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一話 終わりと始まり!

〇アリサ

その日私は自分の無力さを知った。

誰も守れなかった。目の前で母と逃げ遅れた妹がナイフで刺され「お姉ちゃん!」と叫ぶ声が次第に小さくなる様を、家族だったものを泣きながら見ていた。

助けに行け!動け!お母さんが!動け!妹が!動け!動けよわだしぃいいい!!!!

いくら心の中で自分を責め立てても圧倒的な暴力による恐怖には勝てず、腰が抜けてへたり込んでしまっていた私には何もできなかった。妹が完全に動かなり、辺りが二人の赤で染まった頃次のターゲットになった。黒い服の男がこちらに近づいてくる。逃げないといけないことはわかっている。けれどそうして何になるのだろうか。大切な家族が二人も奪われてしまった。私は何もできなかった。私は生きていてもいいのだろうか?怖い怖い怖い!助けてお父s...

後悔と恐怖、そして未練を残して私の人生は終了した。もし、もしもこんな私にも次があればその時こそは必ず私が...


次に目が覚めた時、私は謎の空間にいた。謎の空間と言うのは私の語彙力がない訳ではない。私の知る言葉では表せないというのが正しいと思う。その謎空間には水晶のようなものがいくつも並んで浮かんでいる。それ以外は特に何もないどこまでも広がっている空間。此処が何処でその水晶が何か分からない私はそれに近づいてみるしかなかった。その水晶があまりにもきれいだったので、手を伸ばしそれを手にとった。

刹那、気づけば私は赤ちゃんになっていた。はたから見たわけではないが、自分の体が小さくなっており女の人に抱かれていた状況から自分は赤ちゃんなのだろうと思った。

「アリサはいい子だね。ほらねんねしな~」

私を抱っこした女の人が私を寝かせつけようと優しく声をかけてくる。私はそれに何故か安心感を覚えいつの間にか眠りについていた。

そこで元の場所に戻ってきた。今のは一体?夢というには鮮明に内容を覚えている。兎にも角にもまだ水晶のような物は残っている。他のものも試してみよう。そう思い近くにあった水晶に触れた。

今度は触れた瞬間に全く知らない空間に立っていた。けれどもこの自然に囲まれ、中心には大きな屋敷が建てられているこの場所を知っていた。私は此処が何処なのかは知らないが、頭の中にこの場所の記憶があった。そうだ、この場所はローズブライト侯爵家の所有する屋敷の一つだ。そして私、アリサ・ローズブライトはこの屋敷に住んでいる。私もしかしてだけどこのアリサとかいう貴族に転生したということだろうか?けれど転生なんてあるわけがない。なぜならあまりにも非科学的すぎるから...そうか!私は死にかけで走馬灯のようなものでも見ているに違いない。こじつけだけれどこれが一番納得がいく。

「お嬢様、何か考え事でしょうか?」

気づかなかったが考え事をしている時に誰かが近くに寄ってきていたみたいだ。さてなんて返事をしようか?と私は言葉を探そうとしたが、その必要はなかった。

「そうです、わたくしはこの家の長女です。だからこそ知識を付け、体を鍛え魔法を使いこなさなければなりませんの。でなければ領民に示しがつきません。ですが今の私はそれに遠く及びませんし、自分の無力さを知りました。対して貴方は10歳という若さでで私の専属執事になりました。優秀なアレンには今の私はどのように見えますか?」

おいおいおい魔法?私は何を言っているのだろうか...そもそも体が勝手に動くのは何故?

「私としてはお嬢様は十分立派だと思いますよ。貴方はまだ七歳なのにもかかわらず、貴族としての自覚を持っておられます。使用人である我々はお嬢様を全力でサポートします。ですので、お嬢様は何も心配しなくても大丈夫ですよ」

魔法とか意味の分からないことにわざわざ合わせてくれてありがとう。

「ありがとうございます。変なことを聞いてしまいましたね」

本当に変だね。

「何かあればすぐにお声かけください。話は変わりますが、この後は魔法についての授業が入っております...


ここで再び謎空間に戻ってきた。いや、魔法ってホントにあるんだ...

それはともかく

いくつかの水晶に触れて私は気づいた。ここはアリサちゃんの記憶の中らしい。また、アリサちゃんは日本のある地球でない異世界に住んでいるらしい。それに加え魔法というものがあるらしい。水晶に触れたとき、一度だけ私の意思で体を動かせた時があった。その時に他に水晶で体験した要領で魔法を使ったら本当にできてしまった。また水晶の中には魔法の授業の記憶があった。


「知恵の神と言われるアリストテレスにより我々は四元素により世界が作られていると知りました。火・土・水・空気の四つですね。これらを体内にある力で操ることを魔法と言うのです。これは基本的な事ですね。では魔法を使うことにおいて最も大切なことは何ですか?」

「はい、それはイメージ力ですね。四元素の構成を温・冷・湿・温を加えることで変化させます」

「しっかりと予習していますね。正解です!細かいことを言えば変化させるだけでなく操る魔法もありますし他にもいろいろ。まぁ基礎の応用なので今は置いておきましょう。」

みたいな授業を受けた。いろいろツッコミたいことが多いけれど、実際使えてしまうのだから恐ろしい。魔法については深く知っておかないと...

というか四元素説は化学により否定された。スイヘーリーベーとか学校で習ったし...

そもそも四元素説はアリストテレスが唱えたものだ。これは私のいた世界での話だが...もしかしたらアリストテレスもこの世界に来ていたのかもしれない。というか異世界でも間違えた主張して知恵の神とか言われているのは何かおもしろいな。私が正しい事実を伝えたら何の神になるのだろうか?いやいや、伝えるも何もこの謎空間はどうやって抜け出せばいいの?


謎空間に来てから体感二、三日経ったと思う。やっと最後の水晶の記憶を見終わりここに戻ってきた。

私は記憶を見れば見るほどアリサになっていく気がしていた。今では私は本当にアリサではないのか疑っているくらいだ。だけれど私の生きた記憶は残っている。いや、記憶しか残っていない。水晶に触れれば触れるほど私の体がアリサになっていった。そして気づいた時には髪型などが完全にアリサと同じになっていた。けれど『今』はこの形が正しいと思ってしまう。だから今の私がアリサではないことは記憶でしか証明できない。

「はぁ、どうしようかな」

そう呟いた時、謎空間に亀裂が走った。画面にひびの入ったスマホで見る景色を現実で見ることになるとは。え?これもしかしてヤバイよね。そう思った私は走り出した。しかしその行為に意味はなかった。ひびが入ったのなら当然割れる。この謎空間が割れて...


〇アリサ

私は生まれつき、同年代の子に比べて魔力が二倍以上あった。魔力が二倍あるということはそれだけ有利になると思っていた時期があった。しかし、実際のところ皆と同じ程度の量で魔力切れを起こしてしまう。また、おかしなことに私の持つ半分の魔力はほかの人には感じられないらしかった。だから私は5歳頃には自分の感覚がおかしいのだと考えていた。それから二年の月日が経った頃だった。私はこの魔力の真相を知ることになるのだった。

少し話が変わるがこの国は貴族など良い暮らしをしている人もいれば、スラム街のような場所に住む人もいる。つまり貧富の差が激しいということだ。それに富裕層はすべてにおいて環境がいい。つまり高い能力を身に着けやすいので、より一層繁栄できる。だから貧富の差が縮まらない。本当の‘’ヤバい奴’’はスラムの地獄で経験を積んだ人がいることもあるけれど...

閑話休題

貴族は基本裕福であるから、賊に狙われることがある。それは私も例外ではなく私が馬車に護衛二人と乗って王都から帰っている最中に襲撃にあった。護衛は優秀だった。けれどそれ以上に賊は強かった。

馬車が揺れ止まった瞬間に襲撃を察知して護衛の一人が外に飛び出した。けれどその行動は読まれており、馬車から出た瞬間に魔力で強化された賊の斬撃で首を切り落とされた。それを見たもう片方の護衛は私を抱え、馬車の天井を破壊し飛行して逃げようとした。しかし10人程度いた賊に周りは囲まれていたため、包囲は突破できず無惨に殺されてしまった。残った私に賊のリーダーらしき人間が近づいてきた。彼は私の顎を持ち上げるようにして、自分と目を合わせさせた。

「へぇ、お嬢ちゃんいい顔してるじゃん」

そう言い気持ち悪い顔で笑い始めた。たった一言だったが私の心を深く傷つけるには十分だった。

「綺麗な薄花色の髪と目、こっちは...小さいけれどそういう趣味のやつもいるしまあいいだろ。おい!お前ら、こいつを連れていけ。その前に好きにしていいぞ。けど傷はつけるなよ。価値が下がる」

「最高だぜ兄貴!」「うへへ、どうしてやろうかこいつをなぁ!」「ロリに手を出すなボケカス!普通見るだけだろ!おさわり禁止だああぁ!!!!!」「黙れこの過激派ロリコンが!もう待てねえよ」

など黄色い歓声が上がった。騒ぐ手下を静めたボスらしき男が離れていき、代わりに手下の男どもがじりじりと集まってきた。逃げなきゃと思ったが、体を動かせない。

「誰か誰か誰か、誰か助けて!」

誰かに届くように精一杯叫んだ。

『いいよ。私が助けてあげる』

私の叫びで呼んだのは”私”だった。この返事から私の体が勝手に動き出したのだった...


ズドン!と破裂音がした。その刹那目の前の過激派ロリコンの頭が吹き飛んだ。

「なっ!お前何をした!」

『何って、発砲だけど』

その瞬間私の周りに黒い筒が何本も魔法で創造された。私に近づいていた盗賊がとっさに距離をとろうと後ろに下がるが、あまり意味をなさなかった。

『パーン』

私?がそういった後何度も何度も破裂音が響き、その音の回数に比例して目の前の盗賊たちの体が減っていった。数秒後には私の視界に立っている人がおらず、最後的に立っていたのは私だけだと思っていた。しかし背後から銃の反対側になるように押し倒され、盗賊のボスに馬乗りにされてしまった。勿論それだけでなく魔法で作った刃物を首に当てられている。生殺与奪の権を握られたわけだ。

「おまえのその銃とかいう奴は確かに脅威になる、けれど前にしか攻撃できない...だろ?おっと、その銃を作ったり動かした瞬間お前を殺すいいな?」

その問いかけに頷く。

「お前にいろいろ聞きたいことがある。まず一つ、お前は貴族の娘のわりには簡単に人を殺したし、人殺しの目をしている。何故だ?さっきまでとはまるで別人だ」

『別人ってのはそうかもね~。あと人殺しなんて初めてだよ、そんな物騒なこと』

「お前やっぱりおかしいんじゃないか?」

『まぁ初めてやったけどこれいいね。私と同じを増やせるんだもん。楽しいね』

私?はそういって笑顔を浮かべた。

「はっ、お前此処で死ぬべきだよ」

『おじさんもね。おじさんは忘れてない?私の近くのものに気を取られ過ぎだよ』

それに気づいた瞬間自分の服と体が真っ赤に染まった。

『最初にロリコンを打った銃の場所を把握することを忘れたのが死因だね、おじさん...』

私は私?に恐怖を覚えた。淡々と人を殺し、それでも平静を保っている。しかし私の恩人であることには変わりない。

「誰か分からないけどありがとうございます」

『私もアリサが誰だか知らないけれどどういたしまして。後は自分でどうにかしてね』

「はい、あとは自分でどうにかします。ところであなたは一体?」

『私もよく分からないけど貴方なんじゃない?気づいたら貴方だったの

「私にはよくわかりません。気づいたら私だったとは?」

この問いかけに返事が来ることはなかった。そしてもう一人の私が現れることも数年なかった。


三年後彼女と再会した。

朝アレンに起こされると、そこに私を助けてくれた彼女がいた。

「あなたはだれですか?」

「アレンですけれど。私がどうかしましたか?」

「えっと、私まだ寝ぼけているみたいです。申し訳ありません、それでは朝食にしましょう」

私は失言を誤魔化すことにした。因みにこの時私は彼女を初めて見た。けれど、きっと彼女がそうなのだろうと思った。何故なら私と姿がほぼ同じだったからだ。私は薄花色の髪と目をしているのに対し、彼女は黒い髪と目をしていた。さらに私以外に彼女は見えないらしい。朝食を食べている時のお母様、部屋へ帰る途中に廊下ですれ違ったお父様、アレンを始め使用人の人たち全員見えていないらしかった。普通私とその色違いがいたら声をかけてくるはず。であるのに何も言われないのだからきっとそういうことだ。部屋に戻り、一人の時間を確保した私は彼女に声をかけた。

「あなたがあの時の自称私であっていますか?」

『そうだよ。私があなたを助けたもう一人の私だよ。アリサって呼んで』

「アリサ...さん、あの時はありがとうございました」

『冗談だからそんなに無理して呼ばなくていいよ』

その時彼女が初めて笑った。笑い方など仕草が本当に私にそっくりだった。

『いろいろ疑問があるだろうから先に教えてあげるよ。私はアリサ・ローズブレイド...の記憶を持った別の人格って言ったところかな。私も気づいたら貴方の中にいたの。』

「私の中のもう一つの人格?」

『私はそうだと思ってる。因みにあなたを瘋癲病者と言いたいわけじゃないからね。魔法があるのだからもう一つの人格があってもいいと思うの、うん』

「そういうものなのでしょうか。因みにあなたのその体は?」

『これはコンタクトをとるための魔法を試しているうちにできちゃった。理論まで聞く?』

「人格の顕現という魔法は聞いたことありませんので聞いてみたいですね」

『この世界ではどう知られているか知らないけど人間は脳で情報を処理している。だからその脳に情報を魔法で作って送っているといった感じかな。だからあなたにだけ私を認識できているってこと』

「なるほど?」分かってない。

「朝から何か変な感覚があると思っていたのも、私に魔力がほかの人よりも多く備わっているのもあなたがいたからなんですね」

『そういうこと(知らなかったけれど)。多分。だから今日からよろしくね?もう一人の私』

「拒否権ないですよね、それ。よろしくお願いしますね、もう一人の私。」

この後私から色々な事教わった。原子論だとか数学だとか。彼女の言ったことを一つ一つ考えていくと確かに理にかなっていた。 アリストテレスの四元素説は魔法があることで証明されていたが、魔法がなければ証明できない。けれど彼女は魔法なしでそれを証明できるらしい。逆に私は彼女に魔法について色々なことを教えた。彼女の銃とかいう魔法は強力だったが、魔力の使い方がなっていなかった。だから基礎から私が教えた。魔力探知や効率的な使い方などなど。彼女は喜んでいろいろな魔法の使い方を考案した。すべてアニメ?で見たと言っていたがそれが何か私にはわからなかった。

閑話休題

私の日常にアリサというもう一人の私が加わった。彼女によって私の日常は確かに楽しくなった。お母様は私に優しく接してくださり、お父様も私にいろいろな政治、社交界での立ち回りなどを教えてくだった。アレンたちも私に勉強を教えてくれたり、魔法の練習を手伝ってくれたりした。アリサはアレンたちの授業中間違っていることをすべて訂正していた。質量保存の法則が~とか言って笑っていた。

そんな日々が始まり二か月くらいたった日の夕食後にお母様に質問された。

「アリサは最近楽しそうですね。何か面白いことがありましたか?」

「はい、最近は今までにない視点で物事をとらえることができ、それがまた面白いのです」

「それは彼女のおかげですか?」

「彼女?もしかしてお母様見えているのですか」

『アリサ何言ってんの?私が見えてるわけないじゃない。失言しちゃったね、あ~あ』

私にしか聞こえないからと煽ってくるアリサにうっさい黙って!と頭の中でいう。

「いいえ、みえてないわ。けれど昔からたまにあなたが貴方じゃない気がする時があったの。初めては赤ちゃんの頃かしら。最近はそれが多い気がしたの。母親舐めたらだめよ」

「...」

「ちなみに今もう一人の貴方はいるのかしら?」

「はい、おかしく思われるかもしれませんが...」

「顔を上げなさい。そんな暗い顔しないの。貴方はあなたよ、アリサ。私の大事な娘であることには変わらないわ。お父様もきっとそういうわ」

「お母様...」

「今もう一人のあなたとお話しさせてもらえるかしら?」

脳内会議開始!以下脳内にて...

「私達って体を変えられると思いますか?」

『やったとないし分からないよそんなん。前助けたときはなんか気づいたらできてたって感じだし』

「私が助けてと言ったらあなたが現れましたね」

『確かそうだね。もう一回泣いて助けてーって叫んでみたら?できるかもよ』

「馬鹿にしてますか???お母様の前ではできません!」

『お父様ならいいんだ~』

「そういうことではありません!そんなこと言う暇あったら早く変わってください!」

『わかったよ』

そう言った瞬間視界に映っていたアリサが消えた。そこから私は体を自分の意識で動かせなかった。

つまりは人格を変えられたということだろうか。

「変わりましたか?」

『変わったね。条件は二人の同意といったところかな?とりあえずお話ししてくる』

脳内会議を終えて目を開く。目の前にはそれなりに年を取っているはずなのに綺麗な顔の女、アリス・ローズブライトがいる。今の私の母親でもある彼女に声をかける。

『初めまして?と言ったほうがいいかな、お母様』

「初めましてって感じでもないけれどね。たまにあの子じゃないって感じるときがあったけれどそれはあなたでしょ?」

『そうかもね』

「貴方母親への口の利き方がなってないわね」

『え?』

急に自分の母親と言われ、自分としてはそのような感覚がなくてびっくりしてしまった。

「冗談よ。それにあなたもアリサなのだから私の大切な娘よ」

『あっ、ありがとうございます』

「まぁ、髪と目の色が急に変わったことは少しびっくりしたけれどね」

そう言いお母様は私の髪に視線を向けた。自分でも気づかなかったが、魔法で本物アリサに見せていた時と同じ色にかわっていた。

『区別がつきやすいってことで良いんじゃないですかね』

「そうね。綺麗な黒でいいと思うわ」

互いにふっと笑う。

「私はあなたのことをあまり知らないけれど、いい子そうで良かったわ。これからもあの子をよろしくね」

『任されました。あの子とは本当の意味で一心同体ですからね』

その後数分程度くだらないことをお母様と話していたが、一人の従者が駆け込んできたことで話が中断された。

「アリス様!敵襲です!屋敷の周りが囲まれております。ここから反対側の厨房や、従者の宿に火を放たれました。早く避難をしてください!」

報告を聞くにつれお母様の顔がどんどん曇っていく。

「敵襲なら私が出るわ。元魔法軍隊隊長としてね。アリサ、あんたはアレンと隙見て逃げなさい。もしものことを考えてね。あの子を頼んだわよ」

そう言いお母様が立ち上がる。

「今はだれかが応戦しているの?魔力は感じないけど」

「敵はこちらの様子をうかがっているようです」

「わかったわ。貴方はついてきなさい」

そう言いお母様は部屋から出て行った。私はアレンを探し合流した。

『アレン、今の状況は?あと髪と目の色は今気にしないで』

「えぇ、分かりました。今は屋敷を完全に囲まれていますので、一旦は待機しましょう。敵はアリサ様の居場所を把握している様子はありません」

戸惑いながらもしっかり返事をしてくれた。

『わかったわ。判断はあなたに委ねる。ついていくわ』

こうして家族の時間は唐突に終わり、私にこっちでの世界で最大の危機が訪れた。


〇アリス・ローズブライト

私はまず先に旦那の執務室に向かった。私とアリサは二人で雑談をしていたが、旦那はまだ仕事が残っており執務室で作業をしていたはずだ。彼も囲まれていると報告を受け魔力を隠しているか、殺されたか魔力を感じない。だから一番いる確率の高い執務室へ全力で走る。なるべく外から見えない道を選び、執務室へたどり着いた。

「あなた、無事ですか?」

扉をあけながら問いかける。

「あぁ私は大丈夫だ。アリサは?」

「アリサはアレンに任せてきたわ。貴方も執事と逃げて頂戴。私はあいつらと対峙してくるわ」

「君が元国の魔法軍隊隊長だからと言ってあの数は無茶だ。それにお前を置いて逃げられるわけないだろ!」

私はいい旦那を持ったと思う。彼は逃がすべきだ。だけれど一緒に残ってと言いたくなる。

「いいえ、逃げて頂戴私は大丈夫だから」

そう言って微笑み立ち上がる。

「非力ですまない。いつか絶対また迎えに行くからな」

その言葉を聞き私は部屋を出た。それからます報告に来た従者に戦える人を集めさせ、私が戦闘を始めたのなら、それぞれ迎撃をするように命令をした。その後執務室から少し離れ、窓から外に出る。報告に受けていた通り、従者たちの宿に火がついている。また火が屋敷の方にも広がってきている。敵の数も想像より多いことに加え、黒いローブを皆がまとっているため敵が何か分からない。これは私の想定よりはるかに状況が悪い。

私は地面に降り包囲をしている奴らに近づく。敵側も私見てそれぞれ武器を構える。

「あなたたちは何をしているのかわかっているのかしら?ローズブライト侯爵家に手を出すということの意味を」

この問いかけに、一人だけ前に出てきた男が答えた。

「わかっているさ。だからここで全員死んでもらう。これは国の決定だ。」

そう言い男はローブを脱いだ。その男の顔を見て驚愕する、なぜならその男はこの国で今現在最強と言われる男。私が昔率いていた国の魔法軍隊長エイベル・メギストスだったからだ。

「国の決定ね。それはどういうことかしら?」

「それをお前が知る必要はない。消えてくれ」

その瞬間私めがけて雷が落ちてきた。それに魔法で身体能力を上げていた私は高速で後ろに下がり回避する。それだけではなく反撃として彼のいたところに巨大な地割れを起こす。だが彼も軽々とよけた。

「妊娠し引退しても未だ衰えず、か。厄介だな」

そう言った彼は手を上げる。そしてそれを振り下ろしながら叫ぶ。

「総員撃て!」

その瞬間っ屋敷を囲っていた隊員全員が一斉に魔法を打つ。火球や水の塊、氷塊や岩など様々なものが私と屋敷に向け飛ばされる。これだけの物量攻撃を自分だけなら守れるが、屋敷までは手が回らない。

「うわああああああああああ」と叫び、全力で魔法を発動する。

地面が浮き上がり屋敷を守るように囲み守る。自分は身体能力でどうにか回避をする。

「なかなかやるじゃないかアリス」

「あまり舐めないでほしいいわ」

「舐めてなんかいないさ。だからわざわざお前が出てくるまで待って、全員で物量攻撃して大規模の魔法を使わせ消耗させる。お前は気づいていてもそうせざるを得ない。不意打ちで大規模魔法を使ってお前だけ殺し損ねるとどんな反撃が来るか分からない」

「...」

「な?実際魔力をもう結構つかっちまっている。そろそろかな」

そう言い目の前の男が隊員たちに指示を出す。

「総員突撃しろ!全員捕まえ、処分しろ!ローズブライト家の人間はできれば生け捕りにしろ」

その命令を受けた隊員が次々走り出し、私の家の従者と交戦を始めたり、従者を避け家に突入しようとしている。このままではまずいと思った私は雲を作り出し煙幕にした。


〇アリサ

お母様達がそとでドンパチやり始めた。のぞいてみたが、化け物レベルの攻防だった。私を襲った盗賊もそれなりのやつだったらしいが、あいつらと比べられないほどの差が見て取れた。それにお母様があそこまで強かったことにもびっくりしている。ギャップ萌えどころじゃねえぞ。しばらくして、大規模な土の魔法が使われたと思ったら今度は敵軍が突撃してきた。

『アレンこれどうするの?まずいんじゃない?』

「しかし今出て行っても逃げ道なんてありません。お母様を信じてもう少し待ちましょう」

その数秒後屋敷の周りが煙で覆われた。いや、呼吸ができるからどちらかというと雲かな?この隙に逃げるとアレンに手で合図された。窓を開け二人で静かに外に出る。魔力探知をして接敵しないようした。途中二人に見つかってしまったが、向こうが反応する前に二人で殺した。アリサなら殺せなかっただろうから、ある意味タイミングが良かったかもしれない。そうして屋敷からそれなりに離れ雲から出た。私たちは二人で走り出した。

「あら、どこに行くのかしら?お嬢さん」

雲から出て完全に油断していた。気づいた時にはいかにも魔女といった格好の女に腕をつかまれていた。振り向きながら殴ろうとするも軽くかわされる。

「お嬢様を離せ!」

アレンが氷の刀を作り出し魔女に切りかかるも魔女が作り出した氷の盾で受け流され、反撃の蹴りを入れられダウンした。

「まだまだね。まだ殺さないからお母さんのところに会いに行こうね?」

『......やだ!』

つかまれた腕を利用して背負い投げをする。さすがに手を離した魔女から距離を取り拳銃を作り出す。

『動かないで動いたら殺す』

「あら、怖いこと言うのねお嬢ちゃん」

銃を構え、アレンに近づく。

『アレン動ける?大丈夫?』

「私は大丈夫です。奴の足止めするのでお逃げください。早く!」

そんなことできない!と言おうとしたが、横から飛んできた二つの何かによりその言葉は紡がれなかった。それは殴り飛ばされたお母様と追いかけてきた誰かだった。

「隊長じゃないですか!アリス・ローズブライトは捕まえておきましたよ」

「第二部隊副隊長か。よくやった」

そう言い隊長、エイベルがこちらに視線を向けた。やけにじろじろ見てきたから睨み返しておいた。

「とりあえずこちらももう終わる。そいつを逃がさないようにしてくれ」

「まだ、終わらないわよ。彼を返せ!」

とお母様がその男に高速で突っ込む。そして顎にアッパーを繰り出すとするもそれより早く蹴り上げられ、お母様が倒れこんだ...だと思う。私の目ではおいきれなかったが結果から推測できた。

『お母様!』

私はこのままでは前世の繰り返しだ。そう思った時にはお母様とエイベルの間に割り込んでいた。

「少しでも長く生きたいのならそこをどけ」

「『絶対嫌だ!!!!!』」私とアリサが叫ぶ

「お前には今の攻防が見えなかっただろ?お前は何もできない、痛い目を見る前にどけ」

確かに見えなかった。考えろ考えろ考えろ私。どうすればこの差を覆せる?圧倒的な力、風?地震?火?爆発?核?太陽...いや、そうだ!あれなら勝てるかもしれない。それができるか、魔力が足りるか分からないけれどかけるしかない。じゃないと死ぬ。みんな死ぬ。だったらやるしかない!

『貴方は星が死ぬとどうなるか知っていますか?』

「お前急に何を言い出す、気でも触れたか?」

『えぇ、知らないだろうから教えてやるよ!』

そう言い私はとあるものをイメージする。ネットの沈み、空間のゆがみ、引力、虚無...

『ブラックホール!!!』

私は賭けに勝ったと思た。ブラックホールはエイベルの前に現れ、どんどん巨大化する。

「まずい、離れろ!魔力で体を強化しろ!」

エイベルはブラックホールのせいで少しスローになりながら命令を出した。

ブラックホールが三十センチ位になった時唐突にそれは消えた。そしてそれが示すものは魔力切れである。賭けに勝ったと思っていただけだった。エイベルを倒せるわけでもなく、稼げた時間も数十秒。私は生まれ変わって、ブラックホールを作れるチートのような魔法を使えるようになっても本質は変わっていなかったらしい。

『あぁ...』

膝から崩れ落ちる。ごめんアリサ私ダメだった。

「今まで任せていたけれどこれは私の問題です。ごめんなさい、あとは私がでます」

頭の中でアリサが私に謝り体の主導権を握る。それに伴い色が黒から薄花色に戻った。

エイベル、アレン、名前の知らない副隊長は驚いて目を見張っていた。ふと我に返ったエイベルが言う。

「お前だけなら見逃してやる。さっさとここから消えろ」

「いいえ、私はお母様達を残して逃げられませんわ!」

そう言いお母様たちをかばうように震える手を広げた。

「アリサ...逃げなさい。私たちのことはいいからあなただけでも行きなさい!」

「そうです、私たちはもう逃げるほど余力もありませんので行ってください」

「お母様、アレン私は」

「「行きなさい(ってください)!」」

嫌だ。行きたくない。けれどこれを逃がしたら本当にみんなが死ぬ。せめてもう一人の私を助けるために私は決断をした。

「ごめんなさいお母様、アレン」

私は振り返り走り出す。私に振り分けられた半分の魔力を使い身体能力を上げ駆ける。途中後ろから大きな音がしたが、それを気にしないよう走ることだけに集中した。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい


私は一晩中走り続け草原に出た。お母様もお父様もアレンもきっと助からなかっただろう。私もあと男の気まぐれで逃げられただけだ。私の大切を奪ったあいつらを私は許さない。

「もう一人の私、聞いていますか?」

『うん』

「私ってこれから何すればいいのでしょうか」

『私にもそれはわからないよ。けど私はあいつらが許せないだからしたいことがある』

「そうですね。私もです」

一呼吸置き、気持ちを落ち着ける。

「始めましょうか」

『そうだね。一緒しよう』

「『私たちの”復讐”をそしてあいつらに』」

「生き地獄を」『死の制裁を』

「『え?』」

初めまして。

あとがきに何を書けばいいか分からないので物語で書ききれなかったことを書きたいです。

この作品はアリサの自己完結百合を見たくて書き始めた自己満小説です。一話ではまだ出会って数か月しか時間が経っていないので、百合要素はありませんが今後二人で努力し、笑い、思い出を作っていくうちにいつの間にか互いに...といったことを今考えています。勿論他にもパートナー候補のキャラも出てきます!かっこいい系可愛い系などなど。ですのでどうか最後まで私とアリサたちにお付き合いお願いします。

それでは長々とすみません!

ここまで読んでいただきありがとうございます。感謝!!!!!

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