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サバイバーズギルト

────祐葉視点────



「雪嶺、俺たちや澁鬼、彼の母親、そして町民たちの選択は、正しかったと思うか?」

俺は見晴らしのいい尾根から、もう既に山の奥に隠れて見えなくなった澁鬼の故郷を見る。

「さぁ、本人たちが納得した選択なのなら、それが正解なんじゃないかしら。町民達は生まれ育った土地で死ぬと決めた。獣人に対して出来る限りの抵抗をした。そして澁鬼くんの母親は彼を守ろうとし、そして彼の選択に罪の意識が下りないように最大限の配慮をした。サバイバーズギルトが起こらないための配慮を」

「サバイバーズギルト?」

「自然災害や大きな事故から運良く生き延びた人が、ふとした時に感じてしまう罪悪感。『どうして自分だけ生き残ってしまったんだろう?』とか『どうせなら自分も死ねば良かった』とか運良く生き延びれたにもかかわらず自分を責めてしまうこと。彼がもしあの光景を見てしまったら、まともな精神ではいられなくなる。彼の母親は、それを考慮した上で、彼に睡眠薬入りのパンを渡した」

「澁鬼の母親は、俺たちに着いていくと宣言した時に、ホッとしたのはそのせいか····」

「今にして思えばだけどね。そして、審査官が滞在期間の延長を断った事にも説明がつく」

「俺たちを水害に巻き込まないためにか····」

「えぇ。町民達は私たちのために、澁鬼くんの母親は彼のために出来る事をした。悪手という悪手は無かったんじゃないかしら」

雪嶺は俺の横に立つ。

「俺は、そうは思わないよ...」

俺は拳を握りしめる。

「町民はホッとしただろう。『水害に旅人を巻き込めずに済んだ』。澁鬼の母親は安心しただろう『子供を生かす道が見つかった』と。」

爪が手のひらに食い込む痛みすらも感じない程の憤りが俺の口を動かす。

「だけど俺たちはどうだ?俺たちは町民の配慮で確かに生き残れた、澁鬼も救えた、アイツの心に傷も残さずに。」

「········」

「でも俺たちは澁鬼にこの事実を隠しながら一緒に居続けなきゃならない。あいつはいつか真実を知ることになるかもしれないのに!これからも仲間となったヤツに嘘をつき続けながら生きてくのか!?生き残った先の俺たちの気持ちなんて、考えられてねぇじゃねぇかよ········!」

「············」

「エゴだ······。こんなの、飛んだエゴじゃねぇかよ········クソッ····!」

俺はこの気持ちをどうしたら良いか分からなかった。澁鬼を助けられたのは確かに事実だ。でも俺たちはこれから澁鬼にウソをつき続け、罪悪感を抱えたままパーティーとして行動していく事になる。俺は何が正しいのか、何をもってして澁鬼やパーティーのメンバーを支えられる行動なのかが分からなくなってきた。

「祐葉、そこであなたが悩んでしまったらダメよ。あなただけが抱え込む問題じゃない。それこそあなたがサバイバーズギルトになったらおしまいよ。何の意味も無い。この後どうするかは私たち、そして澁鬼くんの問題、それぞれ別の課題よ。今はただ毅然としてなさい」

「········クッ!!」


俺は何か出かけそうになった言葉を、口の中でゆっくりと噛み殺した。






────佐斗葉視点────


ぼく達は無言だった。これからぼく達はどうしながら生きていくのが正解か分からなかった。

これから向かう研究所でぼく達は自身の異能力を測る事が出来る。それを手に入れて、誰かを救っても、そこに犠牲がついてしまうとしたら?そう考えるとぼくは怖かった。


「うっ...う〜んンンン......」

振り向くと澁鬼くんが上半身を上げ、大きく伸びをしていた。薬の効果から目覚めたようだ。

「あれ...ここは?」

「おはよう澁鬼くん。ごめんなさい、私たちはちょっと急いでたから、寝たままのあなたを運んで研究所の近くまで来たのよ」

雪姉ぇは咄嗟に答える。研究所へ急いでいたのは嘘ではないから、雪姉ぇの言葉に偽りは無い。上手い返しだ。

「そうなのか...そこへ行けば俺も、異能を測れるんだよな?」

「えぇ、それは間違いないわ」

「そっか······じゃあそこで自分の力を知って、使いこなして一人前の能力者になって、俺は、今度こそ、村と母さんを救えるようになるかもしれないんだな」


ズキンッ。


鳩尾みぞおちの奥の奥で、何か針で刺されたような痛みが走った。

彼の最後の言葉に、皆は無言だった。彼の顔を見る者もいなかった。

彼はいつか真実を知ってしまう時が来るのだろうか、その時彼はどんな反応を見せるだろうか、そして、ぼく達になんて言うだろうか。その時になんて答えれば良いだろうか。

それはいつなのか、分からないけど、いつか来ることは分かってる。

ぼくらは、人を助けることは、時として罪を犯すことにもなるのだと知った。


ぼくら4人は旅人、そして罪人つみびと


今ここに、5人目の罪なき旅人がパーティーへ加わった。


新しく澁鬼しぶきくん加えて5人となったパーティー。

彼が増えたことでパーティーは大きく変わることに。

まず人数が増えたことで野生動物の探索範囲も広がるし、野営の見張りも1人増えることで、それぞれの睡眠時間が増える。

そして特筆すべきはご飯。民宿の息子なだけあって、澁鬼くんは料理に慣れていて手際も良くて、何より味がとても美味しい。

彼が増えた事でパーティーライフはより豊かなものになっていった。

ちなみにもう1つだけ分かった事があって、それは澁鬼くんの【運の悪さ】である。

ちょっとしたゲームでも基本負けるし、5人同時勝負のじゃんけんで1発負けなんてこともザラにあった。

最早生き残れたあの日のために全ての運を消費してるんじゃないかとまで思えてきた。

そして意外だったのは恵里菜との相性の良さである。民宿育ちの澁鬼くんは面倒見がよく、気も利くので、自由奔放な恵里菜の良き保護者となっていった。恵里菜の方が歳上だった気もするけど、気にしたら負けな気がする。

たった1日でぼくらのパーティーは見違える程に充実した。

「さて、いよいよ明日は研究所に着くわけだが、みんな心の準備は良いか?」

「ばっちぐぅだよ祐葉〜。恵里菜ちゃんワックワクゥ〜」

「はしゃがずに今日は早めに寝ろよ」

「大丈夫だよ澁鬼。あたし寝付きも寝起きも良いからぁ〜」

「ならいいけど。俺は枕変わると眠れないタイプだから持ってきたけど、恵里菜は持ってないのか?」

「あたしはどんな枕でも大丈夫〜。今夜は佐斗葉の腕を枕にしようかなぁ〜」

「限定的な枕にしないで恵里菜さん」

「なぁ雪嶺、『今夜は』ってことは恵里菜って色んな男を取っかえ引っ変え枕にしてるのか...?」

「澁鬼も限定的な枕として捉えるな!!」

そして意外と天然ボケだった。











第1章はこれでおしまいです。ここまで読んでくれてありがとうございます!!

次はいよいよ主人公たちの異能力が開花する第2章です!!

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