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薗原雄介

池原悠には、社史編纂室へ同時期に入った同僚がいる。


薗原雄介。

理財部門に5年ほど在籍したのちに異動してきた。

彼はもともと目立った業績はなかったが、会社の総務を経由する住民税納付書に給与とは別の所得が多いことについて理財部長や会長のヒアリングを受け、最終的に浦山から「ぜひとも、うちのプール金を増やしてもらいたい。それにかかる情報収集で得た情報も、こちらに回してもらえるやろか」とオファーが出るに至った。


彼はもともと時間外労働をやらないため、出社時間の朝8時から夜6時の他は自由にできた。

朝は早起きして3紙の朝刊を読み、昼は日替わりで専門紙を複数読み、夜は別の専門誌を読みというルーチンを組んでいる。

そうして得た情報をもとに投資をしてここ数年は給料より多い所得を得た。

ヒアリングでも正直にその旨を話したところ、浦山からは「よろしい。キミは新聞や雑誌をもとに情報を集めるオープンソースインテリジェンスの要員になってもらう」と言われた。

社史編纂室内の資料部屋で置かれる専門紙や各業種を扱った雑誌は、薗原の要望によるものも多い。

池原とは情報収集の方法が違うが後々扱う情報や展望で関わりが出てくる可能性があるため、黒森仲介の元で会議を設ける話し合いをした。


「浦山圭二室長」が社史編纂室に出社してくるのは火曜日、水曜日、木曜日と連続する3日間である。

会議でまとめた情報を室長にあげる方針で行くため、会議は水曜日にやることになった。ただ、しばらくは情報収集に専念することといろいろ手探りで機関の運営に入ることから、仮に会議やっても身になることはないとも考えられた。しかし、黒森の「池原はもう少し人と顔合わせて話し合うということに慣れなさい」との声もあり話をすることから始めた。


社史編纂室の閉じた空間とはいえ、会議している声は内部の人間に聞こえることを鑑み、会議用にモールス信号を頴娃弁の学習をすることにした。単純に公開情報同士を突き合わせるパートでは普通の日本語でもよいが、考察・分析・今後の展望にかかわる内容は社外秘にしておきたい。


そして出た結論は、そのパートを指で机をたたくモールス信号と口頭部分の頴娃弁を併用する手法である。モールス信号は五十音と数字を各自で覚え、頴娃弁は社史編纂室の創設メンバーの一人である神嶺豊(しんれい・ゆたか)からレクチャーを受けることになった。

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