婚約破棄を肯定します!(YES!処刑回避)
「サワダシエラ・フレグラ!」
「貴様は第1王子の婚約者にまったく相応しくない!」
「今この瞬間より、私と貴様の婚約を破棄する!」
「全然OKです!」
そう言い放った刹那、私は名前も知らない第1王子を無敵の聖剣で縦に真っ二つに……。
することもなくショットガンでドタマをぶち抜く……。
こともなかった!
「なにっ」
第1王子は慌てふためいているが私は華麗に一礼し、その場を去ることにした!
そして去り際はなるべく優雅な礼を心がける。
堂々と歩く!
「わ~、フレグラちゃんカッコいい~!」
「素敵~!」
ギャラリーの中に混じっていた女神様が褒めてくれた!
嬉しい!
すると第1王子は声を荒げる!
「ま、待ち給え!」
「婚約破棄をされてどうなるか分かってないのか!?」
私は女神様が好きそうな悪役令嬢の役に徹することにした!
このまま何度も無限に女神様に殺され続けるのも良いけれど、女神様の匂いを嗅いだり、体を触ったり、全身を舐めたり、女神様の12人の今カノを殺せないので、話が進みそうな言動を心がけるのだ!
「もちろん、分かっていますわ」
「どうせ国家反乱や共謀の罪をかけて私を処刑なさるおつもりでしょう?」
「そ、そうだ!」
「貴様には数多くの嫌疑がかかっている!」
「ですがすべては貴男の嘘」
「もちろん、ここに集まっている観衆も分かっていることに違いありません」
「こんな腐った国は私から願い下げです!」
キマった……。
女神様の前でカッコいい婚約破棄された令嬢をやりきったのだ!
「きゃ~!」
「フレグラちゃん素敵~!」
静まり返った空間の中で女神様の黄色い歓声だけが鳴り響いていた。
女神様が喜んでくれて、とても嬉しい!
「では、さようなら」
「もう2度と合うこともないでしょう」
「ま、待て」
「衛兵ーッ!」
「この女を捕らえろ!」
私は"万能キャンプ機能"から日産エクストレイルを取り出して逃げ去ることにした!
ぶんぶーん。
私は34歳独身ニートだけど免許を持っていることが唯一の誇りだった。
ちなみに私の父親が乗っていたのはシャコタンの白いクラウンだったので車高が高いエクストレイルのような車を運転するのは初めてだ!
「さぁ、女神様!」
「ともに冒険の旅に出かけましょう!」
「ダメで~す」
その刹那!
私の四肢が切り落とされた!
「そ、そんな!?」
「これだともうハンドルも握れないし、アクセルも踏めない……!」
「フレグラちゃん良く考えてくださ~い」
「どこの世界に日産エクストレイルで王宮から逃げ出す悪役令嬢がいるんですか~?」
「た、確かに……!」
「完全に盲点でした!」
「次はどんなふうに死にたいですかぁ?」
「女神様の体に包まれて窒息死が良いです!」
「ダメで~す」
「そのまま惨めに多量出血で死んでくださ~い」
「貴女は後30秒で出血性ショックで多臓器不全に陥り死にま~す」
「1、2、3、4、5……」
女神様のカウントダウンが心地いい……。
「10、11、12……」
「女神様、愛しています……」
「28、29、30……」
「次はもっとカッコいい脱出方法を考えてくださいね~」
「はい……」
私の視界はゆっくりと霞んで死に至った。