幕間 昔話
「あがぁぁああぁ」
馬鹿な魔族が尻尾の一撃で吹っ飛び汚ねぇ叫び声を上げる。
(徒党組めば勝てると思ってるのか――このくそ共が)
ドォゴンンンと音を立て岩壁にぶつかり止った魔族・・・・・・痛みで動けないのか蹲って微動だにしない。
するりと近寄ると気配を感じたのか、びくっと身体を震わせるも「あぎぃ」トンチキな声を上げる。それが痛みによるものか恐怖なのかはそいつじゃないから解らない。
「さて――覚悟はできてるんだろ。まさか・・・・・・助かるなんてお花畑な考えはないよな」
同じ目線まで下げてやり、ちろりと舌を出すと何も言わずに震えだした。
はぁ~、とんだ小者だ。まあ、何にせよ――糧に変わりはない。
首を上げる動作がここから離れると思ったのか一瞬安堵の様子を伺わせるが――残念・・・・・・今から喰うんだよ。
大口開け迫った瞬間、この世に「あ」間抜けな言葉を残してそいつは腹の中に消えていった。
「美味くも不味くもねぇ・・・・・・」
ぼそっと呟き辺りを見渡すと喰い散らかした魔族が所々に転がっている。
「そっちも終わった感じ」
黒い自分に似た奴が近寄り話し掛けてくる。この狎れ狎れしさに最初はイラついたが、最近は少し心地いい。初対面の時は御互い――あんなに殺る気だったのに。
返事を返さない事に訝しがり、更に寄るなり「どったの」尻尾をぺしぺしと軽く当ててくる。
こいつの事を考えてたと言うのが恥ずかしいので、少し考えてから最近思ってた事を打ち明ける。
「いや・・・・・・ここら辺も住みにくくなってきたなって・・・・・・」
谷と言うには少し浅いが日陰もあり、少し上がれば水場もある。住処としてはいい場所なんだが襲撃の数が多くなって辟易してくる。
溜息交じりに話すと「あぁ~」相づち打ち
「あ~し等さ、最近『蛇』なんて呼ばれてるみたいで・・・・・・狩れば格上みたいな。でも毎回毎回うざいよね」
蛇ね・・・・・・そんな事より住処だ。同意するのも癪だが毎回はめんどうだ。いっそ全滅させるか。
その蛇と呼んでた奴の事を尋ねる。
「あぁ~、こいつらはこれで全員みたい。ちゃんと喰う前に聞いておいたって。ただ・・・・・・他のがまだ居るみたいだけどね」
今度は深い溜息一つ・・・・・・聞くんじゃなかった。
げんなりした様子に「まあまあ」慰めの言葉を掛けてくるが「他人事じゃ」とすべてを言い終える前に笑いながら遮られた。
「しししし、そこで思いついた訳よ。聞きたい? 聞きたいよね。うんうん――あ~しが思うに森に行かない」
若干イラっときたが・・・・・・案自体は悪くない・・・・・・森か。入れば迷うって言うがそれだけだろ。
あそこに居るのは獣人――襲われる心配など毛程にも無い。むしろ襲ってくるなら・・・・・・
「「「喰らい尽くせばいい」」」
どうやらこいつも同じ考えのようだ。この辺が気の合う理由なのかもしれない。
舌をちろり、見通す先――森を見つめる。
「そいじゃ早速。それとあんた――めっちゃ悪い顔してるよ」
にやりと笑い軽口を叩く。
「おまえもな」
「ええ~。あ~しは可愛いよ」
そんなくだらないやり取りをしつつ森に向かって動き出した。




