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闇のマレットゴルフ

作者: 明地雫

縛りワード 勝ち抜き ワンマンショー 老いぼれ


ある初夏の昼

稀戸吉五郎まれどきちごろう(67歳)はドキドキしていた…。


というのも、小、中、高の同級生であった、桜門外トメ(67歳)から『明日会いましょう。旦那には内緒で…』

と昨日電話でいわれ、会う約束していたからだ。


トメのことは12年間片想いし続けていたが、勇気が出せず、ついに告白することは叶わなかった。


高校卒業後、トメは大学の同級生と結婚してしまい、その後吉五郎も社会人になってから結婚したが、どこかでトメのことが忘れずにいた。

そして吉五郎は10年前に妻と離婚。


そんな孤独な年金暮らしが始まろうとした最中、トメから突然連絡があったのだ。


待ち合わせは広い公園だった。



『ごめんなさい吉五郎さん、待った?』


『あ〜トメさん久しぶり。全然』



ー小皺は増えているが相変わらず美しいな…トメさん。旦那に内緒で2人きりなんて…これはどう考えてもデート…ー


『さぁ、行きましょ。あっちよ。

みんな待ってる』


『へ、みんな?』


公園の奥へ行くと、同年代くらいの老人が8人ほどいる。


夏守造『来たか。トメさん。それにお連れさんも。』


トメ『夏守造げすぞうさん、一年ぶりね。今日はよろしく頼むわ』



そして連中はゴルフのクラブをそれぞれ持っていた。


吉五郎はデートと期待した自分がバカらしくなった。


吉五郎『はは、呼ばれた理由はもしかしてゲートボールの仲間集めかい?』


トメ『ゲートボールではないわ。マレットゴルフよ』


夏守造『しかもただのマレットゴルフではない。これはーー』


吉五郎『?』



夏守造『闇のマレットゴルフだ。』


吉五郎『や、やみのマレットゴルフ…?なんだいそれは』


寅助とらすけ『ルールは簡単。これから勝ち抜きでこの10人でマレットゴルフをやる。そして、全員で年金1年分を賭け、優勝者はその年金全てを貰い受けることができる。』


下馬蔵げばぞう『単純計算、ひとり頭の年金1年分が200万円と考えて、10人だから2000万円が勝者の手に渡るということになるな』


泥吉でいきち『もちろんその反面、敗者は全員、今年の年金がビタ一文なくなるな…。げヒヒッ』


吉五郎『な、なにを、何を言ってるんだ…!

こんなの犯罪じゃないか!』


泥吉『俺らは先の短い老いぼれだ。今更お縄になったところで失うものはすくねぇさ。ゲヘヘッ』


夏守造『そうゆうことだ。そして、この老後という途方もない悠久の時間、刺激の少なさに我々は飽き飽きしていた。そんな想いを同じくする連中が刺激を求め、ここに集まったというワケだ。毎年秘密裏に開催していて今年で4年目になる。』




吉五郎『…トメさん。これをわかっていてワシを誘ったということかい』



トメ『だますつもりわなかったの。ごめんね、吉五郎さん。ちなみに私は去年から参加し始めたのよ』


吉五郎『…いいじゃろう。乗ってやる。

じゃがトメさん、人数合わせでワシを誘ったことは後悔すると思うよ。』


トメ『え?』


吉五郎『ワシのゴルフの腕前はな、セミプロ級じゃ』


つづく

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