっと来ないんだ。
「しっかり寝たら、明日は来るよ」
と母は優しく頭を撫でた。
「ほら瞼を閉じて、再び開ければ」
今じゃないよ、と笑ったの
地球は明日もくるくる回る
ぶらんこゆらりん ゆらゆららん
地球は明日もくるくる回る
おんなじように くるくるりん
明日、地球は溶けちゃうの?
私のせいで溶けちゃうの?
みんな、いなくなっちゃうの?
私はどうすればいいの?
母は私の頬張る氷菓が
溶けないように見守った
母は持っている氷菓が
溶けていることに気づいていない。
ねぇ、昔はどんな世界だったの?
「今じゃありえない世界だよ」
母は早く行きましょうと
私の手を引っ張った
地球は明日もくるくる回る
あの頃ならまだやり直せた
地球は明日もくるくる回る
時計の針は止まったよ
地球は棒を軸として
周りが徐々に溶けていく
世界は溶けた、私によって
私たちによって、世界は溶けた
母は涙を流していた
明日はきっと来ないんだ。
思い返したあの夏は
懐かしい母が笑っていた。
あの頃見つめた夏風は
壊れた未来を予知していた。
まだ幼かった私なら、
考えていなかっただろう。
もし私も母くらいなら、
溶ける前に氷菓を食べたのに。
執筆:2024年6月1日