慰労会
「冬華ちゃん、しばらくウチに避難してて。沖浦さんが駅に張り込んでる可能性もあるから」
「はい」
「カギ、預けとくから着替えとか持ち出したらうちに入っててね」
「ありがとうございます」
二川は、昼間は豊沢の部屋で読書やネットサーフィンしながら過ごした。読書の本は、部屋の本棚にあるものを適当にあさった。
「うーん、亜貴さんってご当地ネタの解説本が好きなんですねえ。読み物としては楽しいけど、いまいち色気がないなー。・・・・・・あったらとっくに彼氏作って私の相手してくれなくなるかな」
二川は幾分勝手なことを独り言ちる。食事は近くのスーパーで買った惣菜を食べ、また読書をしていると携帯が鳴った。メッセージアプリで豊沢からだった。
『起きてる?』
『寝てまーす』
『食事に出てこない?』
『うー』
『冬華ちゃんと同期の、池原悠ちゃんも一緒だよ』
『あー』
『居酒屋でいいよね?』
『もちろんですー』
『うちから会社とは反対方向行ったコンビニの所で集合ね。私たちも20分くらいしたら着くから』
『はーい』
【豊沢亜貴 Side】
「ふぅ・・・・・・」
「あの、二川さんは、大丈夫なんですか?」
「うん。気にかけてくれてありがとう。とりあえず、これから合流するから」
「・・・・・・今度は飲みすぎないように、気をつけます」
「そんなに気を張らなくて大丈夫だよ。私も冬華ちゃんも、頭と足元はしっかりしたままいられるから、うちの部屋まで担ぐくらいはできるし」
「・・・・・・//////」
「まあ、吐くまではいかないように気をつけてね?」
「はい」
豊沢と池原は、連れだって会社を出た。そして待ち合わせ場所で合流する。
「冬華ちゃん、お待たせ」
「いえいえ、今来たところですよ亜貴さん。・・・・・・と、池原さん、こんばんは」
「こんばんは、二川さん。お久しぶり・・・・・・と言って、いいんですかね?」
「研修以来、ほとんど顔見なかったよね。同期入社だし、敬語はなしでいいよ」
「ええ。・・・・・・・・・よく、眠れたの?噂で顔色が悪いって聞いていたよ?」
「そうですねえ。よく眠れたし、亜貴さんの本棚からあーんな本や、むふふな本とか、それはもいだだだだ!!ごめんなさい!冗談です!エッチな本とか見てません!あがががががー!!」
豊沢は二川にうめぼしをお見舞いした。
「もう、他に人もいるところで!誤解されちゃうでしょ!」
「痛いです、亜貴さん。ううう・・・・・・」
「えっと・・・・・・亜貴さんって、実は怖い人なの?」
「違うから!冬華ちゃんが変ないじりとか私について根も葉もない話を言ってくることがあるから、しつけとして、やってるのっ!」
「そうなんですよー。今のはムチだけど、ときにはちゃーんとアメだってくれるんです♪むふー」
「まったく・・・・・・よしよし・・・・・・」
「そ、そうなんですね・・・・・・」
二川と豊沢のちょっとしたじゃれ合いがあったのち、居酒屋に移動して個室席へ入った。
「二川さんはどういういきさつで、亜貴さんと仲良くなったの?」
「うむ。池原さんは、偶然が3度続いたら、それは必然とか運命という考えを信じるかね?」
「そう。大体わかったわ」
「えー」
「二川さん・・・・・・いくら亜貴さんが好きだからって、ストーカーじみた行いは感心しないわ」
「えっ」
「亜貴さんがどこへ出かけてるかうまいこと調べて、偶然を装って出会うとか、ちょっと引くわね」
「まってまって旅先で会ったのは本当に偶然だから!亜貴さん、そんな疑わしいものを見る目つきは勘弁してください!」
「冬華ちゃん・・・・・・」
「池原さん、本当に偶然だったんだから勘弁して!」
「ふふふ・・・・・・ごめんなさい。落ちが読めたから、少し遊んでしまったわ」
「ぐぐぐ・・・・・・いけぴーもなかなかやりますね・・・・・・それでこそ、亜貴さんをめぐるライバル、やる甲斐あるってものですよ!」
「えっと・・・・・・悠ちゃん、いつの間にかライバル認定されちゃったけど、大丈夫?」
「大丈夫です。先読みが得意な私に、負けはありません」フフン
「ならわたしは、あれやこれや言って隙を作るまで!」シャー
こんな感じで二川と池原は、豊沢を通じてすぐに打ち解けたのだった。
食事を楽しみ、酒も飲み、池原はやはり酔いつぶれた。豊沢の膝枕で寝た後、店を出た後は二川によっておんぶされた。3人は結局、豊沢の部屋で夜を明かしたのだった。
【池原悠 Side】
目を覚ました時、私は布団の上にいた。隣には亜貴さんと・・・・・・冬華が眠っていた。やっぱりわたしは酒に弱いらしい。
冬華におんぶされていたことも記憶に残っている。昨日は楽しかった・・・・・・亜貴さんには悪いけど、人がいじられているのを間近で見るのは楽しかったし、冬華をいじるのもなかなかだった。
今後、私をいじる人も出てくるのだろうか?
「んっ・・・・・・・・・・・・あれー・・・・・・。いけぴーおきたのー」
「冬華・・・・・・おはよう」
「ぅいー」
「昨日は、運んでくれてありがとう・・・・・・」
「いいんですよー?こちらもいけぴーのかわいい寝顔を楽しんだからねー」
「///」
「んぅー。いけぴーって、無表情クール系だと思ってたけど、結構かわいい表情出すんだねー」
「それは、偏見・・・・・・かわいいと思ってくれるのはうれしいけど」
「んふふ。チミは高い学歴と頭いい感じの経歴がつよつよに出てるからねー。ま、私はともかく亜貴さんと一緒に動いていたら、いろいろな人と知り合って仲良くできるさ」
「・・・・・・そうかしら」
「そうだよ。で、その第何号かは私。ね?」
「そうね・・・・・・わぷっ」
「ぎゅー。わかればよろしいっ」ナデナデ
「うん・・・・・・・・・・・・」
どうやら、冬華は亜貴さんをめぐるライバルであると同時にお姉ちゃん役をやっているつもりらしい。実際わたしの方が年下だし、このまま甘えてもいいか。
「ねえ、冬華。あなたは今、どこに住んでいるの?亜貴さんから冬華は会社から距離空けて住んでる人って話を聞いたことがあるんだけど」
「あー・・・・・・湘南台に今はいるけど、近々別の所に引っ越すかな」
「ごめんなさい・・・・・・嫌なことを思い出させたかしら」
「このくらいいいよー。そういういけぴーはどこいるの?」
「中央林間よ。冬華とはそこそこ近所ということになるかしら」
「んー。引っ越し先としてなくはないけど、今度は会社からの方角も変えようと思ってるんだよねー」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・なら、稲田堤はどうかしら?」
「!」
「登戸も考えたけれど、もっと離れている方がいいのでしょう?」
「そうですね・・・・・・じゃあ、稲田堤を軸に探してみましょうか。・・・・・・考えてくれてありがとう」ナデナデ
「・・・・・・//////」
「ちょっと、シャワー浴びてくるね」
「・・・・・・悠ちゃん、冬華ちゃんと仲良くなれた?」
「はい・・・・・・ありがとうございます。他の同期ともかかわりがなかったので、今回はいい機会でした」
「悠ちゃんは入社してからすぐ秘書室来たんだっけ」
「そうですね・・・・・・おまけに他の同期と歳違うしで、余計に距離が空いてしまって」
「そう・・・・・・まあ、さっき冬華ちゃんが言ってたけど、私と一緒に動いたら経理課の人と顔つなげるし、美穂さんと一緒に動いたら総務課の人と顔つなげるから、そこからかな」
「はい・・・・・・」
「だけど、冬華ちゃんも他の同期の人とあまり関わってないみたいだから心配かなあ・・・・・・」
「そうなんですか?」
「私に甘えてばかりで、他の同僚とは仕事以外で接点ないはずだよ。仕事はそこそこできるし、一人旅で楽しくやってるから・・・・・・自立は出来てるんだけどね」
「だから自分じゃなくて、亜貴さんと動けって言ったんだ・・・・・・」
「あ、亜貴さんおはようございます。いけぴー、お湯張ったから風呂どうぞ」
「そうね。悠ちゃん、汗と酒、流してくるといいわ」
「では、お借りします・・・・・・」
わたしはシャワーのほか、ゆっくりお湯に浸かって汗を流した。
それから1週間、二川は家探しと引っ越しを急ピッチでやった。週末の金曜に引っ越しを終え、土日である程度の荷解きを完了した。また、月曜から金曜は傷心旅行名目で各地をぶらつき、酒蔵巡りもした。この旅には豊沢も同行している。
『室長、報告がございます』の書きためはひとまずここまで。
ネタ(と、整合性や帳尻合わせのできたシナリオ)ができてないので、次回以降の更新は未定です。
お付き合いいただきありがとうございました。




