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豊沢と池原の、ディナーからお泊り会

それは、黒森が休暇で出社していない金曜日のことだった。

池原は豊沢が秘書室側から戻ってくるのを待ちながら帰り支度していると、


「お疲れ様です」

「・・・・・・お疲れ様です。・・・・・・あの、亜貴さん。今日はこの後、予定ありますか」

「? ないよ」

「・・・・・・良かったら食事とか、少し一緒に映画見たりとかしませんか」


池原は緊張をにじませながら豊沢に声をかけた。


「・・・・・・そっか。悠ちゃん、寂しかったのかな?いいよ。少し一緒にいようか」

「あ、ありがとうございます」


池原は普段、いかに黒森に甘えていたか痛感しつつ、豊沢に受け入れてもらってホッとしたように答えた。

2人は会社を後にし、昔ながらの洋食屋で夕食をとった。




「亜貴さんは、休みの日に映画を借りてみているって前に聞きましたけど、最近よく見るジャンルとかあるのですか?」

「うーん、今の部署に入ってからはスパイもの観て勉強兼ねているというのはあるけど・・・・・・あ、恋愛が中心になるやつは観ないね。偉人の伝記とか歴史もの、時代劇が多いかも」

「・・・・・・洋画とか邦画の好みはどうですか?」

「それはどっちも観てる。昔の名優・名監督のを片っ端から見てるところもあるし」

「それでですね・・・・・・うちの部屋に来て観ませんか?」

「・・・・・・今からお邪魔してみるとなると、泊まることになると思うよ?」

「あ・・・。ごめんなさい」

「・・・・・・いったん帰って、着替えとか持ってお邪魔しようかな」

「・・・・・・!いいんですか?」

「私の部屋はここからも遠くないから、悠ちゃんが来てくれる形でもいいんだよ?」

「わ、それは、また次にお願いしますっ。今日は、是非に、来てくださいっ」

「慌ててる慌ててる。ふふっ。じゃあ、お金置いていくから、しばらくここで待ってて。20分もかけないから」




豊沢は席を立つと、足早に店を出ていった。そして15分後に荷物を持って戻ってきた。


「お待たせ。じゃあ、よろしくね」

「はい」

「あ。途中でビデオ借りなくて大丈夫?」

「・・・・・・うちのテレビはネットもつながるし、持ってるDVDもありますから」

「わかった」


駅から電車に乗って30分ほど、歩いて10分ほどの道のりだった。


「ここには、大学の時から住んでるの?」

「いいえ。大学の時まで実家にいました。ここには会社入ったのを機に引っ越したんです」

「会社のすぐ近くが嫌な方か~」

「・・・・・・そうですね。かといって、電車が止まったら即帰れないな状況も嫌なので、バイパスみたいな逃げ道も確保できるようには考えたつもりです」

「そっか。気分によって変えるルートを別にする。なんてこともできるんだね」

「・・・・・・亜貴さんは、美穂さんもですけど、「せっかく部屋借りるなら会社近くにすればいいのに」みたいな言い方しないんですね」

「・・・・・・私の知ってる後輩、悠ちゃんの同期の子も、同じようなこと言って、離れたところに部屋借りてるんだ。私も少ししたら、距離離して部屋借りるかもしれないね」

「・・・・・・・・・・・・ここです。どうぞ」


池原の家はエレベーター付きのマンション一室だった。リビングには5.1サラウンドのスピーカー、BDプレーヤーや複数ゲームハードも置かれていた。他にも、複数の部屋に本棚が置かれており、マンガ、活字の本、BD、DVDがびっしり並んでいて豊沢を圧倒したが、あることに気付いた。


「あれ?この部屋には囲碁とか将棋とか、チェスに関するものは置いてないの?トロフィーとかも見当たらないけど」

「・・・・・・・・・・・・実家に置いてきました。もう、意識して強くなる研究や練習を必要としない生活になりましたから」

「・・・・・・そっか。じゃあ、何観ようか。おすすめあったら教えて?」

「ライトノベルとか深夜アニメに抵抗ないなら、そっち系統もありますけど」

「どんなの・・・・・・」


こうして、豊沢と池原の新たな関係が生まれる夜が更けていった。






一方、二川冬華は。

豊沢と池原が仲良く会社から出て洋食屋に入るところまでを遠目に見て、焼きもちを焼いていた。


「先輩ったらひどいです!わたしというものがありながら別の女の子ひっかけるなんて!・・・・・・でも、池原さん、いつも一人だったけど、関わる人が出来たんだな。一人だけ同期でも年下だったから、やりづらいところではあったんだろうけど」


何だかんだで年下の同期の心配してもいた。


「私も同期としてもっと関わり持ちたいので、いつか三人で飲む機会作ってくださいね。先輩♪」


二川は豊沢にラインを送ったところで、男から声をかけられた。


「あの、すみません。経理課の二川さんですよね?」

「はい。あなたは・・・・・・」

「安全管理部門の沖浦といいます。その・・・・・・独り言が聞こえたけど、浮気でもされたの?」

「あ、あははは、違いますよ~。私の愛する先輩が、可愛い年下の同期の面倒見てる姿見て、思うところがあっただけです♪」

「愛する先輩って、豊沢さんのこと?そうかー」


こうして二川は、居酒屋で別部署の男と飲みながらいろいろ話した。お互い気持ちよくなって連絡先を交換し、また都合のいい時に飲もうと言って別れた。

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