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番外編9.アクアク×最推し クロスオーバー (コミック6巻発売記念)


 やってみたかったクロスオーバーです。

 深く考えずお楽しみいただけたら幸いです!




「オーレアリス様もニバル級長も、遅いですね……」


 正面席に座るキーラの呟きに、ブリジットは頷く。

 オトレイアナ魔法学院にあるカフェの一角である。四人がけのテーブル席の二つの席は、空いたままになっていた。


「待ち合わせの約束をしてたのに、もう一時間くらい経つわよね」


 ユーリたちが待ち合わせに遅れることなんて、今まで滅多になかった。


(何か、危ないことにでも巻き込まれてないといいけど……)


 不安を催しつつ、ブリジットは冷めた紅茶を啜る。

 カップを戻していると、キーラがひそひそと話しかけてきた。


「ブリジット様。ところであの方たち、どなたでしょう?」


 キーラの視線の先を追って、ブリジットは眉根を寄せる。

 カフェ内を歩いているのは、かなり目立つ容姿をした二人の男性だった。


 ひとりは襟足の長い艶のある銀髪に、青く澄んだ瞳をした青年である。おそらく年齢はブリジットたちより少し上だろう。

 もうひとりは赤髪に浅黒い肌を持つ青年で、ブリジットたちと似たような年齢だと思われる。二人とも整った面差しをしており、カフェでティータイムを過ごしていた女子生徒たちがこぞって目を奪われているのが分かる。


「他校からの交換留学生と、その護衛……とか? でも先生たちは、そんな話はしてなかったわよね?」


 ブリジットは推測を口にするが、いまいち確信が持てない。それは二人が、どこか困った顔で周囲を見回しているせいもあるだろう。

 色めき立った雰囲気の中、キーラはじろじろと二人を見つめている。だがその理由は、彼らの容貌に気を取られているからではなかった。


「あのお二方、どことなくオーレアリス様とニバル級長に似てませんか?」

「そうかしら。言われてみれば、確かに?」


 氷を思わせる白皙の美貌を持つ青年に、どこか荒々しくも高貴さをまとわせる青年。顔立ちなどが似ているわけではないが、なんとなくユーリとニバルを思わせるのは分かる気がする。


 すると二人の会話する声が、ブリジットの耳に届いた。


「ノアさ――ノア。ここはどこなんでしょうか」

「……殿下。他の者に示しがつきませんから、敬語はやめていただけると」

「わ、分かっている……んですけど。鋭意努力します」


 気まずげに言い淀みつつ、「ところで」と赤髪の青年は話題を変える。


「ずっと考えていたんですが、ここは迷宮ではありませんよね」

「ええ。本の世界ではないでしょう。そもそも俺たちは、停車場に向かって歩いていたんですから」

「そうですよね。それなのに、どうして突然見知らぬ場所に……?」


 二人とも声を落としているので、会話の内容は途切れ途切れにしか聞こえなかったが、困っているのは明白なようだ。


(これはオトレイアナの生徒として、声をかけたほうがいいのかしら?)


 困っているのを放っておくのは気が引けるし、ユーリとニバルになんとなく似た雰囲気を持つ二人となると尚更だ。

 しかしそこでキーラが声を上げる。


「というか――ブリジット様! よくよく見ればあちらの方、真っ赤な髪をしてらっしゃいます。ブリジット様のご親戚なのでは?」

「ええ。見事な赤髪をしているけど……見覚えはないわね」


 ブリジットは小首を傾げる。燃えるような赤、と形容されるほどのブリジットの髪色と遜色ないほどの髪の持ち主となると、メイデル伯爵家とかなり近しい家の出身と思われるが……。


 そこでキーラが顔を真っ青にする。


「となると、家同士の繋がりがほしいために染髪された方では?」

「どうなのかしら? 染髪の場合は、もっと不自然な色になる気がするわ」


 それどころか、とブリジットは思う。


(むしろ伯爵家の人間である私よりも、高貴な身分の方の気がするというか……)


「――ブリ!」


 思考を遮ったのは、甲高い少年の声だった。

 見れば、カフェ内で目立つのを避けるためだろう。幼いユーリにそっくりの外見をしたブルーが、テーブルに両手をついて見上げてきている。


「ブルー? どうしたの?」

「あそこの二人な、ますたーたちの代わりに狭間から出てきたんだよ」


 ブルーが指さすのは、銀髪の青年と赤髪の青年だ。

 言葉の意味を問う前に、その背後に浮かび上がるウンディーネが続ける。


『どうしてか分からないけれど、あちこちに狭間への扉が開いているの。エアリアルの契約者がそのひとつに足を取られたものだから、マスターも一緒に飛び込んでいってね。いくつもの狭間が一時的に重なったことで――波長の似た二人同士が、それぞれ出口を間違えてしまったのかもね?』


 ウンディーネの物言いは相も変わらず難解だったが、ブリジットはその言葉を自分なりにかみ砕く。


「と、なると……ユーリ様とニバル級長は、あの二人と入れ替わって別の場所に出てしまったということ?」

『そうなるわね』


 ブリジットは息を呑む。

 とするとユーリとニバルは、今頃危険な目に遭っているのかもしれない。


(本当は、私がユーリ様を迎えに行きたいけど……)


 ブリジットは唇を引き結ぶ。

 トナリのような優れた精霊博士ならともかく、自分では足手まといになってしまうだろう。それならば、狭間に慣れている精霊たちに探索を任せたほうがいい。


 顔を上げると、ブリジットはブルーとウンディーネをまっすぐに見つめた。


「二人とも、お願いできるかしら?」

「ブリに言われるまでもないよ! ボクはますたーのところに行く!」

『ふふ、任せてちょうだい。すぐに連れ帰ってくるから』


 打てば響くような返事に、少しだけ安堵する。

 ブルーは躊躇わずに、銀髪の青年たちに駆け寄っていく。


「なぁ。そこの二人、元の世界に帰りたいか?」


(そ、そんな声のかけ方で大丈夫なの?)


 ブリジットが心配した通り、やはり二人の反応は芳しくない。


「殿下、お下がりください」


 明らかに警戒している銀髪の青年だったが、その頭上をウンディーネが取る。


『ふふ。頑固なのは嫌いではないけれど、頑迷な頭は冷たい水で濡らしたくなっちゃうわね? 二つも並んでいるなら、余計に』


 くすくすと笑うウンディーネに、赤髪の青年が目を剥く。


「ま、魔物が喋った!?」

「まさか、古代種……?」

「あー、面倒くさいなぁ。よくわかんないけど、今はそんなこと話してる場合じゃないんだって。お前たちがいたところに、戻れなくなるかもしれないんだよ?」


 ブルーが唇を尖らせると、二人は表情を改めた。


「……突破口がないのは事実です。とりあえず従いましょう。殿下は俺の傍から離れないでください」

「あ、ああ」


 狭間へと導くためだろう。カフェを出て行く二人と二体の精霊を見送って、キーラがおろおろしている。


「だ、大丈夫でしょうか?」

「……ええ、きっと」


 ブリジットは重く頷く。ブルーたちに任せれば大丈夫だと信じて。

 それでも不安は消えずに、そっと両手を組んで祈った。


(早く帰ってきて、級長。ユーリ様……)


 その数分後。

 ようやく姿を見せた青髪の青年に、ブリジットは「心配しましたのよ!」と人目も憚らず抱きついてしまうのだが――それはまた別の話である。




 本日、アクアクコミックス6巻&最推し攻略対象ノベル2巻が同時発売されました!

 本作の店舗特典は書泉にて展開されます。無償特典のイラストペーパー、有償特典のアクリルスマホスタンド、抽選で複製原画がもらえる発売記念フェアも開催と、盛りだくさんになっております。


 また、アニメイト限定の「砂糖のように甘いラブストーリーフェア」(https://www.animate-onlineshop.jp/contents/fair_event/detail.php?id=113900)では迂回チル先生描き下ろしのビジュアルボードがランダムでもらえますので、ぜひチェックしてみてください!


 今後も「アクアク」並びに「最推し攻略対象」をよろしくお願いいたします。


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