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女神様の今カノ1人目に殺されること拒否します!(STOP!一婦多妻)

「きゃ~」

「フレグラちゃん最高の悪役令嬢です~」

「嬉しいから今カノ1人目の住所教えてあげますねぇ」


 やった!


 これで1人目をぶっ殺せる!


「私の今カノがいるのは──」




「貴女のすぐ後ろ」




 女神様が言い終えた刹那、私の胸を刃が貫いた。


「がは……ッ!」


 私の胸を貫いたのは、ただの刃じゃなかった。


 なんとそれはチェンソーだった!


 ブブブブバリバリバリバリという駆動音をかき鳴らしながら刀身を駆け巡るギザ刃が私を縦に切り裂こうとする!


 だが私は無敵の聖剣を持つ悪役令嬢。


 女神様に選ばれた悪役令嬢なのよ。


 それがこんなところで今カノ1人目に殺されるはずがないじゃない。


 私は完全に役に入り切ってモノローグを終えると同時に聖剣を背後に突き刺した。


 すると刃が後ろに引っ込み、私の聖剣も何者をも貫くことはなかった。


「きゃはははは、あんたスゲーな」


 私が後ろを振り向くと、そこに立っていたのは紫のウサ耳パーカーを着てチェンソーを持った、いかにもサイコパスって感じの女だった。


 良く見かける気がする!


 こういう子は大抵は歯もギザギザなのだ。


「あなたこそ、すごい歯をしてるわね」


「歯?」

「なんのことだ~?」


 ヤマ勘で言った私の言葉は大外れ。


 完全に普通の歯だった。


「私の名前はサワダシエラ・フレグラ」

「あなたは?」


「ヤマシロマイティー・ノリコ」


「じゃあ、ノリピーって呼ぶわね」


「馬鹿!」

「やめろ!」


「大丈夫」

「貴女の出番はもう終わりなのだから」

「さようなら、ノリピー」


 私はクールなセリフとともに無敵の聖剣を勢いよく振り抜く!


 無敵の聖剣から放たれた無敵の光波がノリピーを完全に消し飛ばしたのだった。


 だけど私は胸を貫かれたときに致命傷だったみたいで、そのまま死んだ。


「私の今カノがいるのは──」




「貴女のすぐ後ろ」




 女神様が言い終えた刹那、私の胸を刃が貫いた。


「がは……ッ!」


 私は聖剣を背後に突き刺した。


 すると刃が後ろに引っ込み、私の聖剣も何者をも貫くことはなかった。


「め、女神様!」

「このセーブ地点だと無限に死ぬのがループしてしまいます!」


「うふふふ……そうですよ~?」

「貴女はこのまま無限に私の今カノ1人目の手で殺され続けるのですよ~?」


「そ、そんな!?」

「女神様以外に殺され続けるなんて耐えられない!」


「きゃはははは、あんた何いってんだ?」


 私はノリピーの声に応じることなく無敵の聖剣で自分の首を切り落とした!


「私の今カノがいるのは──」




「貴女のすぐ後ろ」




 女神様が言い終えた刹那、私の胸を刃が貫いた。


「がは……ッ!」


 ダメだ!


 自殺しても同じところに戻ってしまう。


「うふふふふ……ムダですよ~」


 私が苦しんでいるおかげで女神様がとても喜んでいる!


 私はとても嬉しい!


「それならば、より素晴らしい死に様をご覧ください!」


 私はそう言って、そのまましゃがみ込んだ!


「なッ、あんた、何やってんだ~!?」


 ノリピーの驚愕を余所に私は脳みそまでチェンソーで切り刻まれて絶命した!


「私の今カノがいるのは──」




「貴女のすぐ後ろ」




 女神様が言い終えた刹那、私の胸を刃が貫いた。


「がは……ッ!」


「それなら次はこうだッ!」


 私は思いっきり後ろまで下がり、より深くチェンソーに貫かれてみる。


「なッ、あんた、何やってんだ~!?」


「ひとつ聞きたいのだけれど」

「貴女はどこまで女神様とシたのかしら?」


「ばっ、そんなことする訳ね~だろ!」

「わ、私は女神様の遣いとして世界を救うためにお前みたいな狂った悪役令嬢を処刑してんだよ!」


 なるほど。女神様は相手によって方便を使い分けているのか。


 うらやましい!


 私も女神様に騙されて正義を成している気になって自惚れたいぃ~~~。


「ノリピー」


「馬鹿!」

「やめろ!」


「現実を良く見なさい」

「貴女は騙されているのよ」


「あ?」

「何いってんだ?」

「どう見てもあんたが罪もない人々を皆殺しにした現場じゃね~か!」


「はっ!?」

「確かに……!」


「ぷぷぷぷぷ……フレグラちゃんって本当にお馬鹿さんですねぇ」


 女神様に笑われるのが気持ちいい……。


 だけどこのままでは、女神様の匂いを嗅いだり、体を触ったり、全身を舐めたり、女神様の12人の今カノを殺せないので、話が進みそうな打開策を考えるのだ!


「もっと現実を良く見なさい」

「私が持つ聖剣を良く見るのよ」


「はぁ?」

「……それは私の聖剣チェンソリバーと同じマーク!」

「女神印の聖剣じゃね~か」


「そうよ」

「これで誰が敵なのか分かったでしょう?」


「そ、そんな……」

「私は女神様に救われて……」

「ずっと悪に落ちたり頭がイカれちまった悪役令嬢を処刑してきたっていうのに……」

「そいつらは全部、清廉潔白だったていうのかよ!?」


「そうよ」

「あなたは無実の悪役令嬢たちを処刑してきたの」


「わ、私は……私は……」

「う、うわああああああぁっぁあぁっぁ!!!!!!」


 ノリピーは私からチェンソリバーを引き抜いて女神様に向かって振りかざした!


「隙あり!」


 私はノリピーを縦真っ二つでナマス切りにした!


「愚かな悪役令嬢ね」

「見た目通りのサイコパスなら」

「こんな過ちを犯すこともなかったっていうのに……」

「見た目に反して優しい心を持っていたせいで……」


「わ~、チェンソーで斬られそうになって怖かったです~」

「うふふふ、フレグラちゃん助けてくれてありがとうございました~」


「女神様!」

「私が女神様を助けるのは当たり前のことです!」


「嬉しいから、このループからは抜け出させてあげますね~」

「でもノリピーが私のことを斬るように仕向けたのはムカつくから1回殺しま~す」


「そ、そんな!?」

「女神様を助けたのに!」


「それにノリピーは私のお気に入りの見た目の女の子だったんです~」

「34歳独身ニートの貴女と違って」

「ノリピーは前世の時点からあんなに可愛かったんですよ~?」


「そ、そんな!?」

「でも確かにノリピーは可愛かったから女神様とノリピーの絡んでるところも見──」


 私は女神様に縦真っ二つにナマス切りにされて完全に死んだ!





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